表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
175/507

聖都の攻防 31 甘くない沙汰 7

「上手いこと言ったつもりだろうがなあ」

 あたしは今、宙に浮いている。

 浮遊魔法とは無関係に。

 あたしは...

「セルコットさんの頭があああああ!!!」

 目撃者ひとり、ミロムさんがいた。

 彼女は、師匠の犯している凶行を目撃した。

 尻もちをついて、こちらを驚き...いや、面白そうな笑顔でみていたり?

「なんか、お前の友達...怖いな?」

 あたしも、です。

 こめかみグリグリされながら、持ち上げられてる()()状況に。

 ミロムさんの息遣いが、怖い。


 ああ。

 この子の変態スイッチ入ってる~!!!!



 ミロムさんの急変が収まるまで。

 いや、興味が薄れるまで――あたしは宙づりにされてた。

 もぞもぞっと這ってきた彼女は、給仕服のあたしの裾をめくって中を改めたり。

 嗅いだり、靴を脱がして素足にしたりしてた。

「えっと、お前の友達...何してんの?」


「あたしが分かる訳ないじゃないですか!! ミロムさんですよ。あの子はちょっとネジが飛んでるっていうか、フツーじゃないんです」

 そう。

 ミロムさんはフツーじゃない。

 エルフは総じて、耳が横に長く尖がっていると思っていた――あたしと会うまでは。

 しかも、だ。

 エルフは皆、裸で生活していると。


 いやいや。

 どこの原人ですか、それ?

「セルコットさん」


「は、はい!」

 眼下から光る眼がある。

 あたしからだと、スカートの真下になるから濃い影のあたり。

 目が赤く光ってて、マジ、怖い。

「さあ、遠慮なくしゃーってして」


「は?」


「ほら、前に神様にしゃーしたんでしょ?」

 おおっと...それ、話すんじゃなかった。

 いや、師匠に頭グリグリの刑に処されてても、失禁するほど断末魔的な最後じゃないし。

 あたし、死なないよ?!

「ええ、と...」

 師匠に虚ろな瞳を向けた。

 真下の光る眼も同時に、彼を陰湿な雰囲気で見ている。

 あ、これジト目だ。

「おい、バカ弟子!! こっちに怖いもんを振るなよ。ミロムちゃんが一層、怖い目でこっち睨んでるだろ、が」

 いや、それ期待してる目ですよ。

 だって生殺与奪は師匠にありますもん。


 彼女の期待は、宙づりの女の子が急に筋肉を弛緩させて極致に至る事。

 その時に流すであろう命のシャワーでも浴びようとか...そういうもんだと思う。

 で、あるとするならば。

「お前の首を俺が締めるって理屈になるんか?! イカレてるじゃねえか、それ!!」

 いち抜けだと言って、師匠はあたしを放って廊下の先に消えた。

 着地時に足を捻ったあたしは、床に転がる。

 そこへ不服そうなミロムさんが...

「指への締め付けが良かったっぽいので、今夜はこの続きで“遊び”ましょう!」

 なんて、囁いてきた。

 失禁はないけど。

 背中に寒気は感じた。


 この子、怖いわ。



 小物の男の下へ、使いの従者が現れた。

 娼館の裏口からこっそり書簡の受け渡しが行われ――「決行は、戴冠式の前日か。確かに太守側も多忙と見えるし妥当ではあるな。あい分かった、追加の資金も含め、都合くらいはつけてやろう」――と、話もまとまる。

 結社の末端だけども、今回の計画の要である。

 その龍海商会と小物の商人の逮捕は大きな一歩となるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ