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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 29 甘くない沙汰 5

 ふたりは賭博の上では仲がすこぶる良い。

 勝てそうな時は涙をのんで、わざと手を抜き「あれは絶対に“赤”に掛けるべきだった!!!」と勝ちスジの話を賭場の奥で怒鳴りあうようにしてた。演技も超えた熱の入りようで――酒でも呑んで頭冷やしてこうぜと、酒場の主人に介抱させるスキさえ与えない捲し上げ。

 こんなのを魅せられていれば、誰もが気が付く。


 こいつら、とことんまでツキがねえ...と。


「親父ぃ、この指輪でカネを用立ててくれ!!!」

 師匠こと“リフト・ローゼン”は、皮手袋の下にあった指からリングを抜き取って、カウンターに叩きつけていた。それは、白銀の細工はないけど質のいい指輪だ。

「お、おま...」

 “シグルド”がたじろぐ。

 曰くつきのと思って酒場の店主も身構えた。

「結婚指輪を!!」


「一世一代の大勝負だ!」

 力が入ってるけど。

 その勝負にもツキは舞い降りなかった。

 いや、もともと勝利の女神にはノーセンキューと、断った戦いをしている。

「お、おまえら...バカだぜ?!」

 店主が引いて、この話は終わる。



 さて、こんな茶番を見てた小物の小悪党。

 これだー!! とか心中で叫んでた。

 今こそ自分の高い能力を示す時だと、確信したのだという。


 あー、それ。

 怪しすぎて誰もが引いた罠なんですが、ね。

「兄さんたちが負けこんだ借金なら、俺の()()()がキッチリ耳を揃えてチャラにしてくれるぜ」

 ――と。

 ふたりは、やや俯瞰したとこで『お前ちゃうんかー!!!』って叫んでた。

 これは心の中での叫び。

「(小物過ぎる、自分のバックを安易に悟らせやがった)...あ、はあ」


「(っ、いや。これは高度な情報せ...)な、いや。いい仕事と、いうのは?」

 食いついてみた。

 シグルドがそうしたように、ローゼンも。

 手元のエールを飲み干して口元に髭を残し...

「俺たち、首が回らないっても...太守の兵士だからよ。給料日まで大人しくしてりゃあ」

 ちらっとシグルドの顔色を窺い。

 口元の泡を親指で消す素振りの中で、ハンドサイン。


 ――殴らせた。


「てめぇが! 大人しく給料日まで待つタマかよ!!!!!」

 これは印象が強い。

 早急にカネが必要だと印象付けさせられた。

「(バカか、お前は?!)俺の拳が痛いだろうが。友を殴らせるんじゃねえ!!」

 小物の商人が慌ててるのが滑稽だけど。

 たぶんやり過ぎ。

「て、手付金で金貨10枚ある」

 支度金は50枚だったから、40枚は着服している。

 けど、そんな事情は雇い主と小物にしかわからない、わけで。

「じゅ、10枚だって?!」

 卓上に広げられた革袋から“白金貨”が顔を出す。

 国庫に純金貨が収められていれば、この金貨は贋金だとして追及される筈だったが。

 結社は一刻も早く、純金貨の回収を目論んでいる。

 鋳造された金貨が市場に出回ることはないけど、再度、溶かして“白金貨”に鋳造し直せば流通量の多さから1枚当たりの銀貨相当数で目減りすることになる。

 結社として、市場操作が可能になるという訳だ。



 もっとも。

 金貨を全部無事に回収できればの話だが。

「で、俺たちは何をすれば...いい?」

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