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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 27 甘くない沙汰 3

 馬車の中――。

 マディヤ・ラジコートの膝を枕代わりに、燕尾服の少女ナシムが寝ている。

 彼女はマディヤの腕に抱かれて屋敷を出ていた。

 アグラは頻繁に欠伸をしてた。

「あれは...約束しなくてよかったのか?」


「出来る約束だけを、()()というものだからな」

 首を振って、

「各組織が挑む事業に、ボクの確約など不必要だろ」


「不必要って言うのかよ。次期、だろ?」

 結社としては“くち”も“金脈”も再建可能なものだ。

 或いは健在である“耳”や“目”、他には“狂信者”という傭兵もマディヤが()()となった暁には、一新される可能性はある。

 そのための視察なのだという雰囲気はあった。

「視察か。面白いことを言うね、果たして残す必要があるのか...或いは別の何かに統廃合するとも考えられる...が、今はその時じゃない。団主にとっても、この辺りは想定内なんじゃないかなあ。ラグナル聖国はさ、大国ではないからね」

 マディヤはナシムの頭を撫でる。

 愛おしい()()でも扱うように。

 その眼差しも。


 ふたりの光景を見ているアグラも頬が緩み、緊張が解されていく。

「そうかい...」



 聖国は()()()()()()

 見たまんまで言えば、地図上で北方の未開拓地を除くと、国土は他国の5分の1程度しかなく。

 革命によって瓦解しかかっているコンバートルほどの混乱は、微々たるものだろう。

 宗教国としての経済力の面から見ても、瞬間的な市場操作は可能だがだ。

 恒久的ではない。


 ただし、大陸中に信者がある教会国家がだ。

 カネの力で困窮して躓き、倒れたらどんなイメージ成るだろう。


 このブタ野郎! ふざけんなよ!!!!

 ――的な流れになっても、可笑しくはない。

 枢機卿の中にも肥え太った人も少なくないので、ブタ野郎は刺さるかも知れない。


 さて、あたしたちなんだけど。

 ミロムさんとペアにさせられた。

 ヒルダさん曰く――「腕が立つから警護役に抜擢した私の顔に泥ならぬ、おしっこで台無しにされたワケ、分かるよね? 分かるよね?...っだから、解任して後輩ちゃんの方を推すことにした。んで、悪いんだけど、ミロムに預かってもらう事にしたから...そこでも粗相したら、兄上さまの下働き! シモの世話くらいは役に立って貰わないとね!!!」――てな具合にまくし立てられ、払い下げられた。

 屈辱はない。

 いや、もうその通りだと諦めさえある。

「セルコットさんはね、自然体なの」

 唐突に頭を撫でるミロムさん。

 師匠やヒルダの撫で方には悪意を感じ、偶に抜ける髪に毛根があると泣きたくなる。

 抜くなよ!と。

「ああああ」


「おーよしよし...私にはすっぽんぽんの心でぶつかって来ていいんだよ」

 何かひっかかるワードな気がしたけど。

 優しさに甘えるか。

「じゃ、脱いで」


「は?」


「エルフの型を取りたいんだ」

 なんで?

 どうした、ミロムさん...

「エルフの砂糖菓子を作るの。就任式の会場ど真ん中に飾って、新法皇さまに喜んでもらう訳よ!!  森の()()? エルフの裸婦像は、富と豊穣をもたらすという伝説があってね」

 ちょちょ、ちょっと。

 ミロムさんは強引だった。

 優しさは()()の布石で。

 他のメイドさんも抱き込んでの強硬手段へと。

 あたしはオリーブオイル塗れにされて、石膏みたいな風呂に放りこまれてた。

 意識が飛んだのはすぐだった。

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