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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 26 甘くない沙汰 2

「国庫に金貨が入ってないだと?!」

 龍海商会では、上から下からへの大騒ぎ。

 陶片選挙中で起きたことと言えば、小店こだなの幾つかに強盗や殺人鬼が()()()と入り込み、従業員たちを殺害していったということ。

 関係性は見えなかったんだけど、貨幣鋳造所のいくつかが襲われたのもある。

 いずれも、銀貨や銅貨の製造に負われてた工場だった。

 流通量の調整が難しい現場でもあって、警備隊が入る度に鋳造の手が止まって大変だった印象だ。



 ウイグスリー商会長によって開かれた会合から、生きた心地のしなかった龍海の会長。

 とうとう心労で倒れた。

 彼の実務は5人の息子たちに引き継がれたわけだが。

 裏の仕事だけは、手元に置くよう努めた。


 こんな危ない橋を、家族誰かに背負わせるほど、ワルい男ではなかったのだ。

「国庫に金貨が入ってないんだとして、今、それはどこにある?!」

 今すぐにでも回収する必要がある。

 関与がバレるとしたら、納品した記録からだろう。


 それでも()()が見つからなければ、言い逃れは如何様にもできると考えた。

 いや、確かにそれは可能。

 手っ取り早いのは「それはあなたの思い違いですよ」くらいでも十分だ。

 強引でいくなら「名を騙られた、かああああ!!!」で、怒り狂ってもよい。

「おそらくは太守管轄の宝物庫にあると予測できます」

 首を2、3傾げてから顔を手で覆った。

 心労がぶり返しそうなストレスが掛かる。

「太守?! よりにもよって太守か!!!」

 ウイグスリー卿とは馬が合わないとはいえ、正義の使徒である。

 賄賂は受け取らないし、頑固だし、融通も利かない。

「守備隊長、副長とまあ、側近の何人かは同じような実直なタイプで固められていますが。その隊員までもが潔癖とは限らないものです。綻びのひとつや、ふたつ...」

 手揉みする小物の男がある。

 結社の中では下っ端で、連絡係のような存在。

 故に伸し上がるための野望と意欲があった。

「その様子だと?」


「ええ、あとは支度金何ですが」

 結社“金脈”は商人たちの集まりである。

 だが、野心と野望のある人間の財布は、金回りが良い方じゃなかった。

 無駄な投資も多いのである。

「(こんな金も寄り付かない男に賭ける、俺も俺か...)で、幾ら入用なのだ?」

 下種な男の嗤い声が、耳障りな夜になった。



 オークニー商会の客間から旅支度を済ませた3人がある。

 大老に挨拶もなく屋敷を出た。

「このまま挨拶もなしに? つれないじゃないか」

 声を掛けてきたのは、金脈の若い長だ。

 結社を任されて6年目となる。

 マディヤと比しても、歳が近いような青年だった。

「何用だ?!」

 和装のアグラが睨みつける。

 眉間に皺が寄ってるけど、眠そうな雰囲気があった。

「いや...何でもないさ。そうだなあこの場合は恰好をつけて見送り、かな」

 この組織は早晩に瓦解する。

 だから沈む船からネズミの3匹くらいが、逃げようとしているのを止める気はない。

「あんたの場合はもっと高いところから俺たちを見ているんだろ? いや、答えなくていい。求めてもいないからな...たださ、次の革命は...成し遂げてくれないか」

 切実な依頼だと理解する。

 マディヤは無言で彼の前から去る。

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