表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
17/506

正教会と、魔法詠唱者協会 1

 天蓋付き巨大鏡の天井と、巨大なベッド。

 その中心で丸くなって泣いているのは、あたし。

 後輩の手癖、舌癖、絶妙な技で...ひだがヒリヒリに腫れるまで逝かされた。

 何度、腰が重力に逆らって宙を浮き、痙攣しながら噴かされたことか。

「本日の最高到達点は、ココ! 凄い姐さま、2メートル逝きました!!!!」

 あああああああ。

 聞こえない、聞こえない。

 あああああああ。

「もう、子供っぽい事して」

 いやいや、誰が、だよ。

 あたしを心まで折ろうとしてる奴に言われたくはない。


 床の上の水たまりを見ながら、

「もう、可愛い声で散々、鳴いてたのを当方、ちゃんと聞いてましたよ」

 この耳で、と。



 赤面は通り越し。

 自分で触っても、何の反応...いや、ちびっとヌルヌルしてるが。

 気持ちい事はぜんぶ...。

 後輩に持ってかれた。


 エルフという種でも年長だし。

 社会人としても、年上なのに――なんだろう。

 ちっとも勝てる気がしない。

 部屋の空気が磯臭くなっていても自分では気が付けず。

「そんなにショックでしたか?」

 と修道服姿の後輩が、昼過ぎの戸を開けた。

 外から爽やかな、冬の風が入り込む。

 ちょっと寒い。

「っあったり前だろ?!! あたしがお姉さんじゃ、」


「そんなこと、この部屋の中では関係ないんですよ。些細な事で...涙を浮かべないでください」

 目の下が腫れていると、告げられた。

 触ってみると、確かに目の周りがぷっくり膨らんでいるように思える。

 ああ、悔しくて泣いてたんだっけ。

「姐さんは、学園でも、教授たちの助手を務めていた天才です。故に、箱娘...当方たちのような仕事に就くことは無かった、ただ、それだけなのです。ですからもう、泣かないでください」

 後輩に抱き締められたような気がする。

 暫くは後輩の胸で寝てたような――「むにゃ、オス臭い...m、うにゃ」

 唐突に目が覚めて、抱き着かれてるソレを押し退けてた。


「おっと、あなた自身の記憶を基に作って差し上げたのに...随分な仕打ちじゃありませんか?」

 床に落ちてるパンツを拾い上げる人影。

 後輩に見えたけど、それが今なら幻覚だと分かる。

 泣きつかれてただけでなく、空気の交換と見せかけて幻覚剤を投入する為だった。

 幻覚剤は人によって刺激臭がある。

 その匂いと痕跡を飛ばすために、窓が開けられるという。


 迂闊――磯臭いのは、あたしのばかりじゃなかった。

「20年足らずで成人体になったエルフは、正教会こちらとしても例が少なすぎますしね...“紅”に嚙みつかれようとも、あなたのことがどうしても気にかかります、が」

 拾い上げた、パンツの匂いを嗅いでいる様子。

 たぶん殿方にドストライクなフェロモンがあるんでしょうね...嗅がれると思ってたら、ベッドの下にでも隠してたわ。くぅ、脱ぎ散らかすんじゃなかった。

「はっ、パンツく、くらい嗅がれて...心が折れるとでも!?」


「強がるな」

 見透かされてる感じがする。

 正教会が用意した部屋だし、訪問者が後輩だけじゃないと、冒険者ならもっと警戒すべきだった。

 今も、心の底で後輩が『姐さま、当方にお任せください!』と飛び込んでくることに期待してる。

 いや、何も考えずに賽の目通りに火炎球を投じればいいのだ、が。

 ここは街の中だし。

「尋問官どのも悪戯が過ぎるようです...」

 扉の向こうから、後輩の声が聞こえた。

 これは結界のようで――『彼女は監察官さまの客でもありますし、外は協会が...』後輩の声が、くぐもって聞こえる。

 まるで水の中に、頭を漬け込んでいるような雰囲気だ。

「それはまた、時間切れ...ですね」


「姐さんが外見、20歳前後にみえる...それが実年齢だとしても、当方は後輩! それが大事なのです」

 と、後輩は告げる。

 やや引っかかる物言いだが、嬉しい言葉だ。

 ふんっ

「後輩!」


「はい、せ、姐さん!!」


「ここ吹き飛ばしてもいいか?」

 部屋の外、内、更に屋外からも――バカ、吹き飛ばすな!!!!――って声が聞こえたんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ