表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
169/506

聖都の攻防 25 甘くない沙汰 1

 あたしたちが警護するのは、新しく決まった法皇さま。

 まだ、選挙で選ばれただけだけだから。

 戴冠式が終わるまでは、仮の~とか呼ばれてる。


 でも、ようやく聖国としての機能が回復する時が来た。

 そう。

 これは待ちに待った、あたしたちのターン。



 少し前に戻る。

 ほぼほぼ、猟犬さんたちの()()で脅してねじ伏せた太守さん。

 改心させたんじゃなくて、父親の血の気の引いた顔を見て、太守を諦めさせた。

 何を?

 彼の理想とする都市運営をだ。

 どっちが悪にみえるか。


 いやあ。

 魔界の住人と仲良くよろしくやってる、あたしたちが悪に見えるでしょ。

 だって...この人たち、悪魔だよ。

 天上のあたしの守護神スーリヤさまも草葉の陰で...

「セルコット!」

 側頭部からスリッパで殴られた。

「あだ、」

 何ソレ、持ち歩いてるん?

 ヒルダさんは、あたしが指さす()()を懐に仕舞い直す。

「気を抜くな、おしっこ行きたくなっても、ちっとは我慢するんだよ!!」

 何よ、あたしを子ども扱いすんなよ。

 行きたくなるわ...

「うわ、我に帰ったら急に」


「心の声が反転してるじゃん。...ったく」

 ヒルダさんは、念話にて別の場所を警戒させてた、後輩に声を掛ける。

「あー、ごめん。セルコットのやつな、おしっこ我慢できないらしく...あ、ああ。そう、股に両腕突っ込んでもじもじ、くねくね面白い動きしてるんで、漏らすまで見てたい気分になるんだわ...あ、いや。漏らさせるのは可哀そうなんで、ひとつこっちの代わりをお願いしたいんだけど」

 ヒルダさんの前で粗相するのは致し方ない。

 10歩譲って同性だし、鬼火時代にも散々弄られた。

 もう諦めはついてる。


 が!


 ここ、この時が大問題。

「大丈夫かね、この娘は?!」

 心配してくれるシワ枯れた太めの声が背中に刺さる。

 警護任務中に尿意とはこれ如何に。

 お祖父ちゃんくらいの風貌な法皇さまに、あたしは心配された。

「あ、あ、だ、...だいじょ...」

 大丈夫じゃない。

 うわああああ、今、感覚でわかった。

 水属性の気配が、入り口付近まで到達しかかった。

 これ、危なかったと言えるのか!?


 否、断じて否だ。


「う、うう...ひ、るだ...さん」

 ダメみたいってのを告げようとした。

 青い顔に、涙目。

 緊張が走る身体で、ゆっくりと振り返ったあたしは燃えた。

 文字通り、物理現象として燃えた。

 火柱の中にあたしがいます。


 唐突過ぎるんだよ。






 再びあたしの意識パスがつながったのは、春のような心地よい気候と、放尿という解放された世界。

 あーすっきりぃ~

守護神スーリヤさまに黄金水、飲ませるエルフはお前だけだぞ!!!』

 助けてやったのにって言葉が続くのはお約束。

 犬っぽい御使いには見覚えがある。

『ああ、王冠も碌に捧げないお前の為に、だ。スーリヤさまの慈悲深き御心で助けてやろうと...』

 頭からおしっこを被った神様が、穏やかな微笑みを浮かべ。

『何事も経験は必要でしょう』

 ってのが、あたしの脳幹に響いてきた。

『――神の声音をその横にも上付き、下付きでもない丸い耳で拝聴できると思うなよ!! このハーフエルフが...が、その何だ。ま、スーリヤさまの変態チックなプレイを頼みもしないのに...羞恥心もなく再現してくれたことには、一応の感謝はする。が! これは、そのあれだ!!! お前の、お前の名誉を守る為と知れ!!!!』

 うわああああ、まくし立てられたんで理解が難しい。

 えっと何だ。

 あたしはおしっこ...もとい。

 尿意に襲われて決壊寸前のダムみたいなもんだった。

 ちびっと出た感はある。


 で、


 ここが重要だぞ。

 結局漏らしたんだと思うけど、えっと――あたしの眼下に? 違うな...股の間に神様がある。

 びしょ濡れの神様か。

「あ、えっと?」

 冷や汗ではなく、これは脂汗だ。

 とにかく非常にマズイ状況だと思うのだけど。

『これはスーリヤさまのきまぐれと、緊張を解す為のものだ。気にするな、いや...時々、神様のプレイには付き合ってもらう。ま、この度のような突然の尿意発動とは違った形にはなる、が...こちらでの話だから、いや忘れてくれ。キミにとっては突然だった――』

 最後の方は聞き取れないまま、元の世界に戻された。

 下着は半生乾きだけど、放尿の件は不問。

 炎の中から救出されたあたしは、泣き崩れてたという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ