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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 23 陶片選挙 4

 結社“金脈”における陶片選挙は、財力で国を動かす格好の舞台であった。

 それと同時に、聖国から発信されている教会共通の世界通貨“白金貨”への信用失墜を目論む。

 二段構えの秩序再構成プログラム。


 陶片選挙で生まれる傀儡政権が誕生しない事には、国庫が開かれることはない。

 両替商らが作り出す金貨は、国庫に送られてるわけで。

 結社の体力次第に委ねられてた。

「つまり、引き際が肝心と言うわけですね!!」

 若い首長はわずかに伸びた顎鬚を、弄りながら頷く。

 自分の言葉に納得したかのように。

 そして、それは同時に大老の同意を待つ。

「ああ、それはすでに...引き際を越えている」


「な、なんと!?」

 結社は国外の鉱山にも声を掛けて、フル稼働の金産出を行っている。

 すでに数字にも見えない投資が行われた後だ。

「これを全部捨てられるか、だ」



 太守守備隊が守護する部屋には、選挙管理の司教らが安心して寛いでた。

 ミロムと後輩による介護付きという好待遇でだ。

 あたしも参加すると手を上げたんだけど、却下された。


 理由は『俺たちが心配だから』だ、そうな。

 あたしだってお世話くらいできるよ、まったく...。


「公正なる選挙だと。表向きは吹聴しているけど、帝国の大司教選出と同じで...大方の筋は決めてあるものだから...爺さんたちの証言からすると、北方教区の開拓移民団を纏め上げた枢機卿か、南方の葡萄園で財を成したという若い枢機卿の一騎打ちってとこかねえ」

 ヒルダさんが、面接内容に目を通した結果を告げる。

 ここはそういう部屋なのだ。

 多くの資料が埃とともに埋もれている。


 あたしも、流れ弾で亡くなられた方の資料を発見してた。

 言動は厳しい方のようだったけど、人材としてみると逸材だったよう。

 聖国の自足自給率の向上のため、北方教区の開拓事業は彼の発案だった。

 遠い目で見れば、早くとも10年後には農業でも大国に成り得る可能性があった。

「何見てるの?」

 涙するあたしに覆いかぶさりながら、ヒルダさんがあたしの手から紙束を奪った。

「あんたの()()じゃないんだから」

 髪が抜けるまで揉みくちゃにしていく。

 ま、本当に4、5本根元から抜けたんだけど。

 毛根がついてる!!!

 こわっ

「で、陶片は?」


「南方の枢機卿に8割、2割造反して北方かな。ここからは推測だ、期日を決めてた選挙で1度は皆が八百長に屈したんだろう。誰も彼もが秩序の回復とか、甘い言葉に心が擽られて誘いに乗った...」


「師匠?!」

 あたしが口を挟んだら、ヒルダさん同様に髪を揉みくちゃにしていった。

 また、毛根から髪抜けたんだけど~

「1度は全員一致の賭け。2度目はその余韻だ...3度目となると先ず、忠誠心の薄い者から疑心暗鬼になる。輪の中の俺たちは本当に一致団結で来ているのか?」


「ミロムと紅、セルコットの3人は絆が深いだろう。妹のヒルダは...少し距離が」


「えー、私も絆あるのにぃー!!!」

 なんかヒルダさんが泣き始めた。

 ミロムさんが胸を貸して慰め始めてるし、こういうプレイは早いんだよなあ、この子。

「あ、俺は悪くない!!」


「えっと、そうすると師匠の方は...あたしとしか繋がりが薄いようなので、これで繋がりが薄くなるように人が増えると、誰がどんな思惑があるかなんて分からなくなる、とかそういう事?」

 激しく頷かれた。

「選挙は今、否定されたことにより紛糾している。そもそもかもしれないけど、賄賂を貰ってた連中の中でさえ疑心暗鬼が生まれて造反しているかもしれない!!!」

 師匠の読みは間違ってなかった。

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