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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 20 陶片選挙 1

 選挙が始まって、7回目。

 1日に1回の選挙、1日分の休日を挟んで8日目。

 排煙は黒煙となる。

 白煙があがれば、あたらしい法皇の誕生となる訳だけども。

 ここ最近の選挙は長引く傾向にあった。


 選挙の進行を執り行う司祭長ら、委員会の皆さんも高齢化してて。

 たぶん陶片の結果を見落としてたり、とか。

「んな、わけあるか...そこの頭の弱いエルフじゃあるまいし」

 腕組された太守から、唐突に酷いこと言われました。

 泣いてもいいですか。

 いいですよね。



 あたしの他愛もない疑問は2度生じてた。

 委員会は、採決はまだ下されていないと思い込んでた。

 いや、すんなり決まると...“貴重な休日”が台無しになると考えてた。


 法皇の交代は、選挙後が忙しい。

 これはデキレースな一面があった。

 枢機卿内で候補の人物が事前に決められ、面接が行われる。

 いくつかの精神レベルや教団の思想、教義などに加えて人間性が審査されて、個人の財力も秤にかけられる。

 神々に審判されるんだ。

 法皇になれば教団の守護者めがみにも“王冠”を捧げなくてはならないから。


 教会として献上する“王冠”とはまた、別の奉納が必要って。

 神様もがめついなあ。

「そんなバカな」

 過去の陶片選挙記録から、始末書を掘り起こしてきたらしい。

「それだけの始末書があるなら...認めるべきだ。今、長引いているのも、高齢化のせいだということに――」

 辛い現実を突きつけるヒルダさん。

 ソファに腰かけふんぞり返る師匠は、あたしの方を見てる。

「バカ弟子、座れ」

 あたしの耳には『バカ弟子、お前を吸わせろ』と。

 で、ややビクビクしつつも師匠の真横に身を委ねると、汗ばんだ脇を捧げて――

「な、なんのつもりだ?!」

 師匠が不機嫌そうになってた。

 脇を閉じさせ、

「え、吸わないので!?」


「なんのつもりだ!!!」

 これは失態だ。

 吸わせろではなく、吸えか。

 抵抗はある。

 が、師匠がいうのなら...

「まてまて、おい、そこの木偶!!」


「俺か?」

 猟犬さんが応じてた。

 かつて師匠の似姿で現れた兵士。

「セルコットが暴走している! ちょ、この痴女を引き離せ」

 えー、痴女ぉー



 結社“金脈”でも、ウイグスリー商会と聖都太守の密会は知るところとなる。

 その場に彼らが警戒する“猟犬”が、現れたことまでは知る由もない。

 ただ、予感のようなものが青年マディヤ・ラジコートにはあった。

「一挙手、一挙動...見張っているのは、同じという事か」


「どうしたんです? 唐突に」

 テラスの茶会。

 仕上げが近いとして、オークニー商会が細やかな催し物を開いてた。

 これほどの大商会となると、招待客の接待に負われて何かと不備は生じるようになる。

「いや、こちらからでも2、3気になる不審者が見えたな...とね」

 深々とフードを被り肩から下を覆う外套の影。

 草影を利用する者もあるようだし、木陰に潜む者も。

「それなら、俺が」

 和装の男が立ち上がりかけ、

「いや、そのままでいい。()()()()だって分かってるのさ。いくら手足を切り落としたところで、組織“金脈”のすべてを炙り出さなければ、始末の完了には成らないという事を...」

 この茶会は“猟犬”にしても偵察に過ぎない。

 まあ、本命は――。

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