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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 16 父と息子 2

「だ、だれか!!」

 時代劇よろしく、こう『であえーであえー』って叫んでる悪代官があって。

 見切れた画面のあちこちから、ゾロゾロと病没必至のお役人さん方が飛び込んでくる。

 そうして勇ましい、ぶらり暴れん棒サムライなる主人公に、三枚おろしされていくわけだ。

「おい、お前たち」

 呼んでも来ないから、警護に置いてたふたりに声を掛けた。

 が、ぴくりとも動かない。

 いや、動けないと言い換えよう――窓枠の衛兵似のそれは既視感。


 うっわー師匠だー!!

「俺はここにいるが」

 あたしの横に師匠がいた。

 いや、あんたじゃない方です。

「俺じゃない、俺とはどういう...」

 食い気味の師匠を他所に、

 えっと、あたしは...そう、あたしは師匠似の中身の方に恋をしてた。

 いや、ちがった。


「そんなにぐいぐい来ても、お嬢さんのトコに出向いた奴は今、別の任務についてる」

 おっと。

 そ、そうなんですか。

 ちょっと残念な感じ。


 うえ?!

 惑枠の君、何で...心の声を。

「いや、本音が漏れてるぜ。お嬢さん...ヨダレみたいに」



 ふたりの衛兵は、衛兵似の侵入者に金縛りめいた技で封じられてた。

 いや、ひとりは寝てるようだが。

「こいつは寝かしつけた。目力の強い野郎ふたりから、睨まれるのは性分でもない。ま、ひとりを起こしておいたのは、、こいつに用事があるからなんだが」

 と、窓枠の君こと。

 赤帽の方々があたしの脇に立つ人、太守の方へと歩み出る者とに分かれた。

「お初にお目にかかります。我らは..」


「分かっているさ、親父殿が口の葉に出していた“赤帽”という結社だろう?! 隠れ郷のあたりはついている、今頃は...」

 やや寂しそうな。

 いや、冷めた眼差しのようにも見え。

「良く調べもしないで...」

 衛兵を縛り付けている目が、太守にも向く。

 が、あたしの隣にある兵が諫める声を上げてた「やめろ、よせ」と。


 太守は一般人である。

 あたし()()のように身体能力を極限まで鍛えた者じゃあない。

「その力では、彼が死ぬ!!!」

 思わず声を出して叫んだの、あたしだった。

 師匠の手と、師匠似にみえた兵の手があたしの頭と肩にかかる。

 おっと、ふたりの視線も交差して――なんだろう、所有権問題でも勃発しましたか?!――バチバチの火花散ってる気がする。

「おっと、冷静を欠いたか」

 視線を閉じた。

「太守閣下。今はその場凌ぎでしかありません!! すでにこの結社は、コンバートル王国を内戦という崩壊に導いたのです。その場にあった、あたしたちでも止められませんでした。...結社かれらの描いていた絵が、見えていなかったからです!」

 じゃあ、今なら見えるのかというと...首を振らざる得ない。

 何をしようとしているかは分かる。


 今ある“秩序”の崩壊。

 つまり混乱なのだろう。


 武力の象徴だった、コンバートル王国が倒れた後は、経済と心の平穏である宗教国家の崩壊を望む。

 この大陸に棲む人々をどうしたいのか。

「決まっている、支配しやすいように舵を切るだけだ」

 卓上に伏してた太守が呟く。

「結社の目的は、彼らの導く()()によって、人々の自由意志を奪う秩序で縛ることだ」

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