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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 14

「――気を取り直して。ウイグスリーの名を出しても...倅に会える可能性はないだろう」

 と、いうと。

「ワシが嫌われているからだ」

 ああ、そんな身も蓋もない。

 でも。

 確かにその通りなんだろう。

 でも、今はそんな事が“ささやかな我儘”にしか、聞こえてならないのも事実。

 そして道があるならと、あの師匠似の怖い人ならば...きっと。

 懐に入り込んで、胸ぐらを掴むように脅してきたかも――四の五の言わずに、会わんかバカ者とか。

 そんな、感じ。

「ちょ、ちょちょ...セルコットさん、何を!!」

 皆が慌てて。

 師匠も目を丸くして驚いてた。

 あたしは、考えながら身体がそのように動いてたようで。

 びょ、病気じゃんよ?!



 胸をひたすらに抑え込む大老をまえに。

 あたしは平伏しての謝罪中だ。

「...っ嬢ちゃんがあんな行動に出るのも、要するにワシの不甲斐なさ故のことなのだろう。すでに戦いの火蓋は切られておって、一歩どころか半周遅れもいいところだと...嬢ちゃんは言いたいのだな」

 いい方向に取られた。

 これは、あたしの夢遊病みたいな暴走の()()なのに。


 いあ。

 大老も分かってたことなんだ。

 自分たちが我儘を言える状況ではなくなってたことに。

 ただ、そうだと認めるのも...悔しい。

 いや、寂しかった。

 もたついてた事に腹立たしくて、気恥ずかしかった。


 今更、どの面下げて息子に会えばいいのかを。

 父親の彼は知らなかった、的な。

「まあ、そこまで代弁されると、ワシの()()()と感が恥ずかしさにしかならんから、心の声らしいもんを表に出さないでくれると...その、老人としては心の臓の休まり具合が良くなるというか...ドキドキが止まらんのだ」

 平伏してたあたし背を撫でる老人。

 え?! 駄々洩れ???

 あたしの方が赤面なんですけど。



 太守イートン・ウイグスリーでも、独自に調査はしていた。

 結社と思しき連中と会合を持ったり、或いは師匠似の怖い人たちの所属する“赤帽レッドキャッパー”なる呼称される者たちともだ。

 その行動の主たるはひとえに“聖都を守る為”だ。

 そうあるべきだと、ウイグスリーの血が騒ぐのだ。

 父親とは違うアプローチで、父親とは違う解決を見出す。


 結社から贈られてきた書簡――『件の要望を幹部会にて協議した結果、太守閣下のご要望に添えられる方向性が見いだせました。つきましては、今後とも当商会を御贔屓に』――なんて結ばれてた。

 何を差し出して取引したのかは分からない。

 恐らくは禄でもない事だろう。

「閣下、エントランスに...お父上が!?」

 今頃なんの用だって毒突きながら、息子は父に会う決断をした。




 しばらくして。

 あたしたちは応接間へと通される。

 警備兵の多い物々しい庁舎をぐるっと見渡しながら...なんだけどね。

 ヒルダさん曰く...

「物々しいが、角の守備を物陰に押し込みながらなら侵入は可能とみている!」

 なんていう物騒なことを、あたしの耳に囁きかけてくれるんだが。

 その息がこそばゆくて。

 こう、背中の辺りがゾクゾクする。

「ヒルダさんは脳筋過ぎます! 当方ならば、要所以外の兵のみ眠らせて潜入です!!」

 後輩が対抗意識むきだしで――みなさん、あたしの耳元で息を吹きかけないでください。

 ちょっと後輩ちゃん。

 今、下っ腹の奥がきゅっと下がった気がします、が?


「なあ、バカ弟子()()...ミロムを見てみろ。この落ち着きっぷりを!! これが大人ってやつだ。どいつもこいつも、警備兵みるなり物騒なことを考えやがって。卿なんざ倅にどんな顔して会えばいいかで青ざめてるのに、よぉ」

 あ、師匠のそのデカイ声は...

 案の定、大老涙目だ。

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