聖都の攻防 12
「狩人たちの仕業か?!」
大老の尻がムズムズしていた直感が刺さった感じだ。
用意は周到に、行動は大胆にして鋭く動いた――結果、現時点ではほぼ目的に沿った形で動いてた。
ひとつのミスも許されない、ことはない。
結社の目的は、聖国が教会を通じて動かしている“権威”という力だ。
それは大陸を巡る“血”にたとえられた“貨幣”である。
大陸の常識は白金貨であるから、純金の魅せる光沢は未知であった。
国庫に蓄えられた黄金色の誘惑。
総石作りの床に敷き詰められた、それの放つ輝きに魅了されないものは居ないだろう。
あれこそ魔力だ。
純金貨が世に注がれた時、金の相場は暴落して――世界中の価値観が壊れる。
◇
“龍海”商会は進捗状況を麾下の小店から通じて、オークニーの大老に報告している。故に、商会長自らが馬車で乗り付けて、商業の被らない彼の下に訪れる必要が無かった。
これが秘密露見の切っ掛けとなった。
「まあ、来てしまったものはどうしようもない」
青年マディヤが説く。
彼より二回りも年長であろう老人ふたりを前に、
「翁よ、これは失態だよな?!」
後ろ手に組み、とつとつと歩きまわる。
青年に詫びれるオークニーは、苦笑してた。
「ですね。...少し調教し過ぎました」
この会話での部外者は、まさしく“龍海”商会長である。
マフィア然とした外見的情報と、黒いサングラス越しから部屋を隅々まで歩く青年に魅入られ。
そして...かみ砕かれた感がある。
商会長は左手で首筋を撫でてた。
「まだ、です。まだ...何もしていない」
含むような言い方だ。
背筋に嫌な滴が流れた。
《俺が、緊張だ...と?!》
「彼がここに来たことで、閉鎖された街では悪目立ちします...ね?」
噂が立つ。
いい噂も、悪い噂も...管理、統制は出来るかもしれないけど。
誰かの憶測を打ち消すようなものは、いくつかの真実みが必要になる。
それは...
「対処したいと...言いたいところですが、龍海殿には暫く逗留をお願いしたい。業態の違う商会同士、あなたの慌てた素振りから詮索された噂が流れているのでしょう。幸いにも、我が商会には新式のサウナと娯楽があります。長い逗留の果てにお持ち帰りの土産ありとくれば、少しトーンダウンもあり得るのでしょう」
ただ、品性を求められる両替商のイメージは底値になるだろうが。
「こうなると、太守を手名付けられなかった...ツケが」
結社“金脈”の財力と武力に屈しなかった男がある。
聖都の太守“イートン・ウイグスリー”だ。
妻子は実家に置いて単身で、勤めに励む政治家だった。
◆
三男はの落胆は、あたしの平たい胸をもやっとさせてた。
いや、分かる。
失恋は何度経験しても嫌なものだ。
この苦しみ、痛みが人間関係なのだろう。
「君の決断は早計かもしれない、ぞ!!」
めげてなかった。
むしろ...ミロムさんを脅すのか?!!
「それはみっともありません、坊ちゃま」
うん、メイドとして接してる。
ロールに忠実なミロムさんのロープレ、凄いプロ意識を感じる。
「女性の誰もがすべて、玉の輿に乗りたいのかという壮大なテーマのように聞こえるでしょうけども、至極単純な話です。坊ちゃまを“好き”か“好かれ合いたい”かの違いなのです。後者は互いにが含まれます。長くお付き合いし、子が生まれ、育み老いていきますから...やはり、坊ちゃまとの関係性が非常に重要のです」
ぐはっ
ミロムさんが怒ってる。
静かに怒ってる。
三男さん、何、地雷踏んでやがんだ!!!