表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
151/515

聖都の攻防 7

 あたしは不意に壁際に浮かぶ影を見た。

 まったく下階にはドアがあり、部屋に入るにも廊下へと続く扉がある。

 よりにもよって“窓”から出入りする人があるものですか!!

「師匠!!」

 ひとこと、言ってやりたかった。

 ドアがあるんだからって。

 彼に近づこうとした矢先、ヒルダさんの腕があたしの首に巻き付いて――師匠から引き剥がされてた。その腕の強引さや乱暴さじゃなく、必死さに驚いてて。

「キサマは、兄上さまではないな!!!!」

 物凄い殺気を放って威嚇してる。

 いや、それほど彼女が気張らないと、普通の人だったならば昏倒したに違いないという話で。

 いつか前にも話をしたかもしれない。


 世の中には相当に腕の立つ、本当に怖い連中がいることを。

 この気配は、そう。

 そんな連中だった――今にして思えばって条件でなら、あたしはヒルダさんにも見えないところで、とても冷静に...いや、平然とした冷酷な表情を()()に向けてたと思う。


 いあ、事実――そうだった。


「これは、また。とんでもない歓迎だ。この姿は、――っ。まあ、世を忍ぶ仮の姿とでも言おう」

 声音は優しく淡々と。

 どこかで師匠は声も盗まれてた。

 でも、彼らは穏やかな口調で超然な性能差を見せつけたまま。

「メイドさんのはリーズ王国式、そこの背中が寒そうな黒いドレスの()()()はドーセット帝国式剣術の使い手か? いやあ才能が集まっているねえ」

 後輩もそれなりの名の通った、隠形の術家に印可ほどの実力が認められたものだ。

 かつては門弟のひとりだった彼女が、だ。

 エルフ特有の()()によって、技のすべてを習得するに至ったというわけだけども――そんな後輩を用いても、いや、警戒されてのことだろう。動こうとした瞬間に一握りの殺気で封じられて呼吸も忘れた。


 今、一息ついている状況だ。


 ただ、この攻防。

 残念なことに()()()以外には見えていなかった。



 仕切り直すように。

「――どこから話そうか?」


「その前に師匠はいま、どこに?」

 あんな、ろくでなしでも一応は師匠であるし。

 あたしの首を、頸動脈圧迫してくれちゃってるヒルダさんの大事なお兄ちゃんだ。

 一応、心配しないわけがない。

「ああ、彼か。仲間から小遣いをもらって第7ラウンドに突入している。これでツキでも回ってきてくれることを願うばかりだよ。我々は目立つことを好まない...信条の一つに『汝、他人の目に映るなかれ』というのがあってね」

 という教義があるんなら、今はそれを破って...

「いい指摘だ。この場合の他人というのは」人差し指を顔の前で伸ばして、軽くタクトでも振るように。

「衆愚の()()だ。隠形の術を使って存在の有無さえも、勘のいい連中からも隠し通すことは可能だが。万事その調子ではこちらのMPも尽きるし、メッセージ性もない。()()にはそれなりのことばを尽くすよう心掛けているつもりなのだよ」

 ああ。

 ここでも別の何かの意識が動いてるようだ。

「ヒルダさん?」

 流石に腕が苦しいので、彼女を呼ぶ。

 見上げながらの調子だったんだけど、そこであたしは真実に遭遇直面したんだわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ