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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 5

 人々の往来を妨げるもの。

 警備兵らが敷いた規制線である――“青海チンハイ”と呼ばれていた両替商に広がった人の壁が、馬車道にまでこぼれてた。今現在、教皇選出の陶片選挙真っ只中だから、馬車の通る本数も()くらいに落ち込んでた。

 そんな閑散とした中で、ウイグスリー卿は立派な馬車を引っ張り出してわけだ。

 お忍び集会なのに、帰りはめっちゃ人目に晒されてた。



「ところで、ウイグスリー卿の言ってた...情報網というのは?」

 あたしは面向いの翁に問うてみた。

 やや、不審そうな表情だったけど。

「――どこから話せばいいか。帝国に出店する際、トラブル解決人であるワシらがその、トラブルに巻き込まれた事があってな......その脱出に()()が、力を貸してくれたというわけだ。以来、ハトを介して連絡を取り合うようにした...まあ、そういうわけなんだが」

 色々、伏せられたような気がする。

 師匠の連れ子みたいに突然押しかけてきて、いきなり叔父様とか呼んでるような関係だ。

 信用は出来ても、信頼は得られない。

「お前さんらは、肝が据わり過ぎていないか?」

 ゴト...と、馬車の車輪が土を噛み始める音が聞こえた。

 ゆっくりと動き出し、客車が上下に揺れた。

「...だな。ワシも何処までお前さんらに話せば迷ってる。別に隠している訳じゃあない、ワシも彼らとは直接やり合う事が無いってだけで――いや、正確ではないな。帝国ではその一人に出会ってはいる......人外ならざる者としか」

 ふむ。

 後輩は考え込んでるし、ヒルダさんも腕を抱えて――デカ、いなあ。

「どこ視てるんです?」

 後輩から刺す視線が。

 うぎゃあ!! 目が痛い、目が痛い。

 ヒルダのおっぱい視てたら、後輩に目を刺された“指先”で。

「何もそんなことせんでも」というヒルダに代わり「これはセクハラです!訴えるべきです!!」後輩の正論が胸に刺さる。

 あう、やめて。

 あ、あたしのライフが削れていく。


「まあ、おふざけはこの辺で。概ね理解は出来ました! その者たちとは当方も、()()の庭先にて対峙したことがあると思います。女神正教会に過剰な反応を示されていましたが、当時のソレが、アレなのだとすると...」

 後輩が帝国に居る時期か。

 あたしは...

 ミロムさんの顔が浮かぶ。

 ふんす、ふんすと鼻息の荒いヒルダさんも、ああ! 鬼火時代か。

「彼らのような人外と対峙して、良く生きてたな紅どの!!」

 普通に翁に驚かれてる。

 彼らの放つプレッシャーは、死線を掻い潜ってきた翁の強心臓でもOUTだと語ってた。

 ま、後輩曰く――「自然体なんですよ。そこにただ()()だけで敵意をこちらが、勝手に思い込んでしまうほど、強烈な相手であるというだけなんです。彼らがひとたび動くと...話になりませんでした。当方の完敗です...いえ、その当時も慢心してた訳ではありませんでしたが、勝ち筋の見えないクソゲーそのものでした」――って言葉を選ばない愚痴を聞かされた。


「生き延びたというよりも。生かされた、です」

 後輩は『今でも夢に見ます』なんて言う。

 震える拳を見せて、ぎこちなく微笑むのだ。

 何だろう、少し妬けるような気分だ。

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