ただ今の中継は、スラム街の空き家からお送り...3
「疑問があるんです!」
あたしの質問に反応したみなさん。
「秘密結社の存在は、魔法詠唱者協会の依頼の中で知るに至りましたが、実のところ...結社と戦っている本来の敵、彼ら結社が敵とみなしている連中って存在するんでしょうか?」
まあ、局地的に問題が発覚して、現地の法執行機関と衝突することはあるんだろうけども。
大局的にみて彼らを追うのは、あたしたち以外にもあるのかって話。
「それは...つまり、陰に隠れている者を専門で狩っている連中があるのかって...ことでいいのかな?」
海兵隊の隊員が問うてきた。
あたしは激しく頷いてた。
ミロムさんに嗤われる。
「だとしたら、表には出ないだろうな」
ああ、確かに。
「ただ、不可思議な死因は、ある...かもしれません」
後輩が口を開いてひとつ投げ入れてきた。
それは、師匠が愉快的に、結社のある頭目を潰したような、とか。
「いえ、あからさまではなく。こう、事故に似せたような...とか。結社も誰の仕業か分かっているのならば、大々的に公表なんかしませんから。例えば不審な病死、事故死などの発表で葬儀しているでしょう」
帝国の皇女さまは違うなあ。
才女とは。
「セルコットさん、私にそんな輝く羨望の眼差しを贈られても。私からはあなたにお返しできるような、舌技も指技も持ち合わせていません。それに、貝合わせは範囲外です...私、ノーマルなので」
ん?
いやいや、そんなの望んでないよ。
あたしだってノーマルだよ、一応は。
「え?」
一堂から変な声が漏れた。
戸惑うあたしの態度に、だ。
不振がっているような。
「ちょっと待って、ミロムさんの立場は?」
「うん、恋人。後輩は...恋敵になろうと必死のようだけど。あたしからミロムさんを遠ざけるようなことは無理だと思うよ、ごん太い赤い糸で結ばれてるから!」
後輩には悪いけど。
そっちの趣味はないんだわ。
悪戯したら、し返されたけどね。
「う? んんんん???!」
ヒルダがミロムさんを覗き込んでる。
「えっと、あんた......女の子辞めてるとか?」
「いや、辞めてないよ。ごく普通、普通の生物上はメス扱い!!」
話が進まなくなったので。
師匠があたしの股をまさぐってきた。
「うむ!」
「兄さま!!!!」
憤慨する妹を余所に、
「やや蒸れてる様子だが、セルコットもメスだったな」
この人は触ってこないと思ってた。
師匠だけは例外だと思ってた。
「あらら、先輩がフリーズしてます!!」
あたしは男性恐怖症だった。
この症状が出たのは、過酷な10年間から解放された直後。
◇
「なるほど、セルコットさんの消息が消えた直後から。身に覚えのない借金を背負わされて、生き地獄のような生活を10年間も強いられたと?」
ヒルダの言葉は短めだけど。
それがあたしの人生だった。
世界だった。
「紅さんは、」
「当方が、先輩を見つけたのはごくごく偶然です。もはや“乙女神”さまのお導きのようなもので......メンタルチェックに刷り込みによる精神支配を感知したんですけど。それを癒す機会がなくて」
つまるところ。
ギルド長は条件付け束縛魔法を、あたしに掛け続けてた。
逃げないようにするためと。
自ら死を選ばないためだ。
「トラウマが先輩の心に鈎爪のような傷を残しているようです。その傷が男性からに寄るものなので、フリーズという事象で防衛しているみたいです。ノーマルだと思っているのも、そのためかと」
ほへ~
他人事のように聞いてしまうあたり、あたしは病んでいるんだという。
えっと、それで。
あたしらは今後、何をすれば?