ただ今の中継は、下水道からお送りしております 1
一蓮托生。
いい響きだ。
「誰も、あたまアフロになりませんよ」
な、なんで?!
「先輩は見境なくのバカですが、当方たちもそこんとこは対策済みなのです。だって、下水道に入るのです! 保護領域魔法で己の身は己で守る。これ、常識なのです。先輩の二次被害になんか、いくらでも対抗してみせる、当方らには自信があるのです!!」
だって。
いや、後輩の優等生っぷりはアカデミー以来。
ひざ下まで浸かる汚水のたまり場でも、抜かりはないってことか。
「ええ、ひざ下にまで浸かってるのは、先輩だけですが」
よく見ると、
あたしと、みんなの目線が違いますなあ。
頭二つ、うえ?
「格子向こうにあった排水口から入る時、リフト・ローゼン氏はこう言いました“下水道には、点検用の足場があるものだ”と。で、当方たちは今、その足場にて立っているのですが...先輩の見境ないアホさ加減により、よりにもよって汚水に身を捧げているのです!!」
ミロムさんの残念そうな表情が痛い。
こう胸に...大して盛ってない胸にチクチクと、突き刺さる視線。
ああ~あたしを一人にしないで~
「セルコットを弄るのはその辺にして、紅の...お前の神聖魔法で」
「当方は魔法使いであって...」
やや不服そうに、
ちょっと舌打ちをしたような感じもあったけど。
「わかりました。神聖ではなく、聖堂魔法ですが“竜を御する乙女神”の加護が、下水道まで届くといいのですが。一応は一晩のお相手もした、優しい後輩であるのだと記憶に刻んでいただきましょう!!」
「一言、多いわ!!」
ヒルダさんが叫んだけど。
これ振動で?
「だから、保護領域魔法で大抵のことは許容できていると、教えましたよね?」
うーん。
ごめんなさい...
◆
あたしたちの侵入はほどなくして、バレることになる。
侵入経路からではなく、秘密結社の構成員からだ。
跳ね橋の街の警備隊に連行されたひとりが、警備隊長に吐露する。
彼も構成員だった。
“口”だった最後の一人も、結局は獄中で死ぬんだけど。
師匠が想定した時間よりも早く、露見した感じだろうか。
公認交易商人の隊商が、聖都の中へ向かう日――「“オークニィー”会長に言伝を、コンバートルで邪魔をした者たちが聖都に現れた。恐らくは、すでに侵入したものとみていい...とな」
馭者も兼ねる商人は、能面だ。
表情を変えることなく頷き、息を吐く。
「それは情報ではなく定時報告というのですよ。秘密結社には“目”と“耳”がある。傭兵ビジネスは始まったばかり、パワーバランスを牛耳っていたコンバートルが瓦解した今、戦争をコントロールするのは、カネと傭兵、この二つなのです」
馭者の持つ鞭で、ブレストプレートを小突かれるた隊長は、半ば放心した様子で後ずさる。
馬車がゴトゴト動き出す。
「じゃ、お、俺は?!」
「有意義な情報というのは、侵入者の正確な居場所です!!」
そんな事ができるのであれば、警備隊長で終わらないだろう。
町一つの治安を守り、維持するのだとしても出世は出世だ。
が、男の夢としては少し小さいだろうか。
もしも叶うのであれば、一国一城とか?
隊長は首を大きく振った。
「ちくしょー、たかが商人にコにされたままで終われるか!!」
そう、男しても追われない。