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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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跳ね橋を超えて、4

 楽団として街に入った、あたしたちが帰ってこないので――宿屋の主人は、残された荷馬車と馬屋を警備兵とともに捜索し始めてた――ゴトゴトと鳴く、荷馬車の不審な異音。

 他人ひと気配に対して敏感に反応したのだろう。

 秘密結社の元構成員たちが、だ。

 まあ、だらしなく()()気配に助けを求めたのだ。


 二重底の隠し床板を剝がされて、

 松明の灯りが母衣の中を照らし出す。

 ああ、みればわかるけど...むさいおっさんが寿司詰めよろしく折りたたまれて、突っ込まれてた。

 気の毒なのは、だ。


 女の尻じゃなく、

 野郎の尻に、股間に顔がある連中の方で。

「人だ! 人が居るぞ!!!」

 って声が上がる。


 積み荷になってた連中は、こう思った。

《ああ、助かった》

 と。

 で、警備兵たちがのぞき込み、息をのむ彼らと目が合う。

 灯りが再び男たちに向けられ...

「あちちちち!!!!」

 火がちかい、火がちかい。

.

.

.

.

.

.

 どこからともなく「手配犯だー」って声が上がる。

 そうだ、忘れてた。

 馬車は2台あった。

 その2台の馬なし台車から、生き残った賊が発見されたのだ。

 師匠曰く、

「あん? そりゃ、敵方の出方が分からないに決まってる。一つのところに詰めて、だ。全員口封じに殺されたら、それを運んでた俺たちは傭兵の恨みをそのまま...買っちまう。もとい仮に犯罪者でも、だ。法治国家の中での犯罪は、犯罪。殺人の濡れ衣なんざ着たくねえのさ、俺っちはな」

 って、言ってた。


 だから2台の荷馬車に分けて、発見されやすいようにした。

 どちらも口封じされなければもっといいんだけど。


 警備隊長と目が合う傭兵はやや虚ろな目をしてた。

 いや、口封じされると思って怯えてただけかもしれないけど、憔悴しきってる様子で首を小刻みに振って――懇願でもしているようにも「どうしましたか、隊長?!」

 声を掛けた兵に向けた隊長の顔が怖かった。

「い、や。なんでもない...なんでも」


「こいつら手配犯ですね! 冒険者ギルドに古い記録がありました」

 最初から傭兵になる者は少ない。

 没落した貴族の子弟が、冒険者になってから見崩れするものが大半と聞く。

 そうした連中の倫理観は無いに等しく、野党のように暴力で訴える者が多かった。

 また、傭兵仕事に参加するも、ちゃんと傭兵らしい仕事はしない。

 いや、しているように見せるのだけは上手かった。

「罪状は?」


「基本的には関係のない村への襲撃でしょうか。若い村娘を犯し、攫い、売り飛ばすとか...」

 この時点で、隊員たちの怒りのボルテージが跳ねあがってた。

 これの庇いだては難しい。

 いくら傭兵ギルドから賄賂を貰ってると言っても...

 賊徒からの()()()()()()()っていう目が癪に障る。

《みな、自業自得ではないか!》

 舌打ちしかけた。

 いや、ここでソレをしたのでは隊員から怪しまれる。

「とりあえず番所に連れて行け。今、この国で唯一機能しているのは街の石牢だけだからな」

 国全体としては政治も外交も、機能面で休眠状態ではあるが。

 街や領国経営では、各領主の差配次第、つまり拡大解釈の自治権が強くなるという。

 跳ね橋の街も、石牢(=奉行所・裁判所・拘置所みたいな)が犯罪者の一時預かり所として機能し、領主が()()()()()として孤軍奮闘することになる。



 さて、あたしたちだが。

 う~ん、いいことした後の下水道は...すっごい香しいもんですねえ。

 涙、出てきそうです。

「ツーンと来ますが、先輩、くれぐれも火属性魔法は発動しないでください」

 よくも、こんな辛いとこで後輩、君は声を出せるものだなあ。

 あたしは、声が出ないよ。

 今、ここで返事したら...窒息しそう。



 下水口から侵入しようとした折。

 格子があったので、これを小さな火炎球で吹き飛ばしたら、思いのほか大きな爆発につながった。

 危うくバレるところだった。

「小さな火種がガスに引火、瞬く間に下水道は火の海になるだけじゃなく...地上の方にも被害が出るでしょう。当方はその場合、真っ先に他人のフリとさせて戴きます」

 えー。

 そんときはみんな、一蓮托生で髪もチリチリに。

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