そうだ! 聖国へ行こう 6
草の根ごと引っこ抜いて、両手で握り。
顔の横まで引き寄せ、ひたすらにカニよろしく横歩きをしている客を見つける。
あたしは、観光客に背中だけ見せてた。
ま、魅せれるほどの美しいものではない。
いや、はっきり言えば、だ。
こんな戦士っぽい身体を誰が見るのだろうって。
いや、見たい人はいたんだ。
天然エルフと一緒に、キャッキャウフフな雰囲気の“あたし”を愛でたい人が。
ミロム・バーナード嬢。再結成を目論む“鬼火”のリーダーだ。
◇
もう少しだけ、ひと巻き程度に話を戻すと。
森に棲む天然エルフを見ることが出来るツアーを知ったミロムさんは、だ。
あたしに参加するよう促してきた。
あ、いや。
参加するのは、エルフ側の方でだ。
彼女の愛するセルコットの肌を、他の誰かが見ることへの抵抗は薄い。
もっと言うと、希薄ってくらいに無色透明だ。
そう、彼女はNTRものに弱かったというか、それが性癖だ。
こじれてる。
ねじれてる。
あたしの身体は傷だらけだ。
ラストエリ〇サー症候群みたいな病的なもんで、
ヒールとかポーションは最後まで取っておくタイプ。
だってさ、かすり傷に勿体ないじゃん。
ポーション...1本幾らすると思ってんの?!
って、逆に聞きたくなるわ。
そんな、あたしの背は刀や、斧、或いはこん棒めいたもので抉れてる傷跡もある。
色の抜けた褐色系で、ダークエルフのような雰囲気が少しだけ残ってた。
たぶん、肌の色でだ。
普通のエルフも最近は、世俗の中で暮らすのがいるから。
もうダークエルフだけが背徳者とか、ねえ。
何百年前の話をしてるんだ、ってこと。
血統主義でもなければ、エルフなんてみんな町に家を持ってたりするもんですけどねえ。
◇
あ、ほら! 妙な動きをしてる客がいる。
他人に恋人が見られてるのを見るので、興奮する。
変態さんが寄ってきた。
「くぅ~ ミロムさんじゃんか!!」
「知り合いなの? っ、マナーの悪い人」
うなづいてた。
ここで声を挙げるのはご法度。
村にとっては、天然エルフであってほしい。
これは“仕事”だと割り切りたいエルフたちも、現実には戻りたくはない。
「聖国に行くために寄っただけなのに」
と、零したあたしへ...
「聖国へ? ここに...」
ちょっと歯切れが悪い。
事情を聴いて驚いたんだけど、この村、中継地点としては利便性が悪いんだそうな。
エルフを見に来る人たちの為に作られた、テーマパークのような施設で。
道すがらに寄るような地でもないらしい。
じゃ、秘密結社の3人は――当然、観光目的だ――息抜きである。
あたしたちは、ミロムさんの我がままに付き合わされた。
天然エルフと戯れるセルコット・シェシーを見たいがために。
「あなたの知り合いさん、妙なとこでクネクネしてるけど」
「......み、見ないであげてください」