表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
13/508

港街の悪い人たち 3

 貴重な材料ですよと、アピールを受けたあたしは――教区長の手中に落ちたように見せかけている。

 ああ確か似たことあった、な。

 後輩のガキと一緒に盗賊の住処を壊滅させた、アレ。

 そうそう、アレもあたしが囮になって――舶来のナーロッパ童話よろしく、()()()を道標に、討伐隊へ知らせたっけかな。後輩のやつ『これは生娘ですから、今から楽しみなウフフフなことし放題ですよ』とか...。

 ま、生娘は今でもそうだけど。

 売り込みのセールストークがマジ怖えんだよ。

 本気かなとか...思うじゃん。


 で、あたしが一人寂しく...ま、ちょっと弄ってるところへ。

「まーた、寂しくなって半べそかいてる」

 って、天窓から覗いてくる。

 お! やっと、きた。

「半べそ...か、かいてない」


「忠告無視されて、床...ですか。かわいそうに」

 憐れんでくれるようなそぶりも見せつつ、

「ま、それでも...ソレ、縫い目でスジ擦るの辛いでしょ」

 ってわざと小悪魔的に言う、後輩こいつの舌が恋しい。

 天窓から薄暗い部屋を覗き込んでるだけで...よく分かったな。

 ああ、すっごい辛い。

 爪でかかる程度の擦れで、さ。

 ヒダに触れるかくらいの摩擦しか...

「って!!!」


「はいはい。恋しかったんだよね、共感だけしてあげます」

 ああ、ぅ、淡泊。

「おい! キサマ、誰と話し」

 扉番をしてた男がへやに入るなり、後輩は彼を着地マットに使ってた。

 勿論、その後は綺麗に首の骨を折る。

 惨い。

「そっちの()()はしなくていいです。もっとポジティブに考えましょう! 彼らは村はずれに居を構えた、盗賊の集団と同じだと...そうすれば殺人も、何も知らない人たちの“()”となり、世の中の幾分かは掃除できたと思えばいいのです」

 おお。

 なんと立派なセリフだ。

 あたしも大概に苦労人だと思ってたけど...

「先輩の苦労は、別次元です。当方のは、極めて一般的なので比較対象にしないでください」

 あれ、これ怒られた?

「いえ、怒ってません。ただ、」

 あたしが閉じ込められてたのは、()()()だった。

 教区長らが用意してたのは灯台を兼ねる騎士団の施設。

 王国が設置した監視塔だった。

 海から招かれざる客、或いは海賊の襲来などの監視を行っている。

 その施設の倉庫に一時保管。


 と、いう事で。

 あたしは荷物だってもことだ。

 泣いていいですか。

「泣くのは後に」

 気が付いた兵士がアタシの方へ。

 身ぐるみ剝がされて、武器のない平民みたいな服着せられ...

「魔法、騒ぎが多くなるので」

 突き飛ばされてた。

 お、こ、後輩...

 千鳥足みたいに、トットトッのステップを踏みつつ、兵士の前へ。

 兵士の方は、今にも倒れそうに歩く平民女あたしを支えるように腕を広げてた。

 そこへ一跳躍で飛び込んできた、修道女の刺殺される。

 思い出した、こいつが“紅の修道女”だって呼ばれる謂れ。

 こいつが現れると、辺りが()()()に成るんだった。

 その中に佇む修道女。


 後輩に促されるまま、死体を家屋の影に隠す。

「こ、黒装束こいつらの正体は、検討ついてる?」

 根城を調べるための囮だけとは思いたくない。

 後輩は、手持ちのナイフをあたしに寄こしながら、

「組織の全貌を解き明かしたわけではないので、はっきりしたことは言えません。ただし彼らは末端、油断しているであろう時分に漁ってはみたものの...」

 組織名は“アメジスト”、()()()()()()使()()だとするが、遣える神の名が何処にも記されていない。口に出すのも、記録に残すことも憚れるという趣旨か、いや、今の段階では何も分からないという。

「で、先輩の方は?」

 後輩は、あたしの首筋や、肩、腰に腹とか念入りに見てくる。

 触診もして...

 なんか、ちょっとエロい。

「や、くすぐ..」


「やっぱり、腕か」

 あたしの残念そうな表情は見えてないんだろうなあ。

 もうちょっと密着してたかったなあ。

「この傷は痕になりますから...回復魔法で治しておきますね!」

 後輩から怒気めいたものが感じられる。

 言の葉からは優しがあるけど。

 態度の中に怒りを感じて...どうした、おまえ?

「あ、そうだ...冒険者は?!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ