そうだ! この世界の話をしよう
ちょこっとずつ開示されるようにでてくる...世界の一般常識。
あたしが理を知らな過ぎるのが問題なんだけど。
エルフの隠れ里から、
魔法の学校へ行って、さらに冒険者になった後も、囲われた世界の中でしか生きてこなかったから。
何も知らなかった...
っていうのは、いい訳にしか聞こえないかな。
◇
ラグナル聖国、コンバートル王国、メガ・ラニア公国の乗る大陸は、大きなひとつの世界から見ると...複数のうちのひとつでしかない。海で隔てられた対岸には、最も巨大な超大陸なんてのがある。
あたしの故郷である隠れ里も...その大陸だ。
さて、大して大きくもなくって言いうのは、超大陸の存在を知っているからだけど。
国の大小に関係なく、経済はほぼ構造上同じになっている。
港を多く持ってたコンバートル王国が、海向こうの国とも貿易を盛んにしてたから。
必然的に、だね。
コンバートルの取引相手国と同じ作法を導入していくことになって――
はや3世紀。
各国でも盛んに貨幣経済が導入された。
市民レベルでは未だに抵抗はあるみたいだけど...硬貨で実感する“富”の魅力には抗えないようだ。
鋳造される硬貨は、
下から“銅貨”。
銅貨1枚の呼び名は様々だけど、共通語では“カッパ”って呼んでる。
.9999の純度を誇る銅のインゴットから作られて、光沢が性癖にささるという変態さんが多い金属。希少ではないけど、地域によっては銅貨が経済の中心貨幣ってとこもある。
で、次に“銀貨”。
銀貨1枚に対して共通語では“シルバ”って呼ばれる。
聞き取れなかった国では訛って“ジルヴァ”、或いは“シルヴ”だ。
銀貨1枚に対する価値はやはり各国とも、それぞれに違う。
銅貨100枚だったり1000枚って国もある。
この大陸では銀の採集できる山が少ないからだ。
で、当然、希少価値は数段に跳ねる。
で、次に“金貨”。
これはもう作ってる国が少ない。
交易商人の間では、金貨や銀貨ではなく“棒”を用いる。
金属を棒状にして目方によるシステム。
金貨を噛む所作は、この棒を噛む商人たちから広まった、とか。
さて、金貨だけど。
硬貨にした時、柔らかすぎて実用性が無いと分かっているので、流通させている金貨は一律で“金合金”が使用されている。ま、殆どの金貨には、ドーセット帝国皇帝の横顔が彫られてた。
うん、ヒルダのお父ちゃんなんだわ。
見たことないけど。
◇
金貨の純度は、3割の銀を混入させて鋳造される。
それでも十分希少価値は高いのだけど、純金じゃないって知ったら...そうだと思い込まされてた人々は、キレてもいいベルだと思わない? そうした金貨の光沢はまあ、白っぽい。
白金貨って呼ばれてるらしい。
あたし? いや、金貨なんて触ったことないよ。
お金持たせると、財布に穴が開いてるから...
道に棄ててるようなもの。
もういい、嗤って。
あたしの買う財布、お金が残らないのよ。