そうだ! 聖国へ行こう 4
師匠も野宿だという。
いや、師匠のナリなら吸血動物の一匹や二匹。
ちなみにヒルダは、宿場町の一等いい宿屋へ泊るんだという。
いや、ミロムさんも同じらしい...が。
紅の~後輩は...
「当方は、修道女ですから教会で宿泊施設を用意してもらえますので」
だって。
ま、マジかよ?!
修道女って...なに!!!!!
「な、なにって。神に仕える修行者ですが」
後輩が?
神に祈ってる?
んなあ~姿なんて、見たことが...
いや、今のは思っただけなのに殴られた。
「神を冒涜すると、鉄拳が飛びます!」
それは、後輩を...
また、
殴られたあ~
うわああああああん、こいつ、あたしを殴る~ぅ
ミロムの腕の中へ。
「おーよしよし、じゃ、セルコットさんはミノムシへ」
は?
「え?」
コンバートル王国では、リーズ王国からの代表として招待されてたから、タダで宿泊施設を借りられてた。王都での優雅な独り暮らしは、まあ、そういうもので...あたしを泊めることに躊躇は無かったのだという。
で、今。
そう、今が大事。
あたしの財布は穴が開いてた!!
ここが大事だ。
クソゲーの集大成やぞ。
財布に穴が開いてて、各拠点で採集した金貨や銀貨の一切が、実は全く溜まってなかった...って。
こんな無理ゲーはない。
「はあ、でも、二人分となると私の財布も怪しくなりますし...ここ、村ですし両替商とか期待できませんよね?」
は、はぃ~
ATMなんて便利なものは、とりあえずどこにもない。
商人ギルドや、冒険者ギルドでは少額の借金ができる。
担保となる元が無くても借りれるけど、踏み倒したら...その少額で命が危うくなるという、怖いお兄さんたちが現れる。証文を片手に半永久、少額借金を過払いさせるとかの悪だくみをしないのも...ギルドらしい行動。
ちゃんと返済すれば、証文も消える。
いや、それでもギルドがある町まで行かないと、...それも難しい。
国家から認可を受けた、専売商人として両替商ってのがある。
これがATM...とはいっても、便利な~って言葉には似つかわしくはない。
例えば、リーズ王国の次期剣術指南役の役職が内定している、ミロムが路銀の引き出しをと、考える...国や知り合いの貴族との付き合いがある交易商人でも同じだけど。
ズバリ! 前借してるんだわ。
何日も掛けて、自分の金庫から引き出すのと同じ額を、だ。
立て替えてもらうことになる。
ギルドに借金するよりも、確実だけど。
金庫になかった場合は...
うん、交易商人などが怒って傭兵でも差し向けてくるだろう。
「解説どうも、まったく誰に向かって話してるんですか? セルコットさんは...」
あたしをまさぐるミロムさん。
しばらくこうして...
なし崩し的にミロムさんの部屋に転がりたい、が。
「はい、今日のセルコットさん吸いはここまで。わたしも心苦しいのですけど、野生に戻ったあなたを明日、吸えると思うと...心が弾みます。とはいえ、村の井戸なんかで身体を濯がずに、ちゃんと森の泉とかでエルフらしく月明かりに照らされながら...そう! シチュエーションを大事に身を清めてくださいね! いえ、くれぐれも井戸なんかでショートカットしないように!!!」
強く念を押される。
エルフ=森でしか生きられない貧乏人みたいな偏見は何?
それ、偏見?
「ああ、でも、もういっかい...」
あたしの脇を嗅ぐ。
あ、いや...まあ、いっか。