そうだ! 聖国へ行こう 3
ヒルダは当初、領事館付き守備隊である“海兵隊”を本国に帰還させようと、画策したことがある。
が、その結果はさんざんだ。
と、いうのも――「姫さまがお戻りにならないのに、どうして我らだけが帰れましょうか?!」っていう正論が帰ったきた。彼女が領事館に頼らなければ、今頃は一人旅も出来ていたかかも知れないし、或いは第三王子殺害容疑で...執拗に追い回されてたかも。
いずれにせよ。
「ついてくるってんなら...装備品とか、いや、そもそもその他国の軍隊丸出しの装備は、NGだから!」
って言葉で。
海兵隊100人は、傭兵のなりそこないみたいな装いになってた。
頭を抱えるヒルダが面白い。
「マスケットは使えないよ?!」
帝国の正式採用装備には、火縄銃がある。
一般歩兵であれば、長銃を。
特殊部隊や、領事館付き守備隊ならばショートバレルの火縄銃が。
射程は期待できないけど。
その使い勝手は、効果的だ。
でも、それはドーセット帝国だからできる贅沢な装備。
持ち歩くだけで、衆目を惹きつけるだろう。
「では、複合弓を。やや、練度を有すると思いますが...我らは傭兵未満のゴロツキですので...腰にはショートソードで如何でしょうか?!」
海兵隊といえども、帝国式軍用七法は使えない。
だから、帯刀の方は何を持っても一緒だった。
けど...
ヒルダは頷きながら、
「いいんじゃないかな? 傭兵にも成れなかった連中は、剣に振り回されるようなロングソードを持ちたがる傾向がある。ここまで来ると、片手で扱うには少々厳しくトゥーハンドのように両手で柄をしっかり握りこんで遠心力で叩くとか、振り下ろすなんて...のに、なるかな」
崩れにしては身の丈を知っているとほめてた。
けど、
「そういうのであれば、もっとリアルに...トゥー」
「いや、いいから。今のチョイスでいいから!! 変なの持たれてチームプレイが出来なくなる...そっちが怖いから! 両手剣の話はナシの方向で」
って、言い直してた。
ふ~ん...
確かにブロードソードでも、身長と腕の長さから腰の落ち着かない連中がいるなあって思ったけど。
はあ、そういう...
◇
荷馬車に揺られる平和な日々――
1日で数十キロメートルくらいしか進まないけど、王都から離れて数日経っても黒煙がみえる。
消火活動は都のすべての人間が参加する必要がある。
しかし、川の対岸でいがみ合ってて...遅々として進まないって話を逗留先の宿屋で聞いた。
かつて、あの珍妙なる3人組が宿泊した冒険宿である。
ま、彼らは安宿の方には、泊まってないんだけどね。
理由?
そりゃあ、ダニがいるからでしょ。
安いのにはそれなりの理由がある。
あたしは、馬車を係留したとこにある木々にハンモックを吊るして横になる。
「それはまた、エルフらしい」
らしいとはこれ、如何に?
「エルフと言えば、妖精よろしく」
「妖精じゃなくて、亜人ね。人間という種が中心の世界だと、ハーフリングもエルフ、ドワーフもあ人だから...妖精なんてキワモノじゃないから。それに! あたしが此処でハンモックを使うのは、部屋のムシが怖いからだから!!!!」
ダニは怖えよ。
血を吸うんだぜ?!
マジ、無理。