そうだ! 聖国へ行こう 2
“口”の拠点となってた村の中には、馬車が用意されてた。
カモフラージュで農作物とか、或いは乳製品などの類を作ってたから...それらを王都に運ぶために利用してたものだが、秘密結社の拠点だとすれば、兵員輸送用だと考えることもできる。
ゴロツキを何人運び込んだところで、コンバートル王国のような惨状へ持っていくのは難しい。
と、なると...この荷馬車の数は。
「送り込んだ時のもの」
ヒルダのキリリっとした鋭い視線が光る。
うん、かっこいい。
あたしも同じことを口にしたい。
「じゃ、還し忘れたわけだ!」
キリリって返したら、
皆に嗤われた...何故だ!!!!
「収穫物の納品でなら、村で共有しているものを装うだろう。逆にこんな立派(=完全武装10人程度を収容可能)なホロ張り荷車じゃあ、門前にて怪しいって映るから王都にはこの馬車では乗り付けていないだろう」
ミロムさんはさらに続けて、
「あとは、このクラスの馬車だと、交易商会なんかの持ち物であることが多い。...っ、その刻印らしきものが全く見当たらないとすると...」
世間に疎いあたしの頭に師匠の腕が載る。
お、重い...
「この馬車はすべて個人所有だって話だ。そこで考えられるのは、今早急に必要ないから村に置いてある...か、使い捨てたという二択になるわけだな? お嬢さん方...」
ヒルダもそのお嬢さんに入ってるかは不明。
紅の修道女っていう後輩がお嬢さん方には入ってるのは...目くばせ見たいので知ったとこ。
師匠曰く――「あの子には彼氏がいるのだろうか」って、そんな話だ。
気になるなら、自分で聞いて欲しい。
「そうなります」
敵の資産力の一片を垣間見た感じ。
金貨を偽造し、流通させられる力もあるとみると...
「厄介な相手、この上ないか」
いびつな形にへしゃげられた金貨に視線があつまる。
いや、本当にいびつだと思う。
「なんで曲がってるんだろう? ここに歯形もあるし」
「ああ、それな...俺が噛んだ」
師匠の独白。
金貨を見ると、みな総じて噛んでた。
歯形の付き具合で...ニヤけてみせる。
「どゆこと?」
「どうもこうもない。本物の金であるか?! 或いは金の含有量はどのくらいかを歯形で調べてるのさ。豆金や粒金はもう目方で量るしかないが、金貨くらいになると不純物の目方まで入れちまうからなあ」
金貨は型に“金”を流し込んで作る。
その際、銅などを混ぜ込んで貨幣として、やや丈夫に作るのだという。
ま、型から出すときに曲がってしまう事は、多々あるらしいんだけど。
偽物の方は、この含有量に差異が生じる。
だって、安く仕上げて大きく儲け抜ける必要があるから。
でも?
「これは、金の方が多いな... 存外安く仕入れて、高く売るのではなく。公的に出回っている方が偽物だと言いくるめて、暴落させるつもりかもしれない」
貧乏人は師匠の現実。
元はドーセット帝国の皇子だから、そっち方面が明るいようなんだけど。
なぜか、エルフのあたしより物知りで...