表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
123/507

ぶらり、貧乏人の旅 4

 二重底の財布からは、偽金貨が出てきた。

「これって......」

 あたしは、皆に見えるように腕を突き出し、

 司教さまがむぅ~って唸ってくれた。

「ラグナル聖国の金貨のようですね」

 で、まだ存命している男へ視線が流れる。

 彼の処遇が残ってるんだけど...

 その前に、だ。


「この金貨はなんだ?」

 明らかに偽物だと分かる、稚拙なつくり。

 金貨の製造には、各国ともに神経削ってるところがある。

 作り過ぎると、金貨としてだけでなく“金”の価値を大きく下げることになるし、流通量が著しく少なくなると、それ以外の貨幣価値が下がり市場にだぶつくようになる。つまり経済に大きく影を落とすことになる。

 故に、マーケットに設置される国家公認の“両替商”ってのが信用のあるうちに回収したり、ばらまいたりして調整しているのだという。

 これ、貧乏人の師匠からの受け売り。

「見たまんまだよ」

 ちょっと見ないうちに、フルボッコにされたように顔が腫れ上がってる。

 後輩なんかは「誰です、この人」扱いだし。

 司教さまも「治療には神への寄進が必要不可欠」とか...無理やり寄付を迫る始末。

 どっちが守銭奴なんですかねえ。

「わりぃ、言い方かえるわ」

 男の顔がまた、一段と腫れた気がする。

 これが師匠の見えない張り手。


 あ! あれなんだ!!!

 って、使いふるされた視線誘導術を用いて、気が散らされた隙に...

 そうやって男は、師匠に()()必要以上の情報を騙ってた。

「その金貨でひと騒動、起こす手はずだった」

 “クチ”の仕事割は、扇動である。

 人々に不安を植え付けて、煽りに煽った挙句にコンバートル王国のような、国家の屋台骨を挫くに行くのだ。

 そして、聖国はすでに教皇猊下が暗殺されてた。

「ふむ、しくじった弟子の尻ぬぐいか」

 ちらちら師匠が、あたしの臀部を見てくる。

 で、ため息。

「腰はこう、ばばーんと張ってないと! つまり、そこのリーズの次期剣術指南ミロム・バーナードのようなのを()()()()というのだ!! 見習って安産型になれ我が不肖なる弟子よ」


「ほわ?!」

 ミロムさんが、セクハラですと割って入らなかったら...

 ヒルダが殴りに飛び出してたかもしれない。

 ま、なんだかんだで。

 みんな、あたしのこと気にかけてるんだろうなあ。



 ラグナル聖国では、教皇選出密会なるものが開催してた。

 聖国における教皇は、宗教の最高指導者であるとともに国家元首でもある。

 聖都市民100万人の生活を導く王なのだ。

 故に、いつまでも王が不在というわけにはいかない。


 教皇選出密会内では、陶片選挙が行われている。

 票決に至れば、教皇旗が半旗から上へ掲揚されるのだという。

 ま、1回や2回で決まった試しがないのは、有名な話。




 聖国の傭兵ギルドは繁忙期に入ったようだ。

 ギルドの受付嬢がひっきりなしに、飛び込んでくる案件ってのを捌いてた。

 その様子を燕尾服の少女が目撃している。

「聖都にあるギルドは4、5か所。そのすべてで人が目まぐるしく動いてますね」

 部屋に戻るなり、彼女は少年にそう告げた。

 少年の耳には同じことが、和服男からも同じことが告げられてた。

 まあ、知ってたんだけど...

 少女を凹ませないよう。

「面白い情報をありがとう」

 と、頭を撫でてた。

 少女は猫のように鳴いたんだわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ