ぶらり、貧乏人の旅 3
縄で縛られたふたり。
村長の家のような館の中には、乱暴を繰り返してた女性たちがあった。
アジトに配置された娼婦ではなく、近隣の村からかき集めた女性である。
師匠が依頼を受けた村の出身だという、若い少女もあった。
「殺しは、この誘拐も隠すためか!!」
男に掛けたセリフだけど。
彼は首を振った。
「戦利品はついでに過ぎない。この村は先刻、あんたが言ったようにカモフラージュでしかないから、食料の備蓄が日々、足りないんだ。...で、山賊宜しく近隣の村を襲ってかき集めてたんだけどな。ま、今回は俺たちの運が悪かった、そんなとこだろ?」
懲りてないところが“悪党”らしい。
それが師匠に灯を点けることに気が付かない。
まあ、そこ悪党だよねって思う。
で、だ。
鈍い音が響いた。
饒舌に騙って男の脇には、彼らの仲間がいた。
一緒に縄にされて。
えっと、横に置いてたような気がするけど......
「お、ちょ...」
男が怯えた。
本当に殺されるとは思ってなかった。
せいぜい町の警備兵に突き出されるくらいには、思ってたのだろう。
だから仲間が踏みつぶされたのは意外という、か。
あたしも、意外だった。
師匠がこんなに怒ってるなんて。
「答えるだけでいい。真実か否かは正直どうでもいい」
え?! どうでも???
「お前らは何者だ?!! 盗賊が村をまねる必要はないよな?」
「あ、ああ。俺の言葉の真贋が必要ないってんなら、この回答の正解ってのは......な、なんなんだ」
「騙ればいいだけだ」
彼らは秘密結社だと名乗った。
その目的は、コンバートル王国の混乱であること。
「そのために?」
「いや、だから戦利品たちはついでだ。俺たち“口”の頭目が女好きだからよ、1日にふたり以上のおぼこ娘を抱かねえと、ち〇こが腐るとかいうもんで。こっちも仕方なく調達?!」
饒舌な男の左耳が吹き飛んだ。
虚空へ足が伸びただけで、だ。
「ぐぎゃあああああ」
「師匠!!」
あたしが止めなかったら...
「悪い。つい」
「お、俺の話は... ひ、必要、必要なえのか!!!」
耳のあったところからは血は殆どでなかった。
踏み込んだ足の風圧だけで引き千切ったもんで、摩擦熱で焼けたんだろう。
「じゃ、じゃあさ......」
あたしは、彼らの頭目のことを問う。
しかし、彼が必死に説明してくれた人物像を頷きながら聞いてた師匠は......
「おっと、わりぃなソレ、ここに至る道で仕留めちまった」
だって。
懐から出たドロップアイテムだと言って、二重底の財布があたしのもとに来た。
◇
「驚いた、死体の懐を漁るの仕込んだのは、兄上さまですか?!」
ヒルダが退いてた。
うん、わかる。
尊敬する兄がそんなことするとは思ってもみなかったろう。
「何を言う?! 敵の死体でも有効活用するのは、冒険者としての嗜みであろう。魔物を狩れば、体の一部を持ち帰るのと大差ない。こいつらにはもう必要のない財布。こちらが有効活用するのは当然である!!」
真実だ。
いや正論かもしれないけど。
納得はできないよね、普通。