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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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新王と市民軍 王都灰燼 17

 暗殺者が暗躍する頃合いではなくなった。

 というか、暫く様子見かんそくしてた者たちが、だ。

 どういうわけか距離を取り始めたのだ――いや、違うか。巻き込まれたくないと思ったと、言い換えた方がいい。

 理由は至極当然なんだけど。

 王都市民を守る筈の国の軍隊と、王族直属の禁軍がだ。

 民に刃を向けたからだ。



 この混乱に乗じて、要人の暗殺をすればいいと考える。

 いや、違うんだよ。

 逆。

 それは逆なんだ。


 こうなる前から王都の空気は不穏だった。

 逃げ遅れた大使館の要人たちは、今、独自の裁量で警護を厚くしている。

 目端に動くものが野良猫だって殺しに来るだろう。

 そうした警戒度MAXの警備兵に、感づかれずに事を成せる者は、もはや()()の~とかいう二つ名で呼ばれることになる。

 あたしの知る中では、ひとりもいない。

 別の意味で“伝説”作ったやつはいるけど...ヒルダさんだわ。



 警戒MAXの貴族館へ単身、正面の門から突破すると。

 瞬く間にお屋敷の半分が剣技のひと振りで消し飛んだという。

 アホだ。


 いや、脳筋過ぎて。

 チートも通り越す。

 無敵じゃないだろうけど、無双はいい加減にしてほしい。

 その攻撃により、あたしが巻き込まれて4日後、瓦礫の中から救出された。

 メイドに扮して潜入し、こっそり悪徳領主の暗殺をしようとしたんだけど...獲物横取りされて、踏んだり蹴ったりだった。あたしの仕事ができなっただけで、依頼が誰かの手で遂行されたのだと思えば...失敗というわけでもない。

 ふふ、あたしってばポジティブ~♪


「それ滅茶苦茶、アホじゃん!」

 ミロムからの呆れた声が木霊する。

 夜の帳も落ちてるし。

 王城方面が赤黒く燃えているように見えている最中、この帝国領事館はやや、おっとりしてた。

 こんなんでいいのかってくらい、()()()()してる。

「だって、こっちに隠密なんて二文字は無いんだよ!」


「それって、暗殺者として」

 いやって声が漏れた。

 帝国式のソレを暗殺剣と呼ぶのは、リーズもある大陸の方だ。

 使い手のすべてが圧倒的武力で、事態を自分好みに染め上げるために...

 いつしか帝国式は“暗殺剣”と呼ばれるようになった。

「その攻撃に巻き込まれて知り合いが多数いるわ」

 ミロムは項垂れてる。

 たぶん、あたしじゃない。


 リーズの傭兵たちだろう。

「それって謝ったら許してくれる?」


「知らない人たちだろうから、別にいい...。それよりも、どうする? 王城の方はあんなんだし、動くなら早い方が?」

 星灯りも届きにくくする黒煙が、

 状況のヤバさを3人に伝えている。

「動きたいのはやまやまだけど」

 館にもいない、あたしが問題の一つ。

 ほんとうにどこ行ったんだよって、思われてた。



 探索を諦めた、あたしは。

 再び、古着屋へ立ち寄る。

「何しに戻ってきた?」

 旅芸人風の男がカウンターに。

 首の骨を鳴らして、左右の肩に傾けてた。

「目につく者は殺せたと思うけど」


「ああ、情報屋から聞いている。方々から様子見かんししてた連中が、金色おまえを目撃した時点で潜伏しやがってな...」


「そっか、それでサーチに捕まらなかったんだあ!」

 ちょっと間抜けっぽかった。

「国王軍の連中が片端に武器を持ついや、怪しいと思った者に刃を向けやがって...」

 そこで漸く、あたしは旅芸人の彼の息が早くなっていることに気が付いた。

 カウンターの後ろへ飛び込むと、

 彼の腹には、深い刺し傷があった。

「ポーションを!!」


「無駄だ。手持ち、5本飲んでこの有様だしな」

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