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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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新王と市民軍 王都灰燼 15

 とうとう市民軍という名の暴徒と、近衛兵団が正面衝突した。


 まずは小競り合いから始まる。

 王都の中の主要な幹線道路に陣取った市民軍というなの集団は、だ。

 プラカードと、垂れ幕を持って各々、ヤジでも飛ばしながら叫び――『国王は要らない!』『君主制の解体!』『市民の手に自由意思を!』――なんて叫んでた。

 貴族社会に市民が聯合して、立ち向かうにはしばし時間が必要な気がするんだけど。

 扇動されているから...

 或いは、声高に唱えるすべての人が...

 呪文のように紡いだ言葉の意味を、理解しているとは言い難い。


 ただ、繰り返して唱えてると。

 集団の心理か刷り込みか、なんとなく正当なものだと思ってしまうようだ。

 ぺらっぺらの薄いスローガンだとしても、だ。

「王を否定するという事は、小さい単位で置き換えれば...家長を否定しているのと同義である! 貴様ら烏合の衆を導くために“王”が存在しているのだ!! 好きな場所で好きなように生きたいというのであれば、この国を出ることだ」

 って、向かい合ってた王党派の市民に一喝、貰ったところ。

 普通ならば、

「はんっ、スケープゴートが欲しいんじゃない! 俺たちの意思こえを代弁する代表者による合議で、進むべき道を選択していく...。そんな世界を欲しているんだ!!」

 みたいな流れで言い合ってた。

 けど、喝入れがちょっと違った方向に入った...ぽくて。


 暴徒の方は唐突に、

 王党派支持の市民を張り倒してた。



 もうあっという間の出来事だ。

 張り倒された市民は気が動転した。

『え? 今なんで殴られたの?!!』

 って、頭の中でぐるんぐるん質問が巡ってた。

 すぐに起き上がって、恫喝でもすれば――或いは、罵りあい程度で済んだ可能性がある。


 でも、張り倒された市民は地面に四つん這いになった状態ままで、ぴくりと動かなかった。

「キサマー!!」

 そんなことしてたら、つまでも立ち上がらない横にいた者が、目の前の市民を突き飛ばしてた。

 あとは連鎖的に、小突く。

 叩く、

 殴る、

 蹴る、

 体当たり、

 絞める、

 かじりつく、

 チャックを下ろす、

 脱ぎだす、

 揉みしだく、

 吸いつく、

 舐める...もう、ひっちゃかめっちゃかに。


 で、ズドン...最後は生々しい音が響き渡る。

 短筒って呼ばれた火縄銃ショートバレル、だ。

 銃身がマスケットの5分の1くらいしかないタイプで、有効射程は20数メートル。

 金属製の甲冑なら、弾くほどの弾速しかなく。

 もっぱら脅しくらいにしか、利用されなかったものだけど。 


 暴徒のひとりは舶来品の短筒銃を構えて、止めに入った禁軍の兵士を撃っていた。

 金属のブレストプレートにでも当たってれば、大事に至らなかったろうに。

 そういう時に限って、太股を撃ち抜いてたりする。



 あたしの目の前に立つ衛兵は、

「御用改めである! 素直に武装解除して――」

 マニュアル通りのセリフを吐きながら、

 槍を突き出して、にじり寄ってくる。


 まだ、少し距離がある。

 半歩後ろに下がったあたしは、前傾に身構えたとこ。

 踏みこむ足は右、足の下で火炎球が爆発するようなイメージを浮かべる。

 上体を起こして飛び出したら...


 たぶんサバ折りだわ。


 ぎゅーんって、

 走りだせてた。

 ポンチョ・ローブの背面、腰に巻き付けた厚手のベルトに()()()()()()

 グルカっていう少数民族が使用する、鎌のような刀身が“クの字”に曲がっているのが特徴。

 また、ナイフって言っちゃあいるけど。

 刃渡りは30~40センチメートルくらいあって、ショートソードにもっとも近いとされる。

 単に刀身が真っ直ぐなものよりも、懐に飛び込んで、鎧の継ぎ目から切りつけるような使い方だと、こちらのククリナイフの方が使いやすかった。


 あたしが王国式なんてのを使わなくて済むように...

 ってことなんだけど。

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