新王と市民軍 王都灰燼 13
「こっちの案件は城主の首ひとつ。で、“金色のサイクロプス”は城主の息子の方だったっぽい」
...っ。
「っぽいって、どっちだよ!」
後輩のツッコミは痛いんだよなあ。
思いも寄らぬ角度から、脇腹の下にジャストミートする。
クリティカル判定が入ると...
ヒルダがその場に、転がってた。
膝から崩れたっぽい。
「い、いや...友達じゃな、いんだから...知る由も」
涙目、
涎、
鼻水が口の中へ...
「紅ちゃん」
ミロムさんがヒルダを介抱。
ヒール要る?とか訪ねてた。
「おっと、つい姐さんばりの...」
やっちゃいましたね。
◇
ヒルダさんが復活してから、話の続きが始まる。
ま、彼女が転がってた草地に腰を下ろしての、昔語りなんだけど。
なんで、レジャーシートを敷いてらっしゃるんです? 後輩ちゃん???
「持ってたからですよ。姐さんはすぐ“疲れた~”って、その場に座り込んで股をまさぐるんで...変なとこに座らせないために、いつも持ち歩いてるんです。盗賊狩りしてた時も、すぐ飽きて座り込んじゃう問題児だったんですよ!!」
「ああ、そういとこ変わらんだね」
ミロムとヒルダは、あたしの昔も語りだす。
ちょ、やめてよー
「パーティー組んでた時から、似た感じだったよね~」
「そうそう、石ころ踏んづけて“足くじいた、いた~い~”って泣き言上げたら、モンスター呼んじゃって...ひどい目にあったよねえ。あれ、マジやばかった」
あ、うん。
あった、そんなこと、あったなあ。
懐かしい。
女の子だけの特殊なパーティーだったけど。
「セルコットのやつだけだったな」
「あ、それそれ」
「何がです?」
後輩が二人に問う。
あたしも気になる。
「パーティーのメンバーが女の子だと思ってたこと。ニーハイ、太ももでショートパンツの子」
「あの子!! いたいた。盗賊だったよね!」
「ま、まさか...ショタ属性ですか?!」
驚いた。
まな板同士で気が合ったと思ったけど。
「中性の子でね。今も、大して変わってないけど......いまなら、ちゃんと男の子だよ。ま、本人は男の娘って属性だって言ってたけど」
マジっすか?!
女の子だと思ってたよ。
ちくしょー、数少ないまな板属性だと思ってたのに。
「揉めば大きくなるってアドバイスしてたのは、嗤えたけど..いや、まぢでセルコットには悪いけど、あの子もしこたま揉んだらしいよ。んで、自力で膨らみを手に入れやがってよ、マジ、こっちが驚かされたわ」
“鬼火”の解散後、盗賊の彼は娼館で少し技を磨いたという。
ま、碌な技ではないと思うけど。
そこでお姉さん方に歓ばせ方なりを学んでいるうちに...その、オムネが膨らんできたという。
なんつう、羨ましい話だ。
で、彼はちっぱい属性に入ったとか。
「金色の話ですけど」
ここで後輩によって話が戻される。
◆
あたしを狙撃した鐘楼上の敵。
同じ暗殺者だと思うけど、火縄銃を使用した暗殺方法だと別の大陸の者だろう。
この辺りだと石弓までが標準といったところだ。
でも、手口を見せつけるのって自己主張だし、下策もいいところだ。
「ちぃ、犬の奴...追ってくるか」
わんわん、聞こえる。
犬の鳴き声に誘われるように、衛兵とか集まってくるし。
あまりいいことは無い。
動物、殺すのはなあ。
で、また“ジィッ”て音が聞こえた。
振り返って犬を見た時、後頭部が狙われたものだ。
しかっし、イラっと来るなあ。