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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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新王と市民軍 王都灰燼 10

 足場を崩した弓兵はやっぱり玄人だった。

 瞬時に背中に抱えてた長弓に切り替えて、崩れ行く体勢のままで矢を放ってた。

 あたしも、背負ってた複合短弓で飛翔体を射抜く。


 これはこれで、ちょーマグレ。


 これぞ“神の賽”のクリティカル効果。

 失敗を悟った達人の目はこちらに向けられてる。

 あたしが視認したのは、矢が放たれた2秒後。


 だって、あたし...神様じゃないもん。

 そう、いつもそう。

 “神の賽”によって、先の先でなくとも後の先で、価値を救うことがある。

 まあ、これをチートと呼んでくれても構わないけど。


 リスクはある。

 使いすぎると、神さまの査察が入る。

 ああ、えっと。

 見られたくないトコを、曝け出されてまさぐられ、贄にされる――あれ。マジで嫌悪しかない。

 チート使うんだから、()()()()()って思うじゃん。

 心の苦痛は、耐えられない。



 もっとはっきり言おう!

 これはアレだ、高低差のある高台に...パンツも履かず、スカートの中身を盗撮させているような。

 気持ちの悪さ。

 個人の趣向で背徳感を覚えるってんなら、ご褒美だけど。

 あたしには、そんな羞恥プレイの方はない。


 しかもだ。

 もっと嫌なのが、そこに触手プレイも交じってくること。

 神さまの査察はこんな感じ。


 体よく身体検査...なんて言ってるようだけども。



 矢は、あたしの目前で消し飛んだ。

 ドライアイで、血走った金色光彩の片目が、ぎょろりと標的を睨む。

 こっちは早く目薬を注ぎ込みたい。


 なんで、ドライアイになるのか。


 矢が消し飛んだ、あたしの周囲に起因する。

 暗殺者殺しをしているときは、それを強要した碧眼のハイエナからの強い要望のせいだ。

『イチに、正体を悟られるな! ニィに極力魔法を使うな! サァ~ンに、盗賊狩りの~とかいう忌み名にも被るんじゃねえ!!!』

 で、別のキャラを演じさせられたっけ。

 “金色のサイクロプス”

 女の子の名乗る二つ名じゃないって抗議したら、奥歯が抜けるまで殴られた。

 殴られた後に、

『いやあ、俺が悪かったよ。お前が可愛くてつい、力が...』

 典型的なDVですねえ。

 今から思い返せば、すべて旦那の悪い癖だったわけだ。


 でも身体がしっかり覚えちゃって。

 可愛がりながら殴る音と、声が耳の奥、頭の片隅に刷り込まれている感じがする。

 矢を放った、暗殺者の腹の上に飛び込むと――


 あたしも彼を、可愛いって籠った声で殴ってた。

 いや、殴り殺してた。

 瞑れた顔に黒い消し炭の痕跡。

「あ...溶け、いあ、焦げちゃった?」

 正直、イってると思うわ。

 このキャラ。

 多分、人格も違うと思う。



「こっちもさ、色んなとこで暗殺しごとしてきたから。同業者の邪魔が入らない事は無いんだけど、ね。あれは...ニアミスって感じだったかな?」

 ほうって食いつく。

 ヒルダの仕事はいつも完璧。

 圧倒的暴力で、なにもかも災害みたいな規模で有耶無耶にできる。

 そもそも失敗ってのは繊細な方々の為にあるもので...

 彼女の失敗と言ったら、戦争で敗戦でもするくらいの規模を差す。


 比較対象が違う。


「紛争地域に赴いて――」

 真剣に聞いてたふたりの目が点になる。

「難攻不落の城塞に立て籠る()()()()を取る任務だった!!」

 だよねえ~って溜息が吐かれる。

 海兵隊の方も似た感じ。

 姫に繊細な仕事は向かない、くらいの声も漏れた。

「こらこら、所々でため息吐くな、話が進まん!!」


「だって、結局、忍び込まなかったんでしょ?」

 ヒルダの首が星を見る。

 ああ、図星。

「正面からじゃあないけど...吹き飛ばした」


「ほら」

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