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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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新王と市民軍 王都灰燼 8

「――暗殺者たちのリスト...とか、」


「あるわけねえだろ。各国ともに自前か、或いは傭兵なんかで対処するとしか掴んでねえ。てか、そこは盗賊狩りの姐さんの仕事じゃねえかなあ。守り切れれば...特別ボーナスもあるって話だぜ?」

 って言われるのが弱い。

 前からそんな甘い言葉で動かされたものだ。

 そして、彼はあたしにそれが、通用することをよーく知っている。


 碧眼のハイエナ...。

 彼の傍から離れても、なかなかどうして。

 呪縛なのかねえ。


 漏らしたその場で、()()()に当たる。

 痛って声こそ出なかったものの、涙目になって...

 小石を包んだ紙片に気が付いたのが運の尽き。


 あたしの運勢も賽の目次第ってことかな。



 やっぱり少し調べるだけで、各国の対応は早い。

 逆にとれば、結論を急ぎ過ぎている。

 救出するリスクより、殺してしまおうってのは、似た稼業として複雑な気分。


 王都は封鎖されている。

 ただし、脱出を試みる者たちに向けた目だから、外から入り込むのは簡単だ。

 そうして片道切符を掴まされた、暗殺者のひとりは王城の北側にある墓所と教会区へ。

 そこにあるのは、ラグナル聖国の領事館。


 教会の初等教育機関があり、多くの逃げ遅れた聖職者があった。

 みんな同じような麻のボロ雑巾めいたローブを羽織ってる。

 聖職者だって言われなかったら、異臭を放つ物乞いだと思うだろう。

 いや、初等教育中の()()()たちは正に物乞いと同じ環境だという――ラグナルの教義として“持っているものは、持たらざる者に与えよ”ってのがあるんだとか。

 要は断捨離だな。

 生きるだけに必要なもの以外は、持つべきではないとか。

 下っ端の身ぐるみ剥いで、上級職の者は、黄金抱かれるいつものパターン。

 ただ、こういう隣人が誰かも分からない傾向は...


 ナイフを握った手を、あたしは砂の入った革袋で叩きつけた。

 ごちゃごちゃとした人ごみの中でも、鋼の銀色は光るんだわ。

 そして、そこに殺意が乗れば――それはもう、暗殺者でしかない。


 司祭長を兼務する領事の前の前で、男のうめき声。

 そりゃ、誰だって驚く。

 領事なんてその場で尻を突いてたし、手首が折れた男も膝から崩れてた。

 で、取り押さえられる。



 あたし?

 あたしは革袋から砂を抜いて、その場から退散。

 だってひとりひとり始末するなんて、時間の無駄だし。

 あの場の有志に任せればいい。



 王城を起点に南側は教育区だ。

 魔法詠唱者教会の学術院なんかもあって、高等な学問を学べる館が多く立ち並ぶ。

 そんな一角にメガ・ラニア公国の大使館がある。


 芸術と、高等魔法教育に力を注いでるんだとか。

 或いはコンバートルが誇る、魔法剣士の勧誘なんかも...その大使館で行ってたとか。

 専属のリクルーターの暗躍は、世が平和ならば問題視されてた案件だった。


 混乱よ、ありがとう。

 ってな状況だろう。

「本国が、見捨てた...だと?!」

 逃げ遅れた、貴公が悪いとか――鏡の向こうで告げられた。

 外務省は国への働きを断念した。

「実に残念だよ」

 交渉が長引けば、人質返還に金銭の要求が含まれる。

 また、コンバートルに手放す気が無いことも分かった。

 大使は、窓のブラインドを上げて一息つく。


 外の世界が見たくなった。

 とは、言っても陽は西の尾根に消えたところだ。



 あたしは屋根伝いに、この大使館へ到着。

 腰の棒ナイフを2、3抜いて投げた。

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