新王と市民軍 王都灰燼 7
怖い話だけど。
へドン卿は、禁軍の一部を使って国家再建の妨げとなる者の排除に努めてた。
身内からの諫言するものはより厳しく。
国内にある各国の大使や領事といった要人にも同じめに合わせてた。
拘束力のある言葉を用いれば、
“監禁”とか“軟禁”というものだ。
これは他国に対する担保である――有事・平時に関わらず、国難であるコンバートルに敵対行動を取らなければ、要人の“生命と財産”は保証するという脅迫。
◇
「――暗殺者なんて、帝国は自前のを使うけど。他国は金で雇える者を使う...金額は勿論のこと、リスクが高くとも尻尾を掴ませたことのない連中なんてのは、幾人か指で数えられるし。そんなのに狙われた日にゃあ」
ヒルダは肩をすくめた。
現在のコンバートル王国は、政府の威光どころか王族の血統でも、地方にその権威を指し示すようなことはできないほど衰退してしまった。仮に、この混乱をカリスマのような曖昧なもので民心を掌握してしまったら、いや出来たら新しい国が興る事も夢物語じゃあない。
そこで活躍するのは暗殺者だ。
闇から闇へ...
陰から陰へ...
標的はさまざまに、金は踊る。
後輩ちゃんが、草の中のあたしを探しにうろうろして。
「姐さんの姿が...」
「んな、ばかな」
「どうせ、パンツがごわごわするとかで着替えに戻ったんじゃない?」
ってドライな物言いが、ヒルダさんです。
ミロムが、あたしの漏らした跡を発見。
デリカシーがないのは男女に関係なく――「ここに痕跡が!!」
◆
王冠の数を数える、あたし。
革袋の中には11枚の王冠があった。
ドーセット帝国領事館から、3キロメートル先にある小さな古着屋の店内――耳の遠い爺さんと、旅芸人風の男が衣装の吟味をしてた。あたしは彼らに背を向け、パンツを探してる――振りじゃないのが悲しいところ。
「盗賊狩りが、パンツで悩むとは...なあ」
「...」
俯きながら、
「誰を抹殺るって?」
手に取った衣装を頭上に掲げてた。
裾はアシンメトリーで、背中部分が10センチメートルは長くなっているように見える。
「いや、抹殺るのはご同業の連中。“ハイエナ”の旦那も、国が混乱していてくれないと表の仕事も、裏の稼業も儲けが少ないと嘆いてらしてな...しばらくの間は王都の要人らには生きていて欲しいんだと」
身勝手な話だけど。
各国ともに不安定な国ほど、怖いものは無い。
まずは、難民の流出は怖い。
理由は単純で、国を追われた人々が越境してきたら物価や雇用などの天秤のバランスが崩壊する――経済危機だ。
この大陸ではコンバートル王国は大国の部類だ。
数万人規模の難民が四方に散る。
そして流入するんだから、地方経済はガタガタにあるだろう。
やられる前に抹殺るっていう国は少なくない。
自国の大使が邪魔なら、迷わずがこういう時代の常識だ。
「うわ~」
「うわ~...じゃねえよ、王冠分の働きをしてくれや。仲介の俺が“碧眼のハイエナ”に半殺し...いや、墓穴掘らされるんだからな!!!」
――切実。