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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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新王と市民軍 王都灰燼 5

 で――『そのような戦力があるのならば、正統なる王国のあるじに協力の意を示し...もってその兵力で我が仇敵を打ち滅ぼさぬ!!!』とか、意味不明な檄文の送付があったという。もちろん、海兵隊を率いるヒルダの肩はずんと落ちて。

 あたしから見ても、矢印にしか見えなかった。

「思った以上に暗愚な王か、バカな家臣しかいないのか」

 おそらくは、その両方だと思います。

 ヒルダの落胆は、あたしには推し量れない。

 だって誰かの導き手となって...戦う事なんてしたことが無い。


 せいぜい。

 生家のあった村で、同い年の子とやんちゃした時ぐらいか。


 あれで()()()なんて烏滸がましくも、口に出せる雰囲気じゃないし。

 うーん、あたし...

 なんもしてないな~



 無能な王様というラベルがアルス2世に張られた。

 発布の出所は、宰相も兼ねる“王の手”の近衛隊長――禁軍との衝突で、王都内に完全独立の精兵があることを知ったからだ。まあ、当然、排除するよりも“味方”になるよう、説得はしてくるだろうけど。

 アプローチの仕方が良くない。


 もっと言えば、傭兵を雇うのと同じくらい気を使って欲しかった。


「さて、この要請書...みたいなのにどう答えるかだ」

 ミロムさんが斥候から戻ってきた。

 王都から出るには、一足遅かった感があるという。

「やっぱり閉ざした?」

 ヒルダはミロムとアイコンタクト。

 あたしは...膝を内側によせてもじもじする。

「国王の命により、四方の正門が閉じられてる。暴徒の侵入を防ぐのと同時に、王都の掌握に本腰を入れるという...」

 ようやく、あたしの緊急事態にも気が付いてもらえたようで。

 くねくねと動きつつ、その場で飛んだり、走ったり...


 ああああああ、あああ、ああああ~

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、、、、

 でちゃう、でちゃう...

 も...

「ちょ?」


「ごめ...」

 あたしは、背の高い草の中に飛び込んだ。

 もう甲冑を脱ぐとか、そんな次元じゃない。

 なむさ...ん。


「セルコット...さ?」


「だめ! 聞かないで。あたしの心が壊れる...」

 そう、間に合わずに漏れた。

 決壊して放水の一部始終を見られずに済んだことは、幸いだけど。

 やっぱり、なにかは失った気がする。


 自尊心?

 いや、もとからお高くはとまってない。


 背徳...か、ん?

 かも、かもかも。


 しゃがんで出来た――えらい

 エルフのこの中で...あたしはめっぽう遅かった。

 大好きな“お姉ちゃん”の前でいっつも漏らしてたなあ...あれは、求愛行動だったのか。

 いや、気を引きたくて寸前まで我慢してたのかも、とか。

「セルコットの奴は、暫く戦線復帰は無理だな」

 ヒルダのキツイ台詞。

 草葉の陰にある、あたしにも聞き取れた。


「酷くないですか!!」

 ミロムではなく、再合流した後輩の声。

「いや、酷いも何も...」

 人の目を憚り、

 彼女、ヒルダは後輩の耳元で――「あの子は漏らしたから、着替えが終わるまで私たちと行動できない。察するなら、ここはミロムに任せて...」なんて配慮ある言葉が紡がれていきます。

 いやあ~

 いい友達だけど、後輩に()()()()()過ぎます。


 せめてそこは...もっと、オブラートに。

 ぽんぽん痛くなったから、とか。

 所用で、とか。

「や、ミロム先輩ばっか...ずるい!!」


「お、セルコットのやつ案外、好かれてるんだな」

 後輩の“ずるい”はちと、違う気が。

 ヒルダも分かっててからかってるようだし...

 はあぁ...

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