なまこ教授のなろう貴族関連の覚え書き
2022 8/24加筆しました。
このエッセイは私のメモのようなものだ。
正直抜けている説明も多いし、歴史的事実に即している訳でも無い。小説家になろうで描かれる貴族の話題だからだ。
さて、君が小説家になろうにおいて異世界恋愛やハイファンタジーのジャンルに投稿しようとした時、その主流である中近世または近代ヨーロッパ風の異世界(ナーロッパと呼ばれることもある)を舞台に作品を投稿しようとしたとする。
この際、知識の不足を感じるかもしれない。例えばヨーロッパの貴族や爵位に関して。
だが歴史的な知識を得ようとすると極めて難解であり複雑怪奇である。
当然だ。国家ごとに、また時代ごとにそのシステムは異なるのだから。
あなたは特定の時代や地域を研究して、それを作品に反映するというならそれはとても素晴らしいことだ。例えばこの作品は1600年頃のドイツ史をベースに書かれている、とかな。
しかしそんな作品は、作者はごく僅かだろう?
創作はもっと気楽に行うべきだ。あるいは間口が広いべきだ。
この覚え書きではなろうで書く際に爵位関連の知識を最低限これくらい押さえておくと、うるさい読者にそうツッコミはされないだろうという程度の知識を伝えるだけである。専門的知識を既に得ているというならこんなものは読まずに君が好きに書かれた方が良いだろう。
爵位の順
まず貴族を描くのにまずは基本の五爵の知識が必要である。地位の高い順に、
公爵(デュークまたはプリンス)
侯爵(マーキス)
伯爵(アールまたはカウント)
子爵(ヴァイカウント)
男爵(バロン)
となる。用語としては中国の爵位が元であるが、それを強引にヨーロッパのものに当てはめたものだ。つまりヨーロッパ史とは齟齬がある。逆説的に言えば細かくその役割とか見ても仕方ないのだ。
とりあえずこの地位の順番さえ間違えなければ良い。
ここで1つ注意して欲しいのは侯爵の『侯』の文字である。
天候の『候』の字とは異なることに注意されたい。
ちなみに拙作の書籍化した『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない。』(以下テサシア)で一箇所だけこの『侯』の字を間違えた箇所がある。マジ死ねばいい……。
さておき、これに加えて、大公、辺境伯、準男爵、騎士が入る。
大公(グランデュークまたはプリンス)
公爵
侯爵
辺境伯(マーグレイブ)
伯爵
子爵
男爵
準男爵(バロネット)
騎士(ナイト)、現代的には勲爵士
である。
辺境伯は侯爵と同格と思ってもらえれば良い(言語的には侯爵を示すマーキスの語源は辺境伯のマーグレイブである)。辺境という言葉のイメージから田舎者や貧乏という意味を連想されることもあるし、そう扱っている作品も多かったが、最近では理解が深まったか貧乏という設定はまずなくなってきた。
元々は異民族と接する地域の国土防衛を担う地方長官である。国土の端に位置し、強い武力を保有している。
時代がくだると武力の強大さから大公となったり国土の端ではなくなることもあるが、それを描くと読者の混乱を招きかねないところでもある。
ファンタジーだと魔界などと面していても非常にそれっぽい。拙作でもそうしたものがある。
大公・公爵はプリンスであることもある。このプリンスは王子という意味ではなく君主に近い。
例えばイギリス王太子はプリンス・オブ・ウェールズの称号を得るが、この日本語訳はウェールズ公である。
英語のプリンスという単語は日本語では王子様の意味しか一般的でないせいで、公の意で使うと読者に混乱を招くところであり、この用法は避けた方が良い気がする。
ただ、大公・公爵位は王家の血が入っている(兄弟親戚である)ことが史実でも多く、なろうでもよく使われている設定である。
準男爵は言葉としてはそのまま男爵に準ずるの意だが、おそらくなろうでの一般的な設定と史実が乖離しているところかと思われる。
史実においてはイギリス王家が戦費を賄うために金で売った世襲称号のことである。そう、世襲だ。そして貴族ではない。
なろうにおいては最下位の貴族であるが世襲ではない、一代限りの爵位と扱われていることが多い。
史実:世襲称号、貴族ではない
なろう:一代限り、貴族である
別にどちらで描いても構わないと言えば構わないが、ある程度作中で設定の説明はすべきであろう。
一代貴族という制度も現実に存在するが、近世以降で知識人を貴族院に入れるためという意味合いが強い。法服貴族などがそうである。
後述の「法衣貴族とは?」の項目も参照のこと。
騎士は極めて複雑怪奇である。そして物語的な騎士は常に美化されており(アーサー王物語からしてそうである)、史実とは異なった姿を常に有している。もちろんナーロッパ世界観や現代の物語・ゲームにおいても史実とはかけ離れている。
例えばアーサー王の配下、ランスロットが板金鎧、プレート・アーマーを着ているだろうか?
答えはノーだ。史実のアーサー王の時代にプレート・アーマーは発明されていない。
例えばコルセットで腰のくびれたような姫君に忠誠を誓う騎士のイメージは正しいだろうか?
答えはノーだ。コルセットが流行った時代、もう騎士は戦士階級としての価値を失っている。その時代の戦場の花形は長槍へ銃へと移行している。
ナーロッパを始めとするファンタジー作品では文化の発展度合いが高い一方で銃器の開発がされていないことが多い。
近世から近代的な文化レベルであっても騎士が名誉階級ではなく戦士階級として残っていることもある。
騎士団というのが領主に紐づく武装勢力ではなく、君主に仕える勤め人のような作品も多く見る。例えば兵士のように騎士団寮に住まうなど。なろうではそういった文化として定着しているとも言える。
騎士は世襲ではなく王や領主に忠誠を誓う一代限りの階級であり、貴族ではないということはナーロッパにおいても史実に対して正しく描かれていることが多い(厳密には史実において農民が騎士として叙勲されたことがある一方で、事実上の世襲となったり、貴族的特権を得たり、裕福な商人が騎士の称号を金で買ったこともある)。
特に異世界恋愛において高位貴族家の当主令息が騎士であるというような設定が見られることがある。ある面でこれは正しい。尚武の気風の中で王侯貴族が騎士を名乗った時代もある。
ただし、常時、騎士団長や副団長などと言って自領のことを無視して王の常設軍を率いるかのように振る舞うかというとかなり疑問ではある。
騎士の多くは平時は農耕などをしている家臣団であり、戦となると招集されていたものである。
上記のような王の常設軍のように扱われるのは歴史的には誤りであろうが、物語の設定としては一般的である。
これに関しては特に異世界恋愛ものにおいて現代に即して言えばスポーツ万能系イケメン枠を騎士という枠に置換しているだけであり、高地位高収入という枠が高位貴族に置換されているだけであると言えよう。
あるいは逆に男性向けのゲーム的世界観においては防御力の高い戦士の上位職的に扱われたり、冒険者をやっていたりもする。こちらは騎士物語的には遍歴騎士(仕える君主を求めて旅をする騎士)を元ネタとしたものがゲーム的な設定に変化したものである。
どちらにせよ、実情とは異なっていても読者の需要を満たしているためそう描いて反発はない。
爵位関連用語
なろう作品を読んでいると、「爵位が二階級降格した」的な表現を見たことはないだろうか。
どことなく怪しい表現である。分かりやすくて良いとも思うが、このあたりの用語を解説しておく。
叙爵
新たに爵位を得ること。
例:戦功が認められ、彼は新たに男爵へと叙爵された。
襲爵
親の爵位を継ぐこと。
例:彼は父の死により、若くして伯爵を襲爵することとなった。
陞爵
有している爵位が上がること。
例:伯爵から侯爵へと陞爵した。
降爵
有している爵位が下がること。
例:伯爵から子爵へと降爵した。
褫爵・奪爵
爵位を失うこと。(=平民落ち)
例:彼は敗戦の責を取らされ、伯爵位を褫爵された。
授爵
爵位をさずけること、またはさずかること。
例:王は彼に男爵位を授爵した。
ただし、決して一般的な用語ではないので使うことを避けたり、使うとしても前後関係からちゃんと単語の意味が分かるように書くべきである。
例えば降爵は言葉を知らなくとも漢字から意味が伝わろうが、褫爵は褫の字が読めない・意味を知らない読者が多いと思われる。
また褫爵に関しては「平民落ち」という用語がなろうなどのWEB小説では広く一般的に使用されているかと思われる。
法衣貴族とは?
フランスの17世紀ごろの法服貴族を元に作られたと推定されるライトノベル・WEB小説に固有の単語であり、初出は『ゼロの使い魔』か。これが同作品の二次創作に波及し、なろうでは『八男って、それはないでしょう!』で使用されているのが後続の作品に大きく影響したかと思われる。
意味は領地を有さないが爵位を有する貴族の意であり、宮廷内において官僚のような仕事をしている。
歴史的には国家が貧窮すると爵位を金銭で売るようになり、土地を持つ古来からの貴族には下に見られたり反発を受けた。ここはイギリスにおける準男爵と類似している。
同義の単語として宮爵などと書かれた作品も存在する。
宮爵は『人狼への転生、魔王の副官』における独自用語であり、作者の漂月氏がオリジナルで設定した用語である。
何と言ってもTwitterで作者本人に尋ねたからな。
また類似の用語として宮中伯というローマやドイツの歴史用語があるが、地位がそれよりはずっと高く、大臣のような地位であるためイメージが異なる。
寄親・寄子とは?
ついでと言ってはなんだがこれもまた『八男なんて、それはないでしょう!』において使用されていた用語であり、ヨーロッパ風異世界における有力貴族とその近隣の弱小貴族の関係を寄親・寄子と表現している。血縁地縁による上下関係のようなものである。
なろうにおいてしばしば見かけられるが、これはヨーロッパ史における用語ではない。中近世の日本において、主従関係を親子の関係に見立てて表現された制度である。
寄親は寄子を庇護し、寄子は寄親が出兵などする際に参戦する必要があった。寄親が寄子に給与や所領を与える場合もある。鎌倉時代の初期においては総領が庶子を従える血縁関係であったが、非血縁関係にも拡大された。
有力武士(親)が地侍(子)を雇う、大名が武士を雇うという形のものである。この制度は江戸時代には武家の再編成により消滅したが、奉行所の与力が同心を雇うなどという形として残った。
これは用語の説明なしで使われると少々厳しい。知らないからとネットで検索しても日本の制度しか出てこないからな。ネットで『寄親寄子 ヨーロッパ』と検索すると私のツイートが上位に来るのは笑うが。
苗字と爵位と領地
ある貴族の苗字(家名)と爵位名と領地の名は歴史上一致しない。
例えばイングランドの公爵、グラフトン公爵はフィッツロイ家であり、その領地はノーサンプトン州やサフォーク州が有名である。
日本史で考えても当然なことであり、江戸時代の島津家と言えば薩摩国の藩主であり、伊達家と言えば仙台藩である。当然藩の名と藩主の苗字は異なる。
だが、これは厳密に適用すると極めて煩雑になる。もちろんそれが話の主題となるような話なら別ではあるが、基本的には作者が細部までしっかり設定すればするほど読者にとっても覚えることが困難になろう。
よってなろうでは基本的に同じとしてしまうことが多い。これは手抜きであるかもしれないが、一方で読者ファーストの姿勢でもある。
拙作を例に取ると、『なまこ×どりる』の主人公アレクサは、アイルランド辺境伯、ポートラッシュ家の令嬢であり、領の中心都市がポートラッシュである。
別の作品、『テサシア』の主人公テサシアはノーザラン男爵、ノーザラン家の令嬢であり、その領地もノーザラン領である(ただ、ノーザラン領はエッゾニア地方にあるという設定はある)。
これに関して現実に即していないという否定的感想が来たことはない。もしそういった感想が来たら、読者が覚えやすいようにわざとそうしていると言い切って良いところだろう。カタカナの人名地名爵位名が連呼されればそれは記憶テストになってしまうから。
貴族の夫婦
ナーロッパにおいては一夫一妻制か一夫多妻制を取っていることが多い。
王侯貴族の一夫多妻制については、男性のハーレム願望の露出という訳ではない。女性作者が描く女性向け作品にも多い設定なので。
特に異世界恋愛では王のみ一夫多妻制、正室以外に側室を持つことが許されているというものが多い(正妃・側妃と呼称されることもある、側妃はWEB小説独自の用語である)。
これは例えば王家を中心とする作品では正室と側室の派閥対立というドラマを描くことができ、貴族においては前妻の子と後妻の子、あるいは妾の子といった別のドラマを描くことができるという意味で理にかなっている。
ただ、当然であるが現実のヨーロッパの王侯貴族は一夫一妻制である。なぜなら彼らはキリスト教徒だからな。
もちろん異世界が舞台であり、キリスト教徒ではない彼らが一夫多妻制でもなんら問題はない。ただナーロッパがヨーロッパ風異世界と言いながら一夫多妻を許容する理由は興味深いところである。日本や中国の大奥・後宮などのイメージとの混同が根底にはあるのかと思われる。
ナーロッパにおいては特に女性側で現実の中近世貴族の初婚年齢よりかなり婚期が遅い傾向にある。
これは現実の歴史の結婚年齢を踏襲すると現代の価値観とズレる(日本の平均初婚年齢は30歳程度である)ことが大きな理由だろう。他にも学園モノを行うためという理由もある。現実には存在しない、王侯貴族の通う共学の学園に通うという設定が存在するため、この場合は卒業後に婚約や結婚という話になりがちである。
王侯貴族への呼びかけ方。敬称。
例えば『ヴァイナモ王』なる国王のキャラクターがいたとする。
それに対する呼びかけは、「こんにちは、王様」で良いか? そう問われれば流石に多くの読者が違うと答えるだろう。なろうのランキングに載るような作品だと流石にこう言ったものは少ないかと思う。
正解は「こんにちは、陛下」である。
その息子、『エリアス王子』はどうだろうか。
同様に「こんにちは、殿下」と呼びかけるのが一般的である。
このあたりは良いだろう、では王妃はどうか?公爵は?伯爵は?騎士は?となると全てを答えるのは難しいのではないだろうか。
英語だとこのあたりのルールは超複雑である。だが、正直なところ日本語に訳せない単語や文化も多いせいで、逆説的にある程度簡略化がはかれるのだ。
以下表に纏める。
君主(王・女王・皇帝など):陛下
君主の配偶者(王妃など):陛下または殿下(注1)
君主の子、及びその配偶者:殿下
大公・公爵:閣下、あるいは○○大公、○○公(注2)
侯爵・辺境伯・伯爵:卿、あるいは○○侯、○○辺境伯、○○伯
子爵・男爵:卿、あるいは○○子爵、○○男爵(注3)
準男爵・騎士:卿(注4)
貴族夫人:夫人、令夫人
貴族の子(男):卿
貴族の子(女):嬢
注1:場合による。日本の場合は皇后陛下。英語の場合はMajestyに対応するのが陛下で、Highnessに対応するのが殿下。なろうは殿下のが多い。
注2:貴族位の中でここだけ卿じゃなくて閣下なのは大公、公爵への尊称はLordではなく、Graceのため。
注3:慣例的に公・侯・伯は後ろの爵を略すが子・男は爵を略さない。
注4:ここはLordではなくSirであるが、日本語はどちらも卿と訳す。
注2の補足だが、閣下は軍人や高位の官職者にも使われる表現であるため、宰相閣下や将軍閣下という表現がある。よって公爵以外が使っても問題ない。
例えば辺境伯などはその設立からして軍権を有するので辺境伯閣下などという表現は似合う。『なまこ×どりる』で登場させている。また『テサシア』でも特に説明なく侯爵閣下という表現を出しているが(彼は高位の役人なので)、誰からもつっこまれることはなかった。
あとは高位聖職者の問題もあるか。キリスト教だと、
教皇:聖下・猊下・台下
枢機卿:猊下
あたり。教皇猊下は一般的な表現であるが、拙作『追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。』の感想で一度、聖下や台下にすべきという感想がきたことがある。
言わんことはわかるが、普通に教皇猊下は使う表現であるのと、聖下は新造語、台下はマイナーという問題がある。
ただ、件の作品では教皇と枢機卿の会話シーンがあり、どちらも猊下となって面倒だったのは失敗だったかとも思うので、書き直す機会あれば聖下にするかもしれない。
なろうに非常に多く登場する聖女に関しては現実の称号ではないのでこういった表現は定まっていない。
私は『テサシア』においては『聖女ミズキ』という人物に対して「ミズキ聖下」という呼びかけ方をさせた。
貴族の子供
異世界恋愛ではむしろ貴族より重要かもしれない令息・令嬢である。
まずは用語から。
令息
貴人の息子、あるいは他人の息子を敬った言い方。
なろうだとほぼ貴族の子供に限って使われる。類義語として御曹子もあるが、どちらかというと現実世界舞台で見る表現。
令嬢
貴人の娘、あるいは他人の娘を敬った言い方。
類義語として息女・お嬢様があるが息女は滅多に見ない。お嬢様は特にセリフで呼びかける際に頻出する。
嫡子
家や爵位を継承する当主の子のこと。一般的には正室の長男がつくことが多く、嫡男と言う。正室の子全てを意味する場合もある。
継嗣
家や爵位を継承する者のこと。後継という意味合いが強い。
庶子
側室や妾の子のこと。
私生児
庶子の中でも父親が子として認知していないもの。バスタード。
実子・養子
血のつながりがある子と、血のつながりはなく戸籍上の子。
相続に関しては特に史実の近世ヨーロッパにおいては嫡男がなすものであり、それ以外にはほぼない(領地を分割したりはしない)。
女性が爵位を継承することは時代や地域性にもよるが稀である。繋ぎとしての意味合いが強く、地域にもよるが特例的措置ということも多い。
通常は男性の嫡子がいない場合は親戚などに爵位が移る。
私生児や養子が爵位を継ぐことは難しい。なろうではかなり気軽に養子入りして云々という話が多いが、これは日本の武家文化の影響を強く受けているように思われる。
ここで、WEB小説は現代に書かれる作品であるから女性の権利は史実よりは明らかに高い。
女性が貴族家当主となって男性を婿入りさせる設定のものも多いが、これは当然といえよう。
ただし、男女同権を意味するものではない。現代的価値観で性差や産まれの差を無くそうとすると、それは歴史的、中近世のヨーロッパ的ではなくなり、読者が求めるものにはならないためだ。
ここに差別を助長する意図は無いことに留意されたい。
さて、貴族家、というよりも中近世の家族は本来子供が多くなるはずであるが、一家あたりの子供の数が明らかに少ないものも多い。
現実の貴族では特に嫡男を得る重要性、また飢饉や病気や戦争で子供の死亡率は現代より格段に高かったことを考えると、現代のように子供が少ないということはありえない。
現代人の価値観として貴族の大家族を描くのが難しいという作者側の理由も当然あろう。先述の結婚年齢が史実より上であることも大いに影響はあるだろう。
だがこれも読者フレンドリーというか、話のストーリーに関わってこない兄弟が沢山いても読者にとって興味深い話にはならず、暗記量が増えるだけだからとも言える。
例えば、拙作『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない。』では侯爵家令息のルートヴィッヒに兄弟姉妹の話は存在しなかった。
3万字台の中編なので、余計な要素を省いたためではある。
書籍版だと既に嫁いだ姉と、弟がいることになっている。姉は実際には登場しないが、弟は何度か登場する。
つまり書籍版にはショタ枠を用意したという意味である。
この辺りは話の長さなども考えて調整するべきところだろう。
貴賤結婚
王族が平民及び下級貴族と結婚すること。
基本的には王族は近隣の国の王族か、高位貴族と結婚するものである。
この場合、公爵または侯爵がそれに該当する。それ以下の場合は結婚が認められないか、王位継承権が剥奪された。
これはもうなろうというかシンデレラストーリー全般において無視されていることであり、気にしても仕方がない。
ちなみになろうにおいてはそれを避けるために、高位の貴族家に養子に入ってから結婚させるという様式もまたよく見られる。
また、聖女あるいは勇者は出自が平民であっても王族との婚姻が認められるような世界観が大半である。
まとめ
ざっくりと浮かんだものを列挙していったが、別に何を史実から採用し、なにをなろう的設定から採用するかは作者の自由である。もちろんオリジナルで設定や用語を作るのも素晴らしいことだ。
ただ、既存の用語を使用しつつそれとは異なる設定を入れていくと読者がわかりづらくなるし、基本的なところを間違えていると読者から指摘を受けるところでもある。
簡単に言えば男爵が凄く偉かったりすると読者も困るということである。
冒頭にも書いたが、ここに記したのはどれも簡易的な説明であり、史実を掘り下げたものではないことに留意されたい。
貴族絡みで何か他に説明して欲しい内容などあれば、その旨伝えてもらえれば追記するかもしれない。
では良き創作を。