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Queen of Calamity  作者: 〇ス〇ス〇
3/8

力関係

「そ・れ・で?」

「なに、私が如何に凄かったかという武勇伝をだな」

「へぇ~、それが最後の言葉で良いのね?」

「ははは、冗談きついぞ小娘よ。あぁ、そう言えば一昨日からあの日だっ――」


シュッ


ぐにっと、嫌な音を立てながら握られた。一瞬の出来事だった。

くそっ、小娘とは思えん握力だ。利き手は逆だったはずなのにどうして。

くそっ、この前より力が……というかもう息が……意識が、消える。ヤバい。

それに反応したかのように、若干握りが甘くなる。



「どこが武勇伝なのよ!ただの悪事じゃない!……もう、一緒に謝ってあげるから最初はそっちに行こう?ね?」

「過ぎた事でいちいち目くじらを立てるな。まったく、そんな事では将来嫁の貰い手が――」


バンッ


一直線に振り下ろされた右の手のひらがテーブルを鳴らす。

体スレスレに下されたそれは、衝撃の余波で微風を起こした。

これは言い過ぎたか。マズイ。


「悪かった」


咄嗟に首を少しだけ下げ、謝罪を述べる。

謝罪を受け取ったのか、少女はゆっくりと右手を下げる。

ふむ、チョロいな。


「な・に・が悪かったのか分かる?」


許されてないのか!?くっ、油断させておいて不意打ちとは、やるな小娘。

だが、貴様の望む答えなど把握しておるわ。


「叩いたのは少々やりすぎだっ――」

「他には?」


連続攻撃とは卑怯だぞ。くそっ、何か無いか?


「……気絶させ――」

「もっとあるでしょう?」

「食い気味で来るな!いや、ちょっと待て!そもそも、追いかけてきたあいつらが悪いのに何故私が責められねばなら――」


ゴスッ


瞬間、テーブルが鳴り揺れる。今度は手のひらではない。固く握りしめた右の拳がテーブルに打ち下ろされる。足元からはその振動が伝わり、全身を駆け巡る。間違いない、これは死ぬ。


「黙りなさい」

「……はい」


また小娘の説教か。解せぬ。

だが命は惜しい。ここは話を聞いて少しでも溜飲を下げておこう。



あぁ、いきなりの事でキミらには分からんだろうから、色々と説明してやろう。



私はバルトリーという。

それが氏なのか名なのか分からないが、バルトリーだ。

本当は立派な氏名があったと思うのだが、今はそれしか分からんのだ。我慢してくれ。


ある日、私はとある丘の上で気が付いた。何の前触れもなく、唐突に。

少々哲学的な感じになるが、これは気を失っていたというわけではない。

私が私であるという事に気が付いたということだ。

どうやってここに来たのか、今までどうしていたのか……

思い出そうといくら頭を捻っても、まるで誰かに封印されたかの様に以前の記憶が甦る事は無かった。


記憶を呼び戻せないとなると、現状の確認が急務になる。

まず第一に必要なのは、私がどういう存在であるかの確認だ。

私という存在に気は付いたが、私が何であるかまでは分からなかったからな。

ちなみに、その辺に張ってあった水たまりで確認したのだが、まぁ、あれだ。私はリスだ。

少なくとも、そう形容するしかない外見だった。

ここで自問自答しても時間の無駄なので、自身をリスと定義し話を進める。


次に、ここがどこであるのかを確認した。

それなりの時間を費やし見て回ったのだが、たくさんの植物が生えていたぐらいしか分からなかった。

そこに何かがあったような気はしたのだが、それが何だったのかまでは思い出せず、悶々としたのを覚えている。


そうこうしている内に、自身にはそれなりに知識がある事が判明する。

ただ、知識自体はあるのだが、肝心の記憶が無いせいか、色々とギャップを感じていた。

視点の低さだったり、物の大きさだったり、食す物だったり……

とにかく、上手く説明できず歯痒いのだが、身の回りの物ほぼ全てに違和感を覚えたのだ。

それに、持っている知識に偏りがあるんのか知らんが、現状認識の為、無理やり自身に言い聞かせている事もある。


例えば、リスという動物の知識はある。だからこそ自身をリスと定義しているのだが、私の知っているリス像と実際の私では少々異なる。

本来リスは尻尾が一本なのだが、私にはどういうわけか二本ある。勿論飾りではなく本物だ。二本とも私の意思で自由に動かせるし、痛覚もある。踏むなよ?痛いからな。


それと、リスは人語を話せないが、私は人語を解し話せる。三ヶ国語ぐらい話せる。

キミらより博識だ。これが才能の差というやつだな。

記憶は封印されても、余りある才能までは封印しきれなかったというわけか。

まぁ、封印されたかどうかなど調べる術は無いのだがな。

ただな、人語は分かるのに、肝心の同族と意思疎通できなくて落ち込んだこともあった。

あれは辛かった。泣き腫らして目が真っ赤になったな。


後はそうだな、これはこの時よりもっと後になって分かった事なのだが、私には特殊な能力がある。

条件は付くしプライドが削れるのであまり使いたくないのだが、幻を見せる事ができ……いや、変な声が出せ……いやグロテクスな物を……細かい説明は難しいな。

簡単に言えば、見た目と声質を変える事ができる能力といったところか。

これが今伝えられる私の全てだ。



そして、問題はここからだ。

今私の前で偉そうに説教を噛ますこの小娘。この小娘との出会いが不運の始まりだった。



簡潔に言うと、私は先週この娘に拉致されたのだ。つまりこの小娘は誘拐犯だ。



誘拐されるまでの経緯はこうだ。

人間に追われる日々を送っていた私は、偶然小娘の住む村に迷い込んだ。

そこで、小娘が持つペンダントを見てしまったのだ。

直感的に、このペンダントは無くてはならない物だと感じたのだ。これが天啓というやつなのだろうな。

天啓を受けた私は、それに従い機会を窺った。

三日ほどかけて小娘を監視したのだが、こいつは就寝時以外ペンダントを離さんのだ。

貴重な睡眠時間を削り、小娘が寝た隙を付いて、ひっそりと、穏便に、事を済ませるつもりだった。

だがな、ペンダントがな、重かったのだ。

背負いきれずウッカリ落としてしまい、それからはいつもの逃走劇だ。


最初は良かった。少なくとも変身するまでは終始私がリードを取っていたのだ。

いつものように華麗に躱し、頃合いを見て真の実力を発揮する。

それで終わるはずだったのだが、どういう理屈かは知らんが、この娘には変身能力が効かなかった。

声も姿も、まるで最初からそこには無かったかの様な反応をされてな。

それなりに生きてきた私だが、こんな事は初めてで、思わず動きを止めてしまった。


だが、それも一瞬。押して駄目なら引くしかあるまい。

焦りはあった。動揺もした。多少慢心もあった。

だが、逃げにかけては今までの実績がある。こんな年端もいかぬ小娘相手に、後れを取るなど考えもしなかった。


それがどうだ?現実はこの有様だ。非情にも程がある。

今にして思えば、あれを神速というのだろうな……

自分の体とほぼ同じ大きさの手がな、こう一瞬の内に目の前に来るのだ。

それだけではないぞ?握られるのだ、それもかなり強めに。包まれるなんて生易しい物じゃない、あれは潰されるに等しい。

とんだ怪力娘だ。本当に人間かどうか疑わしい。いや、本当は魑魅魍魎の類ではないのか?

まぁ、小言が増えるので本人には伏せるが、この娘は化け物だ、きっと。

キミらには理解できないだろう?勢いよく迫る大きな手、掴まれたと同時に握られるあの圧迫感。

機会があれば是非この恐怖を体験してみてほしい。


その後も散々だったな。やれ言い訳するな、謝れ、反省しろだの、とにかく喧しくて敵わん。

それだけに留まらず、私が非力であるのを良い事に、暴力で言動を封じてくるのだ。

オマケに、あの無表情女が作った檻に閉じ込められるし最悪だ。

あぁ、無表情女というのは隣家の上の娘の事だ。まぁ、今はどうでも良いか。

頻りに籠と言い張っていたが、どう見ても檻だろ、これ。鍵までついてるし……

まるで私が罪人のようではないか!傍若無人な態度に腹が立つ。忌々しい。



「ねぇ、聞いてるの?」

「はいはい聞いてる聞いてる」

「バルトリー?」

「だってしょうがないじゃないか!記憶が無い中、私だって生きるのに必死なんだ!生きるためなんだ、少しぐらい目を瞑ってくれても罰は当たらんだろう?」

「だからって人の物を盗んで良いわけないでしょ?いけないことなんだから反省しないとダメよ」

「だって――」

「だってじゃありません!……記憶探しと並行してお詫びもしに行かないとね」

「いや、本当に付いてくるのか?……心の底から勘弁願いた――」

「ペンダント」

「……はい」

「いけないことをしたらまずはそれを認めなきゃ!それから反省して、謝って、償う。そこまでしないとダメよ。それに記憶だって取り戻さなきゃだし、一人で行動するより二人の方が何かと良いでしょ?そのための勉強会じゃなかったの?」

「それはそうだが……」

「それに、バルトリーにはペンダントが必要なんでしょ?だったら私が付いてなきゃダメじゃない」

「いや、ペンダントだけあれば――」

「持っていけないでしょ?」

「……確かに、いないと都合が悪いな……仕方ない、分かった」

「じゃあ続きをやりましょ?よろしくね、バルトリー」

「よし、ローザ、次は野盗への対処方法だ」



上手く丸め込まれてしまった感は否めないが、精々こいつを利用してやるとするか。


目を通していただき、ありがとうございます。

どちらかと言えば、良い評価よりも辛辣で率直な感想を貰える方が望ましいです。

より良い物ができればと考えています。

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