第8羽「好きでしょ?」
「──っていう感じだったんだよな。昨日は」
花の水替えをしながら、うさ原さんは昨日の出来事を話していました。
すると、カウンターでフラワーアレンジメントを作っていたうさ村さんが顔を上げます。
「完全にうさ原のこと好きでしょ」
「そうかなぁ……?」
うさ原さんは自信なさげな表情を見せました。
それを勇気づけるように、うさ村さんが力強く頷きます。
「絶対そうだって。昨日そのまま告白すればよかったのに」
「いやー、何かいざ言おうってなったら変に緊張しちゃって……」
頭を掻いて苦笑いを浮かべる友を見て、うさ村さんは小さくため息をつきました。
ふと、カウンターの端に置いている花瓶に挿したラグラスに目が止まります。うさ原さんが丘の上で摘んできた花。あの時はヨレヨレでしたが、今はとても生き生きとしています。
それを見たうさ村さんは、微かに笑みを浮かべました。
するとドアベルが鳴り、誰かがやって来ことを知らせてきました。うさ村さんはドアの方を向きます。
「いらっしゃい」
「こんにちは!」
明るい笑顔のうさ月さんが店内に入ってきました。
これに驚いたようで、うさ原さんが少し慌てています。
「あ、うさ月さん! 昨日はありがとう……!」
「こちらこそありがとうございました。楽しかったです!」
どこか緊張気味なうさ原さんに対し、うさ月さんはにこやかに応えました。
2羽は昨日のことで会話を弾ませています。
すると、あることを知りたいうさ村さんは手早くアレンジメントをラッピングし、うさ原さんに声をかけます。
「うさ原、これをうさ川さんのところに届けてきて。そろそろ配達の時間だから」
「え、うん。分かった」
うさ原さんはラッピングされたアレンジメントを手にし、配達へ出かけました。
店内にはうさ村さんとうさ月さんしかいません。
「……うさ月さん」
「はい」
「うさ原のこと、好きでしょ?」
「えっ……」
静かに問いかけると、うさ月さんは驚くと同時に顔を赤らめました。そして小さく頷きます。
「……知っていたんですか?」
「見ていれば何となくね。うさ原に告白しないの?」
すると、うさ月さんはゆっくりと首を横に振りました。
「しないです。うさ原さんには好きな子がほかにいると思うので」
「……何でそう思うの?」
「ワタシとほかの女の子との態度が違うし、昨日『好きな子はいますか?』って聞いても答えてもらえなかったし」
「……そうなんだ」
「でも、前よりはうさ原さんと仲良くなれたのですごく嬉しいんです! だから、片想いのままでいいんです」
うさ月さんは微笑みました。
その表情を見ながら、うさ村さんは「何でこうもお互いの気持ちに気付かないのかな……」と心の中で漏らしました。
それから少しして、配達に行っていたうさ原さんが戻ってきました。それと入れ違うように、花をいくつか購入したうさ月さんが店を後にしました。
うさ村さんは、水替えの作業を再開するうさ原さんに視線を送ります。
「うさ原」
「なにー?」
名前を呼ぶと、楽しそうな顔がこちらを向きました。
「今日、うさ月さんに告白しよう」