第6羽「ピクニック」
青い空が広がり、ゆるやかな風が吹く穏やかな日。うさ原さんはうさ月さんと一緒に広い草原にやってきました。
木陰に座り、景色を眺めます。
「今日は晴れて良かったですね!」
「そ、そうだね……」
にこやかなうさ月さんの隣にいるうさ原さんは、いつも通り緊張気味です。少しでもそれを和らげようと、静かに深呼吸を繰り返します。
(落ち着け……落ち着くんだ……)
「そろそろお昼にしましょうか!」
「う、うん……!」
やわらかい声に思わず驚いてしまったうさ原さんは、自分を笑いたくなりました。
それを振り払うようにうさ月さんを見ます。うさ月さんは持参した木製のバスケットのフタを開け、そこから大きな弁当箱を取り出しました。
「これ、朝早く起きて作ったんです」
開けられた弁当箱の中には、色とりどりの果物と野菜がありました。
その中でうさ原さんは苦手なものを見つけ、顔を青くさせます。
(ニンジンだ……ニンジンが入ってる……)
うさ原さんの目は絶望に満ちていました。奈落の底に落とされた気分です。しかし、うさ月さんは何ひとつ悪くないと言い聞かせます。
改めて見るとニンジンは、大根の葉とセロリと少量のパセリを挟んでいるサンドイッチでした。
「あ、これワタシの自信作なんです! 美味しいんですよ!」
うさ原さんがサンドイッチを凝視していることに気付いたうさ月さんが、明るい笑顔で言いました。
「うちの畑で獲れた野菜なんです」と付け足されると、余計に食べなくてはという思いに駆られます。
「そうなんだ……」
うさ原さんは震える手でサンドイッチをひとつ取ります。ニンジンの匂いが鼻を支配し、体が拒否反応を起こしますがぐっと堪えます。
「い……いただきます……」
サンドイッチをひとくち齧ると、全身の毛が逆立ちました。それでも2、3回咀嚼し、飲み込みます。
「どうですか?」
「美味しい、です……!」
うさ原さんは、自分を見つめてくるうさ月さんに精一杯の笑顔を見せました。
正直なところ、ニンジンのせいでちゃんとした味は分かっていません。しかし、微かに感じる美味しさと唯一の救いである大好物のパセリを頼りにそう伝えました。
「よかったです! まだまだあるので、たくさん食べてください!」
嬉しそうなうさ月さんは、サンドイッチが入った弁当箱を差し出してきました。
一面オレンジ色のそれを目の前にしたうさ原さんは、引きつった笑顔で頷きます。
なんとかサンドイッチを完食し、デザートのパイナップルを食べているうさ原さんは幸せそうな表情を浮かべます。
(パイナップルをこんなに美味しく感じるなんて初めてだなぁ)
その顔を、うさ月さんが微笑みながら見ています。
「パイナップルお好きなんですね」
「えっ、ああうん。好き」
「よかった」
うさ月さんは大きな目を細めて笑いました。
それは、うさ原さんにとって衝撃でした。
初めて間近で見る表情がうさ原さんの胸をキュンとさせ、想いを溢れさせます。
「うさ月さんっ、オレ──」