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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
98/102

ああ、なんて素晴らしき世界

 屍と化した少年を両手で抱えるタクスス。

 冷たくなった体は臓器が抜けた分軽くなっており、腕力がそれほどない彼女でも軽々持てるほどである。

 彼女は、背後に迫って来ていた軍人達の後方にいる、シャガの母親へと目を向ける。

 我が子の遺体を見つけられた彼女は、一瞬渋い顔をするも、己の悪行を隠すため表情を取り繕う。

 それを見たタクススは全てを察する。

 あの母親が、自分の子を殺したのだと。

 呆然とし唇を噛む彼女は、ほどなくして大量の弾丸を全身に浴びる。

 寝入るようにぬかるんだ地面に力尽きていくタクスス。

 彼女の脳裏には走馬灯のように今までの旅の記憶が蘇っていた。

 そこで味わった苦痛も全て。


(……ここに来るまで色んな人に会って来た。軍人のような良い人も居たけど……それ以上に悪い人達も多かったなぁ……転売する商人、罪をなすりつける老人、科学を悪用する子供、人の弱みにつけこんで洗脳する教祖、己の快楽の為に人を殺す殺人鬼、狂信的な花屋……そして……我が子を殺す親。私の両親と同じように……ここまで世界は残酷なんだね。ここまで人って……邪悪になれるんだね……分かったよ。もう分かったからさ。私も人を殺しているし……まともな死に方なんてしなくていいからさ……こんな世界……全部、全部、全部……!!)


「……ぶっこ、わし、てや……る」


「アア、カワイソウニ……タダ、ヨクケッシンシテクレマシタネ」


ー--------------------------------

 

 深い闇の中。

 タクススは死ぬと必ずこの場所へ招かれる。

 ここが何処なのかは分からない。

 精神世界なのか、はたまた別の世界なのか……

 ただ一つ、この世界には黒いモヤのかかった人のような物体が存在する。

 タクススに敵対するわけでもなく、哀れみの言葉を投げかけるソレは、心なしかいつもより雰囲気が軟らかい気がした。

 

「……」


「アア、カワイソウニ……マタシンデシマッタノデスネ」


「……あの」


「ハイ?」


「……決心してくれたって……どういう意味ですか」


「……」


「……答えてください」


「ワタシ、コノクウカン二ハ、ナガイコトイルノデス。ソノアイダ、ズットマッテマシタ。ココロノソコカラ、セカイヲニクムヒトヲ……グライス・シオンモイイトコロマデハイッタノデスガ……カノジョ、モウアキラメチャッタンデスヨネ……」


「……どういう意味ですか。それに……グライス・シオンって誰ですか?」


「……」


「……また、だんまりですか」


「……タクスス、ドウカオネガイシマス。ワタシノムネンヲハラスタメニモ……ワタシガオカシテシマッタツミヲオワラセルタメニモ……キョウリョクシテクダサイ」


「……」


「ワタシガ、シゴニチカラヲヤドシタコトバ。ソレヲアナタ二タクシマス。ソノ……タクスス」


「……何ですか」


「セカイヲホロボシテクダサイ」


 勝手に招かれて好き勝手に話されて……

 今度は世界を滅ぼして欲しいと懇願されたタクスス。

 この世界が光に包まれていく中、彼女は目の前の人物の顔を凝視していた。

 何処かで見た顔。

 そう、モンテラに祀られていたあの石造の顔だ。

 タクススはぼそりと、()()()()()()の名を呟く。


「……何でそんなお願いをするんですか……答えて下さいよ……()()()()()()()


ー-----------------------------------


 再び生を与えられたタクススを、冷たい雨が祝福する。

 弾丸によって貫かれた肌からは、とめどなく血が流れ出しており、どれだけ生命力のある人間でも命を失っているほどだ。

 軍人達は、遺体を火葬するべく近くに寄って来る。

 タクススが死んでも生き返ることを知っている彼ら。

 だが実際にそれを目の当たりにすると、動揺してしまうのは彼らがまともな人間だからだろう。

 息を吹き返し、立ち上げるタクスス。

 生きていることが奇跡と言えるほどの重傷を負っている彼女に、再び数多の銃口が向けられる。

 数の力によって押さえつけれらていた1人の少女。

 死の言葉を使えても、多勢に無勢では太刀打ちできない。

 ……それもさっきまでの話。

 彼女は周囲のゴミ山に目を向ける。

 ゴミに混じって廃棄されている人間の死体に向けて、アスピラシオンから託された()()()()()を呟いた。

 今までタクススを生き返らせてきた言葉。

 その言葉は――――


「……『甦れ』」

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