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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
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本気の戦い

 彼の姿を目にした時、タクスス達は反射的に民家の外壁から背を離す。

 途端に内部からはじけ飛ぶ、コンクリートブロックの数々。

 1個1個に火薬が詰めれれているのかと疑うほどの爆発が、清らかな水が流れ落ちる重苦しい空へと、煤色の煙を上らせる。


「よぉ~追いついたぜぇ~……俺の言いたい事は分るよなぁ……ローズちゃんっ!!」


「プロテア!! 貴様、迂闊に爆撃するなっ!! アイツは私が殺るんだよっ!!」


「あぁ? ……カタバミちゃん、コイツ今どういう状況?」


「えっとっ!! 多分……頭に血が上っていますね。それもかなり!! ……痛いっ!?」


「無駄話はするなっ!! ……ローズ!! 貴様、随分基地で暴れてくれたな!! よほど苦しんで死にたいらしいなっ!?」


 プロテアに遅れて合流したアヤメとカタバミ。

 激情の限り叫び続ける風の支配者へ目をやるローズは、地面に倒れている仲間を起こすと、倒壊した住家の影に全員の身を潜め、短く指示を出していく。


「3人とも、ここは私に任せて逃げてください……おやおや、自分で言うのもアレですが、今のセリフカッコいいですねぇ」


「……ローズさん、こんな時にふざけてます?」


「いえいえ、逃げてくれってのは真面目に言っていますよ。固まって動いていると、集中砲火を食らいそうで怖いんですよねぇ。軍人の集団を散らしてくれると助かりますよ」


「散らすって……テメェ1人でアイツらに勝てんのかよ? すげぇ~強そうだぞ」


「はいはい、問題ないですよ。今回はマリガンの時と違って、思いっきり小賢しい手を使うので。そうですねぇ……カガチは狙撃手達を相手にしてくれます? コチラとしてはかなり戦いやすくなるので」


「アタシ1人で狙撃手達をねぇ~……」


「出来ないですか?」


「……はっ!! 上等だよ、全員撃ち殺してやんよっ!!」


「お願いしますね。タクススは無理せず相手の数を減らしていって下さい。アムネシアは……タクススの弾除けになりなさい」


「……分かりました」


「分かってたまるかよぉ!! なんで僕だけ犠牲になるのが前提なんだよぉ!?」


「ではでは40分後、船の前に集合で」


 汗のように滴れ落ちる雨を浴び続ける彼女達は、それぞれ小さく頷くと、役割を果たすためローズを1人残してプロテア達から離れていく。

 腰の収納ケースから使い込まれた愛用のナイフを取り出す彼女。

 これも随分古くなったなと感傷にふけるローズは、物陰からわざと姿を現し、反対側の物陰まで駆け抜けていく。


「……住民の避難は終わってたよな?」


「あぁ!! アナベル中将からはそう聞いているっ!! この区域にはもう居ないそうだっ!!」


「街の修繕費は軍が払うんだよな? 俺今日は思いっきりやる予定だけど、後でグチグチ文句を言わね~よな? 流石に」


「普段物を壊しまくっている私が居るんだ、問題ないだろっ!!」


「……はっ!! 嫌な自身だな……んじゃ遠慮なく!!」


 ローズが進む先に建ち並ぶ住居の数々。

 今日この日をもって、それらは従来の役割を終え、道端に転がる石ころと同等のものとなる。

 プロテアが引き起こした、空襲のような無差別爆撃によって……


ー-------------------------------


「はっ……はっ……はっ……!!」


 とうとう本気で殺しに来たと肌で感じる衝撃。

 プロテアの爆破攻撃から逃れていくローズ。

 彼女の足は、数十分前に訪れた船着き場近くの倉庫へと向かっていた。

 大量の商品を保管する構造上、倉庫は広大な面積を有しており、かくれんぼをするのならうってつけの場所である。

 だが今みたいに、手当たり次第に爆撃していく人間が相手だと、隠れている場所ごと更地にされて成す術もなく殺されてしまう。

 そんなことは十分理解している彼女。

 周囲に置かれている、大中小様々なサイズの木箱に貼られているラベルを、忙しなく見ていくローズ。

 タクスス達と探索していた時の記憶を頼りに、お目当ての商品を探していく。


「塩、コショウ、干し肉、果実……おやおや? アレは何処でしたかな? ……っ!! ぷはっ!! 海水!?」


 手元の作業に集中していたため、上空を漂っていた巨大な海水の塊に気が付くのが遅れてしまった。

 滝行のような大量の水がローズに降り注ぐ。

 間髪入れず、かつての同僚の声が聞こえてきた。


「『凍てつけ』っ!!」


 液体は瞬時に個体へと姿を変える。

 歪な氷像の中へと四肢を捕らわれたローズ。

 天然の拘束具を熱で溶かし、すぐさま反撃に移ろうとした。

 その時彼女の左目が最後に映し出した光景。

 姿の見えない何者かが、ズボンの裾が濡れるのを顧みず、水たまりで溢れ返る地面の上を走ってきている……気がした。

 これが気のせいだったら、無傷で済んだだろう。

 ローズが動きを止めた僅かな時間。

 それを彼は見逃さなかった。

 己の姿を透過させ、世界と同化していたテッセンは、右手に握りしめていた鋭利なナイフをローズの左目に突き刺す。

 彼女は世界の半分を失うことになった。


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