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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
89/102

欲望の入り江・ブリダン

 大粒の雨が山路を泥濘ませる中、車両を震わせ前へと進む。

 軍人達の一斉射撃により出来た穴から、車内へ雨水が流れ込み、タクスス達の衣服に滲み込んでいく。


「……冷たい」


「あの軍人ども、天井をバカスカ撃ちやがって……つーか何で貫通してんだよ!? 軍用車両だろコレ!?」


「物質の硬度を変えてしまう言葉、使用者はカンナさんです。彼女にかかれば、こんな鉄板は意味がありませんよ。それとどうでした? 弾丸が追尾してくる感想は」


「……ずり~ぞ流石に。アレが言ってた必中狙撃か?」


「はいはい。ザクロ中佐と言うイケおじが使用しますのでお気をつけて」


「やってらんね~……普通に狙撃の腕もあるしよぉ……タイヤパンクさせたのもそいつら2人だろ、どうせ」


「でしょうねぇ……」


 煙草を取り出しながら先っぽに火を点けようとするローズ。

 だが湿ったそれに熱が灯ることは無く、口に咥えたまま手持ち無沙汰になっていた。


「アムネシア、ブリダンまではあとどれくらいで到着しますか?」


「ううん……? 2時間くらい? パンクしたタイヤのせいで、予定よりも進みずらいんだよぉ!!」


「マジかよ……どっかで追手を撒いた方が良いんじゃねぇか? 軍人どもに追いつかれるぞ」


「いえいえ、多分大丈夫ですよ。勘ですが」


「勘かよ……タクスス、どうすんだ? このまま進むか、何処かで待機して軍人どもを先に行かせるか」


「ではでは、タクススどうします?」


「タクスス、早く決めるんだよぉ!!」


「……私がですか? ……そうですね」


 3人の視線を一点に浴びるタクスス。

 このまま進むか一旦何処かに身を隠すか。

 2択を迫られた彼女の脳裏に、マリガンで別れたシャガの顔がちらついている。


「……先に進みましょう。シャガ君が待っているかもしれないので」


ー---------------------------------


 街の活気はそのまま風景に現れる。

 雨が降り続いているにも関わらず、街には傘をさした住人で溢れ返っており、騒ぎ声が静まる気配がない。

 郊外で車を降りたタクスス達は、軍用車両をローズの言葉で灼ききった後、天然のシャワーを浴びながら都心へとやって来た。

 カガチが待ち合わせ場所に指定した、船着き場へと歩を進める彼女達。

 都心とは打って変わって物静かなその場所には、木製の梱包容器に包まれた商品が奇麗に並べられており、雨に打たれながら出荷の時を待っている。

 近くには小型のボートがいくつも停泊しており、異様な存在感を放つ貨物船には、輸出用の荷物が次々と運び込まれている。


「……カガチさん、ここですか?」


「そうなんだが……ん~……いねぇぞ、シャガの野郎」


「……まだ着いていないんですかね」


「それはないんだよぉ!! 多分……」


「多分ねぇ……これはこれは参りましたね、どうしましょうか」


「……ちょっと探しましょうか」


 1人先行してこの街に向かっていたシャガと合流するため、雨中の港を探し回るタクスス達4人。

 だが、一向に手がかりが掴めないまま、いたずらに時間だけが過ぎていく。

 分厚い雲に覆われた空からは、依然として大量の粒が落ちてくる。

 倉庫の雨除けに入り、探索の結果を報告し合う4人。

 収穫は、貨物船の出航時刻や輸入品についての情報ぐらいで、シャガに関する目ぼしい情報は1つも得ることが出来なかった。


「……ダメですね」


「はいはい。まったく……何処に行ったのでしょうねぇ」


「悪るいなテメェら……もうちょい分かりやすい場所にすれば良かった」


「まったくだよぉ!! カガチったら頭が回らない……いただだだっ!! 胸が千切れるんだよぉ!!」


「んでよ、どうする? シャガの野郎と会わずにそのまま出発するか?」


「……それは……」


「船の出発時刻はおよそ1時間後。その間に軍隊が追い付く可能性もありますねぇ……これはこれは悩ましい状況ですよ」


「……ローズさんならどう判断しますか?」


「はいはい、そうですねぇ……私なら一旦隠れ場を探しますねぇ。それを見つけたうえで探査に移りますよ」


「アタシも同じだな。あの軍人どもに見つかるのは御免だぜ」


「あ、じゃあ僕も……」


「……分かりました。何処か……安全な場所を探しに行きましょうか」


「……タクスス、不安に思う気持ちも分かります。ですが、シャガはそう簡単に捕まるような子じゃないですよ」


「……そう……ですよね」


 鉛色の空と同じ気持ちになるタクスス。

 仲間の励ましを受け、一旦シャガの事を後回しにする彼女。

 だがこの世界は、タクススの胸中になど一切配慮しない。

 嫌でも彼の事を思い出してしまう話し声を聞いてしまう。

 港を離れ街のメインストリートへとやって来た4人。

 安地を探す彼女達の目に、シャガのことを話す2人の夫婦が、すぐそばを横切っていくのが映りこむ。

 その瞬間、シャガとの会話を思い出すタクスス。

 この街には母親が住んでいると、彼は前に話していた。

 目の前の人物がその母親かもしれない。

 眼鏡を掛け、茶髪の癖毛が目立つ女性。

 頬が痩せこけている彼女と、横にいる全身入れ墨だらけの男性は、シャガの名前をタクススが咄嗟に口にすると、途端に目の色が変わりコチラに視線を移す。

 歩みを止めタクスス達に正対する2人の夫婦。

 彼女達の挙動不審な動きを不思議には思いつつも、呼び名が分からないタクススは、母親の名前を聞いてみることにした。

 

「……えっと、少しお話があるのですが……お名前は……?」


「え? ……レクト・プワゾンだけど……」

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