おはよう女神
拘束が解かれたローズ。
いつものように軽口を叩くだろうと身構えていたタクスス達だったが、今の彼女はぼんやりと見つめるだけで、口を開こうとしない。
ザクロたちが部屋を出てからすぐに、元の姿へと戻っていた3人は、顔を見合わせながら不思議に思っている。
「……あれ? ローズさん? お~い」
「……」
(私の人生、まあ色々ありましたけどねぇ……こうやってアナタに出会えただけで、なんやかんやプラスになっちゃいましたよ。世界に喧嘩を売れる力を持っていますし。……凄く可愛いですし。アナタ、本当は女神の生まれ変わりなのでは? アナタみたいな人間を待ち望んでいたかいがありましたよ)
「……ローズさ……んっ!? んんんん!?」
「んちゅ……レロ」
「……っ!! 舌……もうっ!! こんな時にふざけないで下さいっ!!」
「ぐはぁ……」
動く素振りを見せなかったローズの両手が、タクススの両頬を掴むと、手繰り寄せるようにして舌を彼女の口の中へと入れていくローズ。
いつものようにセクハラを受けたタクススは、両手でローズを押しやると、惚気ている彼女の頬を勢いよく平手打ちする。
「……あのっ!! 本当に、今はそれどころじゃないんですけどっ!!」
「ふっふっふ……」
「うわぁ!? いつにも増してローズがキモいんだよぉ!!」
「アタシも同じ意見だよ。つーか!? さっさと逃げねーと、見つかるぞテメェら!!」
「おやおや、おまけの2人もいたのですか。顔面血塗れで大変そうですねぇ」
「テメェ……アタシらが来なかったら死んでたんだぞっ!? 感謝の言葉はねぇ~のかよっ!?」
「どもども~」
「くぅ……!! 来なきゃ良かった……!!」
バナンでシャガと別れ、一直線に軍人達の基地へと馬で向かって来たアムネシアとカガチ。
舗装されていない道なき道を突っ走って来たため、皮膚の至る所が切り傷まみれである。
「……あの、ところでシャガ君はどうしているんですか?」
「あぁ? ああ、シャガの野郎は先にブリダンに行って、隠れ家を探して貰ってる。ここから逃げても、身を隠す場所がなけりゃ~また捕まっちまうだろ?」
「……そうですか」
「おぉい!! さっさと行くんだよぉ!! 軍の車が止まってる場所まで、全速全身だよぉ!!」
「おやおや、場所が分かるのですか?」
「見くびるんじゃないよぉ!! 門番に見つかった後に、記憶を弄り回してバッチリ情報はゲットしているんだよぉ!!」
「そうですかそうですか。では早速向かいますかねぇ」
「おうよ!! けどよぉ~……外は軍人ばっかだぜ? どうすんだよ。アタシは今、狙撃銃がねぇぞ」
「私とタクススで殺しまくるので、問題はないですよ」
「本当かぁ~?」
「……あの、私にちょっと考えがあるのですが……」
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前代未聞の事態が、軍の拠点で起こっている。
まさか少人数で乗り込んで来たとは考えもしない軍人達。
彼らが現在相手にしているのは、アムネシアとカガチによって出檻され、基地内を縦横無尽に暴れ回る囚人達である。
姿を軍人やタクススなどに変化させられており、誰が味方か誰が敵か分からない状態となっている。
拳銃と言葉で応戦するカタバミとテッセン。
相手は言葉の力が使えないものの、物量が尋常ではなく、気を許せばたちまち反撃を受けるような苦境に立たされている。
「ぐぅ……!! カタバミ!! プロテア大佐達はまだかっ!?」
「もうちょっと……!! 直ぐ来るはずですよっ!!」
「くっそ……タクススの様子を見に来たらこれだよ……!! あの姿を変える女狙撃手が、ここに紛れ込んでるのか!? ……やっば」
「『凍てつけ』!!」
「すまん、助かった!!」
「どういたしまして!! ……これ、どう収集をつけるんですかっ!?」
「それは……」
「軍服を着ていない奴らを狙っていくぞ。テッセンちゃんにカタバミちゃん」
「プロテア大佐!!」
「わり~遅くなった」
「あの、これ……」
「大体予測がつくよ。檻の中のタクススちゃんの姿が消えている時点でね。逃した奴らが乗り込んで来たのか……もしかして俺ら舐められてる?」
「貴様の日頃の行いのせいだろ」
「アヤメ少将っ!!」
「カタバミ!! あのアホ共を速攻で鎮圧させるぞっ!!」
「了解ですっ!!」
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続々とプロテア達の元へ援軍が集う中、タクスス達は騒ぎに乗じて、軍の護送車が止められている車庫へと移動していく。
途中軍人達とすれ違うこともあったが、彼らは狼狽えるだけで何もすることが出来ずにいた。
タクスス達は、アムネシアを軍人の格好に化けさせ、それを人質にして突き進んでいたからだ。
拾った拳銃をこめかみの部分に当てているローズ。
処刑室で着ていた軍服のままのアムネシアは、事情を知らない人間からしたら、今にも命を奪われそうな軍人にしか見えずにいた。
「おい止まれローズ!! 人質を離すんだっ!!」




