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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
85/102

染み込む穢れ

「すみませんすみません!! もう少し待って頂けないでしょうか……


「ねえ、今回で何回目だと思ってるの? 支払い日はとっくに過ぎてるけど


「そ、それは……


「……お宅とは、いい商売が出来てたんだけどね。残念だよ


「あ……ちょっと、待って下さい!! くっそ……


「あ、あの……店長……相談があるんですけど……これ


「ん? 何だ……辞表……?


「家の急用でちょっと働けなくなったって言うか……これからはちょっと厳しいって言うか……すみません!!


「あ……ちょっと!!


「ふ~……危ない危ない……こんないつ潰れるか分からない店で、いつまでも働けるかってんだよ……次探そっと


「……くぅ……!! 何とかしないと……


ー----------------------------------


「お父さん……飲み過ぎだよ……お酒


「……あ"ぁ"!? ……いいから持ってこいっ!!


「で、でも……


「お前な……誰のお陰で飯が食えてると思ってんだっ!?


「……っ!! わ、分かったよ


「くっそ……こんなはずじゃなかったんだよ……なんでなんだよ……くそくそくそっ!!


「……大丈夫、今だけだから……今だけ……


ー----------------------------------


「お帰りお父さん。ご飯できてるよ


「……ああ、そこに置いておいてくれ


「……え、冷めちゃうよ? 良いの……?


「良いって言ってんだろ? 何度も言わせんなよ


「ご、ごめん……


「はぁ……母さんが生きてればな……


「……え?


「何で母さんは、あんなに早く死んだんだろうな


「……


ー------------------------------


「お父さん、今日は……仕事良いの?


「あー……休みだから問題ない……


「そ、そう……煙草の吸殻、捨ててくるね


「ああ……ついでに買い出しに行って来てくれ


「うん、分かった


「……母さんに似てきたな


「え?


「……何でもない


「ゴミ、捨ててくるね……あっ……吸いかけの煙草…………っ!! げほっげほっ!! 何これ……不味い……こんなのを吸ってるの? お父さん……


ー------------------------------------


「買い出しから戻ったよ……アレ? お父さんがいない……!? あっ……お父さ……ぐぅぅ!? んー!!


「母さん、母さん……母さんっ!!


「ぐぅぅ!? 服を……んんんんっ!!


「はぁ……はぁ……温かいよぉ!! 母さん!! 母さんっ!!


「んんんんんっ!! 痛っ!! 出さなっ!! うぅう"う"う"!! ……んっ!!


「痛っ!? この……


「『灼けろ』っ!!


「!? うわぁぁ!!


「……はぁ……はぁ……中、出され、た……う"っ!! お"え"っ……ごっ!! ごぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!! ……嘘……つき。守るって、言ってたのに……約束したのに!! 口だけの嘘つきっ!!


ー-----------------------------ー


 煙を吐き、ぼんやりと遠くを眺めながら歩くクズ。

 先ほど覗いた彼女の記憶を、苦い顔をしながら脳裏に浮かべ、自分専用の仕事場へと足を進めていく。


(……俺っちはその場にいたわけじゃないシ、あくまで記憶の断片を覗いているだけに過ぎないサ。だから、彼女の気持ちまでは正直分からない。世界を恨む気持ちも、全てを壊したいと言う八つ当たりの気持ちもネ。けどネ~……)


 途中すれ違う部下達に軽い挨拶を交わす彼。

 仕事場に置いてある使い込まれたソファーに背中を預けると、灰皿に煙草を押し付け、灰の中の空気を出し切るように吐いていく。


「……やっぱサ、それで戦争を起こしますってのは、ちょっと違うんじゃないかナ?」


「クズさんっ!!」


「おわっ!? 急に何サ!? ノックしてヨ、驚かさないでヨ!!」


「逃げました」


「ん?」


「檻の中にいた、死の言葉を使う女が脱走しましたっ!!」


「……やばくネ?」


ー-----------------------------------


「カンナ君、テッセン君とカタバミ君の連絡聞いたね」


「Yes、現場に向かいましょう」


「うん、そうしよう。じゃあ3人とも、ローズの処刑を頼むよ!! 僕達は向こうに加勢するから!!」


「……了解しました」


「了解だよぉ!!」


「了解だっ!!」


「よし……早速なんだけどカンナ君……ん?」


「what? どうしましたか? 早く向かわないんですか?」


「……何か引っかかるような……気のせいか? ……気のせいかな」


 ローズを処刑室へと連れて来たザクロとカンナ。

 無線で連絡を受けた2人は、1秒でも早く到着するように、他の事は一旦置いて走り出す。

 処刑室の中で、棒立ちさせられたままのローズ。

 後は処刑台に頭を入れられ、首が斬られるのを待つばかりである。


(……ここまでですか。いやいや、何ともあっけない幕切れですねぇ……不完全燃焼ですよ。しかし……なんでしょうね……やたら煩いですが……んん?)


 耳の中に侵入する音。

 先ほどから続いているこれは、本当に処刑担当の軍人なのか首を傾げたくなる。


「やっばいよぉ!! もう見つかってるんだよぉ!!」


「テメェの細工がイマイチだからだろっ!? ぶん殴るぞっ!!」


「ぎゃぁぁぁぁ!?」


「……あの、もう拘束を解いちゃいますね」


 軍人の手とは思えないか細く繊細な指が、ローズの自由を奪っていた拘束を1個1個解いていく。

 黒一色だった景色に光の雫が落ち、目の前の人物を鮮明に映し出した。


「……大丈夫ですか? ローズさん」

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