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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
83/102

兵士は何を思う

 無機質でガラリとした空間の中、ローズを取り囲むようにして立ち並ぶ軍人達。

 今回の任務で捕獲に動いたプロテア、テッセンを筆頭に、アナベル、アヤメ、カタバミ、ザクロ、カンナといった面々が、狭い密室に集まり、クズが記憶を探るのを見守っている。


「アナベル中将、ちょっと時間かかるけど良いかナ? ……30分くらいかかりそうダ」


「ほう、お前にしては随分時間がかかるな」


「そうだネ。今パッと見た感じ、言って良いことと悪い事の精査に、時間がかかりそうな感じなんだよネ」


「あぁ? 精査ってどういうことだよ」


「ふっふっふ……デリカシーのないプロテアには分からないかもだけどネ。人の記憶を覗くなんて、普通はやっちゃいけないことなんだヨ。プライバシーに関わるからネ。だから慎重に吟味する必要があるのサ。今回みたいな身内の場合は特にネ。そんなことをしない奴は、相当頭がイカレてるヨ」


 苦言を受けたプロテアは歯軋りをしている。

 後で覚えてろよと目で訴えかける彼を他所に、淡々と自分の仕事を進めていくクズ。

 丁度時計の針が半周した時、記憶の海に潜っていた彼は、息継ぎをするために外の世界へと顔を出した。


「お待たセ!! んじゃ早速、収穫してきた記憶を順に伝えていくヨ!! まずネ……ゴルウェーに派遣された時なんだけど、部下の3人……ローズが殺しちゃってるヨ」


「あぁ!? 3人って……ソテツちゃん達の事か!?」


「そうだネ」


「……続けてくれ、クズ」


「了解だヨ、アナベル中将!! 何故か部下達を灼き殺したローズ。理由はそこで出会った少女が、死の言葉を使えるからってのが、犯行の動機みたいだネ。火傷の銀髪美女……俺っちは結構好みだネ」


「……あ、あの……その女性って、ローズ少佐と一緒にいた、タクススって方ですか……?」


「そうだヨ、カタバミ。あの子だネ」


「そんな……」


「俺も実際に、マリガンで交戦している際に、タクススが死の言葉を使って、仲間を殺しているのを目撃しました。クズ少将の言っていることは正しいです」


「おっ!! テッセンの援護射撃が来たネ!! そんでサ……タクススにローズは協力をお願いしたんだよネ。ここから大事だから、ちゃんと聞いてネ!! ……どうやらローズは、対岸国のエレーケスと戦争がしたいみたい。まあそんな感ジ」


「……は? 戦争? おいクズ!! ローズちゃんは何でそんなことを!?」


「あ~……動機が知りたいんだネ? ……ちょっと今は言えないナ」


「何でだよ」


「う~ん……同情してもらいたくないからかナ……アナベル中将、ローズは始末するんですよネ?」


「……仲間を手にかけている時点でそうするつもりだ。マリガンで仲間と交戦したと聞いた時点で、決めてはいたよ。今の話を聞いて、決意はより強固になったがな。お前ら、この裏切り者を処刑室に連れていけ!! すぐさま始末するんだ!!」


「ぐぅ……マジかよ……」


「庇おうとしてたんだよネ、プロテア? ローズの記憶の中で見たヨ。けどこれは流石に厳しいヨ」


「うぅ……アヤメ少将!!」


「無理だ、諦めろ。クズは嘘を言わない……だろ?」


「俺っちの事をよく分かってるネ!! 流石同期って奴だヨ!!」


「ふんっ」


「ん~じゃあ、僕とカンナ君が連れて行こうか。カンナ君、いいね?」


「Yes、了解しました」


「んじゃ、そういうことで……クズ君、後でしっかり説明してね~」


「了解ですヨ、ザクロ中佐!!」


「お前ら、しっかり頼むぞ」


 口数少なくその場を後にするアナベル。

 かつての仲間がこれからいなくなることに、心を痛める者もいれば、仕事だと割り切って連行する者など、三者三様の反応である。

 

「あの……プロテア大佐、これからどうしますか?」


「あー……これからね……仕事部屋に戻るわ。書類仕事が残ってるしな……気が乗らねーけど」


「そうですか。あの、俺、タクススの所へ行ってきます」


「あぁ? ……何しに?」


「一応、ローズのことついて伝えておこうかと。タモアラで助けられたので」


「真面目だねぇ……多分だが、タクススちゃんも死刑だぜ? 今は檻の中だけどよ……死の言葉を使う人間の殺し方、覚えてる?」


「……えっと」


「焼殺」


「ああ……確か、あの言葉の使い手って、生き返るんでしたっけ。蘇りを防ぐために、肉体を完全に灰にする。座学以来なので忘れてました。まあ……何と言うか……やることはやっておこうかと」


「……分かったよ。場所は分かってんな? そんじゃ」


「あ、あの!! 私も行きます!!」


「カタバミもか?」


「私も一応、アスロンで色々あったので!! その……話しておこうかと」


「何か……よそよそしいな」


「むぅ……!! そういう所ですよ!! この老害!!」


「んな!?」


「元気だねぇ……そんじゃテッセンちゃんに、カタバミちゃん。気をつけてな」


「はい」


「了解です!!」


「……はぁ」


「おい貴様、このくらいで落ち込むな」


「んだよアヤメ。そういうお前は、もう少し病んでもいいんじゃねぇか?」


「ふんっ!! いつ死ぬか分からん職場だ。仲間が死んだくらいで取り乱したりはせん」


「おー……強い強い」


「お~う2人とモ!! 喧嘩かイ? 仲いいネ!!」


「煩せぇよ」


「クズ、貴様後で殴られたいのか?」


「ゴメンだヨ。んじゃ、俺っちはもう一仕事あるから、じゃ~ネ~」


「おう。んじゃ」


「サボるなよ、コイツみたいに」


 最後まで室内に残っていたプロテア、アヤメ、クズの3人も、この場を後にしそれぞれの仕事場へと戻って行く。

 人気がなくなった尋問室。

 その静かさは、嵐の前の静けさのように見えた。

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