永遠の別れ
気が付けば太陽が、空の頂点を過ぎていた。
滴る汗が光に反射して輝く中、目指していたバナンへと到着したシャガ達3人。
時折痙攣する両足を前へと動かし、人気のない街中を進む。
周囲には運搬用の馬車や車が存在しており、どうやらここは出荷拠点の役割を持つようだ。
今は国の至る所に商品を運んでいるためか、人が出払っている。
「……ここがバナン……軍人はいないよね!?」
「しぃ~!! 声がデカいんだよぉ!!」
「それはテメェもだよっ!! ……どっかに隠れんぞ!!」
逃げている最中に晒しを胸に巻きなおし、短パンを履いたカガチ。
素肌を羽織ったポンチョで隠す彼女は、周囲を警戒しながら馬小屋の中へと移動していく。
彼女の後を追うシャガとアムネシア。
小屋の中では、駄獣達が寝息を立てており、薄暗い室内は姿を隠すのにうってつけである。
「ここでいいかな……テメェら無駄に騒ぐなよ」
「わかったんだよぉ!! ぐぎゃぁぁ……」
「……テメェ、次騒いだら顔面いくからな?」
いつものように元気の良い返事をするアムネシアの腹部へ、狙撃銃の銃床を勢いよく押し付けるカガチ。
唾液と共に大量の血を吐くアムネシアは、床に敷き詰められた寝藁へと突っ伏していく。
「ったく……じゃあ、気を取り直してだ……これから作戦を伝える。聞き逃したらぶっ殺すからな」
「うん」
「りょ、了解だよぉ~……」
「まずは……シャガ。テメェはブリダンに行け、1人でだ」
「……えぇ? どういうこと……」
「そう慌てんなって!。テメェ確かブリダンに母親が居るんだよな? 昨日寝る前に言ってたもんな?」
「まあ……ね。結構昔の事だから、今も居るかは分からないけど……」
「まあ、こっちとしては居ても居なくても、どっちでも良いんだがよ……取り合えずだ。テメェは先に港街に行って、隠れ家を探してくれ。身を隠せるなら何処でも良い」
「まあ良いけど……何で俺1人で行くの? カガチさんとアムネシアさんは?」
「アタシらは今から軍の本拠地に乗り込む」
「え?」
「……えぇ!? 軍の本拠地に乗り込むっ!? それに僕もっ!? ぐぎゃぁぁぁぁ!!」
「だから騒ぐなっつったよなぁ!? はぁ……あの2人を取り返しに行くのに、テメェの言葉が無いと始まんねぇ~だろが。テメェが記憶を探りながら、アタシが姿を化かす……潜入するのに、これ以上の適役はいねぇだろ!!」
「それでも軍の本拠地に乗り込むなんて、頭がイカレてるんだよぉ!!」
「テメェには言われたくねぇな……つーかアタシはよ、コルスの野郎をぶっ殺す為ならなんだってするって決めてんだよ。今更軍人どもにビビッてられるかって話だ!! シャガ、この方針で良いな?」
「俺は大丈夫だけど……2人は平気なの?」
「ああ、多分な。もし何日経ってもブリダンに来なかったら、軍に捕まったと思ってくれ。そん時は……母親と目立たないように過ごすんだぞ?」
「分かった」
「分かるんじゃないんだよぉシャガ!! 僕もそっちに行きたいんだよぉ!!」
「テメェはこっちだ!! ……そうだな、ここの馬を2頭拝借するかね……アムネシア!! テメェ馬には乗れるよな!?」
「うわぁぁぁぁ!! もう行く流れになってんだよぉ!!」
駄々をこねるチーム最年長を引きずっていくカガチ。
シャガとはブリダンで落合う場所の候補をいくつか話し合うと、時間がないと言わんばかりに、軍が拠点を構える場所へと向かっていく。
後ろ姿が見えなくなるまでその場で眺めていたシャガ。
彼も自分の役割を果たすため、休息も取らないまま、最終目的地へと向かうのであった。
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カガチ達と同じように、拝借した馬にまたがり、荒野を駆け抜けるシャガ。
夜の帳を搔き分けていくと、潮の香りが辺りから漂って来た。
温かな光が増えるに連れてそれも強くなり、周囲の建物にも変化が現れる。
木で出来た民家は減り、代わりにレンガで出来た民家が増えていく。
腐朽するのを防ぐためだろうか。
明らかに他の街とは異なった建築物が、港町に来たことをより一層強く実感させる。
「……ここがブリダン……そろそろ徒歩に切り替えた方が良さそう」
本格的に街の中へ進む前に、目立たないように移動するため、運搬用の馬から飛び降りるシャガ。
盗んで来たこの馬をどう処分するか少々悩んだが、いい案が思い浮かばず、茂みの中へと逃がしていく。
闇夜の空気を肺へと流し込む彼。
旅の執着地点へと辿り着くと、全身に達成感が溢れ出ると思っていたのだが、状況が状況なだけに気が緩むことはない。
先ずは母親の居場所を探そう。
人混みで溢れている繁華街へと進み、周囲の人間に聞き込みを始めるシャガ。
そんな彼に思いもしなかった人物が声を掛けてきた。
カガチが復讐を誓う男は、ワイン瓶を片手にフラフラと近寄って来た。
「おや~? シャガではありませんかっ!!」




