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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
80/102

永遠の別れ

 気が付けば太陽が、空の頂点を過ぎていた。

 滴る汗が光に反射して輝く中、目指していたバナンへと到着したシャガ達3人。

 時折痙攣する両足を前へと動かし、人気のない街中を進む。

 周囲には運搬用の馬車や車が存在しており、どうやらここは出荷拠点の役割を持つようだ。

 今は国の至る所に商品を運んでいるためか、人が出払っている。


「……ここがバナン……軍人はいないよね!?」


「しぃ~!! 声がデカいんだよぉ!!」


「それはテメェもだよっ!! ……どっかに隠れんぞ!!」


 逃げている最中に晒しを胸に巻きなおし、短パンを履いたカガチ。

 素肌を羽織ったポンチョで隠す彼女は、周囲を警戒しながら馬小屋の中へと移動していく。

 彼女の後を追うシャガとアムネシア。

 小屋の中では、駄獣達が寝息を立てており、薄暗い室内は姿を隠すのにうってつけである。


「ここでいいかな……テメェら無駄に騒ぐなよ」


「わかったんだよぉ!! ぐぎゃぁぁ……」


「……テメェ、次騒いだら顔面いくからな?」


 いつものように元気の良い返事をするアムネシアの腹部へ、狙撃銃の銃床を勢いよく押し付けるカガチ。

 唾液と共に大量の血を吐くアムネシアは、床に敷き詰められた寝藁へと突っ伏していく。


「ったく……じゃあ、気を取り直してだ……これから作戦を伝える。聞き逃したらぶっ殺すからな」


「うん」


「りょ、了解だよぉ~……」


「まずは……シャガ。テメェはブリダンに行け、1人でだ」


「……えぇ? どういうこと……」


「そう慌てんなって!。テメェ確かブリダンに母親が居るんだよな? 昨日寝る前に言ってたもんな?」


「まあ……ね。結構昔の事だから、今も居るかは分からないけど……」


「まあ、こっちとしては居ても居なくても、どっちでも良いんだがよ……取り合えずだ。テメェは先に港街に行って、隠れ家を探してくれ。身を隠せるなら何処でも良い」


「まあ良いけど……何で俺1人で行くの? カガチさんとアムネシアさんは?」


「アタシらは今から軍の本拠地に乗り込む」


「え?」


「……えぇ!? 軍の本拠地に乗り込むっ!? それに僕もっ!? ぐぎゃぁぁぁぁ!!」


「だから騒ぐなっつったよなぁ!? はぁ……あの2人を取り返しに行くのに、テメェの言葉が無いと始まんねぇ~だろが。テメェが記憶を探りながら、アタシが姿を化かす……潜入するのに、これ以上の適役はいねぇだろ!!」


「それでも軍の本拠地に乗り込むなんて、頭がイカレてるんだよぉ!!」


「テメェには言われたくねぇな……つーかアタシはよ、コルスの野郎をぶっ殺す為ならなんだってするって決めてんだよ。今更軍人どもにビビッてられるかって話だ!! シャガ、この方針で良いな?」


「俺は大丈夫だけど……2人は平気なの?」


「ああ、多分な。もし何日経ってもブリダンに来なかったら、軍に捕まったと思ってくれ。そん時は……母親と目立たないように過ごすんだぞ?」


「分かった」


「分かるんじゃないんだよぉシャガ!! 僕もそっちに行きたいんだよぉ!!」


「テメェはこっちだ!! ……そうだな、ここの馬を2頭拝借するかね……アムネシア!! テメェ馬には乗れるよな!?」


「うわぁぁぁぁ!! もう行く流れになってんだよぉ!!」


 駄々をこねるチーム最年長を引きずっていくカガチ。

 シャガとはブリダンで落合う場所の候補をいくつか話し合うと、時間がないと言わんばかりに、軍が拠点を構える場所へと向かっていく。

 後ろ姿が見えなくなるまでその場で眺めていたシャガ。

 彼も自分の役割を果たすため、休息も取らないまま、最終目的地へと向かうのであった。


ー-----------------------------------


 カガチ達と同じように、拝借した馬にまたがり、荒野を駆け抜けるシャガ。

 夜の帳を搔き分けていくと、潮の香りが辺りから漂って来た。

 温かな光が増えるに連れてそれも強くなり、周囲の建物にも変化が現れる。

 木で出来た民家は減り、代わりにレンガで出来た民家が増えていく。

 腐朽するのを防ぐためだろうか。

 明らかに他の街とは異なった建築物が、港町に来たことをより一層強く実感させる。


「……ここがブリダン……そろそろ徒歩に切り替えた方が良さそう」


 本格的に街の中へ進む前に、目立たないように移動するため、運搬用の馬から飛び降りるシャガ。

 盗んで来たこの馬をどう処分するか少々悩んだが、いい案が思い浮かばず、茂みの中へと逃がしていく。

 闇夜の空気を肺へと流し込む彼。

 旅の執着地点へと辿り着くと、全身に達成感が溢れ出ると思っていたのだが、状況が状況なだけに気が緩むことはない。

 先ずは母親の居場所を探そう。

 人混みで溢れている繁華街へと進み、周囲の人間に聞き込みを始めるシャガ。

 そんな彼に思いもしなかった人物が声を掛けてきた。

 カガチが復讐を誓う男は、ワイン瓶を片手にフラフラと近寄って来た。


「おや~? シャガではありませんかっ!!」

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