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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
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散り散り

 軍人達の包囲網により崖っぷちまで追いつめられていたタクスス達3人。

 ローズと別れた後、近づいて来た雑兵達へ死の言葉を使い、数人の命を奪っていたタクスス。

 姿を透過させていたテッセンは、彼女の背後から音もなく近づくと、右腕全体をタクススのか細い首に巻き付け、一気に締め上げていった。

 力任せに絞められた彼女の顔は、熟成した果実の様に赤らみ、抵抗していた両腕から力が抜けていく。


「タクススお姉さん!!」


「動くなお前らっ!!」


「げぇぇ!? 銃はちょっと勘弁なんだよぉ!!」


「まさかお前らとこうして戦うことになるとはな……それに……タクスス、この女は死の言葉を使えるのか……何でお前らはそれを黙っていたんだ!? 危険な言葉なんだぞっ!! 問答無用で生物を殺せる言葉ってぐらい、知っているよな!?」


「そ、それは……」


「じ、事情があるんだよぉ~……」


「……あまり良い事情には見えないけどな。お前ら!! そこの2人も拘束するんだ!!」


 銃を突き付けたまま近づいて来る軍人達。

 何か言葉を発そうものなら、躊躇いもなく引き金を引く準備が出来ている。


「シャガ~……2秒稼ぐんだよぉ……僕が記憶を弄る時間を稼ぐんだよぉ……」


「一か所にまとまってるならまだしも……四方八方に散らばってるから無理だよ……」


「うげぇ~!! 年貢の納め時って奴だよぉ!!」


 一か八か特攻して逃げる以外に、打つ手が思い浮かばないシャガとアムネシア。

 何か頼りになるものはないかと目だけで周囲を見渡すが、コチラに近づいてくる鹿以外に、特に目ぼしい物は無い。


「……アムネシアさん」


「なんだよぉ!! 僕は頭がいっぱいいっぱいなんだよぉ!!」


「鹿ってこんなに近くに寄って来るっけ……?」


「基本的には警戒心が強くて、直ぐに逃げ出すんだよぉ!! ってそんな場合じゃ……」


 アムネシアの言及も最もだ。

 だが、誰もが一瞬目を奪われた光景。

 この場に相応しくない生物が、真っ直ぐコチラへと向かって来る。

 そしてそれは、()()()()でこう呟いた。


「テメェら『化けろ』っ!!」


 聞いたことのある声音に荒っぽい口調。

 鹿の姿をした生物は瞬く間に、衣を纏わない元の女性の姿へと変えていく。

 同時に化けの皮が剥がれたカガチは、周囲の軍人達の姿をアムネシアとシャガの姿へと変貌させる。


「オラっ!! さっさと逃げるぞテメェら!!」


「えっ? えっ!? ってか……裸っ!?」


「あぁ!? アタシの裸を見て照れてんのかっ!?」


「うわぁぁぁぁ!? 痴女が現れたんだよぉ!! ぎゃぁぁぁぁ!!」


「うるせぇ!! 早く逃げるぞっつってんだよっ!! ぐぅ!?」


 姿を強制的に変えられた軍人達が戸惑いを見せる中、視界に入る彼らを可能な限りシャガが止めると、気絶するタクススを置いて一目散に逃げ出す3人。

 一言で膠着状態を打破し、シャガとアムネシアを救出したカガチ。

 そんな彼女の剥き出しの皮膚を、2つの銃弾が食い破っていく。

 左肩と右脇腹にそれぞれ被弾する彼女。

 張りのある肌が、血でみるみると赤く染まっていく。


「Hit、それはそれとして……誰ですかアレ」


「さぁ? ……テッセン君と似たような言葉を使うのかな。姿を変える言葉ねぇ……あっ、カガチ君!!」


「……っ!!」


 高台から援護を行っていたザクロとカンナ。

 淡々と仕事を行っていた彼らは、コチラの居場所がバレていないと油断していたのだろう。

 茂みの中に隠していた銃を回収し、銃口を向けてきたカガチ。

 その意図に気が付くのが一瞬遅れてしまう。

 咄嗟に身をよじるも、引き金を引く右手を撃ち抜かれたカンナ。

 スコープの向こう側では、舌を出すカガチが挑発するように笑っている。

 

「……やられたね。大丈夫かい? カンナ君」


「Yes、ただ……暫く撃てそうにないです」


「……僕もだね。ここからじゃ姿が見えなくなっちゃったよ。言葉を使っておけば良かったかな?」


 狙撃銃のスコープから目を離し、目の前の広大な森林を眺めるザクロ。

 大自然の中に姿が溶け込んだ彼女達の姿を無理して探すよりは、いつでも援護が出来るように、テッセンとプロテア達を見ていた方が良いだろうと判断した彼。

 地上のことは地上の人間に任せ、あくまで狙撃手は舞台の裏方に回るのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「『刻め』!! ……僕達を助けるんだよぉ~仲間達!!」


 カガチが遠くで陣取る狙撃手2人に反撃している中、アムネシアは道を阻む残りの軍人達の記憶を改竄していた。

 自分たちは同じ釜の飯を分け合った軍人仲間で、気が狂った他の同志達に殺されかけている。

 そんな無茶苦茶な記憶を植え付けた彼女を庇うため、偽りの記憶に従い、彼女達を庇い始める軍人達。

 透過し潜伏していたテッセンは、隙を見計らって、身柄の確保のため突っ込んでいくが、正気ではない仲間達に体を掴まれ阻まれていく。


「はっ……はぁ……!! 何とかなりそうだけど……タクススお姉さんとローズさんはどうするの!?」


「アイツらは置いていく!!」


「えぇ!?」


「勘違いすんな、今はだ今は!! あとは狙撃に注意しとけよ!! 向こうの狙撃手中々手強いぞ!!」


「ぜぇ……ぜぇ……おぇぇ!! ……カガチぃ~!! ど、どっかで止血しないと、血の跡を辿って、来られるん、だよぉ!!」


「あぁ……誰か治療できる奴!!」


「はぁ~い!!」


「よりによってテメェかよ!!」


「タクススお姉さん……」


「シャガだっけか? 安心しとけ。後でアタシらがどうにかするからよ!!」


「どうにかって……どうする気?」


「……考え中だ。とにかく今は距離を取るぞ!!」


 拘束されていく仲間達を、苦渋の選択で置き去りにしていくシャガ達3人。

 軍人達の脅威から逃れた彼らは、次の街であるバナンを目指すのであった。

 

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