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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
76/102

華の裏には罪がある

 木々が無造作に生い茂る獣を道を、慌ただしく進んで行く一同。

 一刻も早くこの街から離れたい彼女達は、自然と口数が少なくなる。

 互いの呼吸だけが聞こえる中、開放的な空間が姿を現す。

 不自然な程に整備された岩々が取り囲むその中で、一息つくタクスス達。

 先頭で案内するフィオーレによれば、もうすぐ郊外へと辿り着くそうだ。


「はぁ~……皆さん、付いて来てますか~?」


「……はい、大丈夫です」


「良かったです~この辺には殺人鬼が居るとか居ないとかで大変なんですよね~逸れたら危ないんですよ~」


「……昨日、カガチさんが言っていたことですね」


「んだよタクスス、アタシの言う事を信じてなかったのか?」


「……いや、殺人事件なんてどの場所でも起きているので」


「はっ!! ここの殺人は一味違うぜ? 死体から植物が生えてんだよ」


「……植物?」


「はい~ツルみたいな植物がうねうねと生えていて、とっても気味が悪いんです~」


「お陰で街じゃ、その噂で持ちきりなんだよ」


 呆れたようにため息を吐くカガチ。

 うんざりするほど耳にしていたことが、彼女の態度でなんとなく感じ取れる。

 

「おやおや、そのツルとはコレですか?」


「そうそう、そんな感じで赤くて……なんでこんな場所にあるんだ!?」


 辺りをキョロキョロとしていたローズが偶然発見した物。

 それは大木の根っこに生えているような、丈夫でしなやかな自然の紐。

 唯一の違和感を感じる部分以外は、普通の細長いツルである。


「……ツルってこんな真っ赤でしたっけ」


「さあさあ? こんな種類の物もあるのではないですか」


「どうだったか……フィオーレ、どうなんだ?」


「さ、さあ……ワタクシ、植物ならなんでも知っているわけではないんですけど」


「だよなぁ~……ん? 誰だっ!!」


 微かに聞こえて来た雑草を踏みしめる足音。

 いち早く気が付いたカガチとローズは、互いに狙撃銃とナイフを構えて臨戦態勢を取っている。


「はっ……はっ……!! 逃げなくちゃ……っ!? 誰だっ!!」


「あぁ? テメェは……」


「カガチ、アナタが昨日撃ち抜いた男ではないですかねぇ」


 タクスス達の元へ突如姿を現した男性。

 てっきり軍人が近づいて来たのだと警戒した彼女達は、張り詰めた糸が次第に緩んでいく。


「あ……お前ら……ひぃ!?」


「おやおや、カガチ。アナタのせいでトラウマになっているではありませんか」


「あぁ? うるせぇな……」


「人殺し……」


「あ"ぁ"!? そこまで言う必要ねぇだろ!! そりゃ~街中でぶっ放したけどよぉ……」


「違う違う違うっ!! お前だよお前っ!!」


 凍えているかのように身を震わせる彼は、姿を隠す悪魔を恐る恐る指差す。

 カガチでもない。

 ローズでもない。

 男から人差し指で刺された女性は、上ずった声を上げる。


「ワタクシですか~? どういう意味で……」


「惚けるなよっ!! お前……そんななりしてんのも、相手を油断させるためかっ!?」


「……? フィオーレ、アタシに今の状況を説明してくんね~か?」


「説明と言われましても~……」


「ぐぅ……!! ならよ、証拠を見せてやるよっ!! 『砕けろ』!!」


 パニックになっているが、嘘を吐いているようにも見えない。

 そんな彼が突きつけた証拠は、フィオーレに対する疑心を深めていくものになる。

 周囲に存在した岩々を砕く彼。

 影に隠れていた数々の人の死体が、化石のように掘り起こされていく。

 そしてそれらには、見覚えのある花々が、体の表面から咲いていた。


「……赤い花」


「おやおや、昨日店で見た花と似ていますねぇ」


「どうだっ!? そいつはな、人を殺してその血液で植物を育ててたんだよっ!! 昨晩のことだ。俺達2人は、仕返しするためにそいつの秘密を探ってたんだよ。後で脅すためにな!? そしたらここで、その女がコソコソしてんのを見たんだよっ!! 帰ったのを確認して、何をしてたのか見てみたら、この死体の山が有ったって訳だっ!!」


「いや~あの~……」


「今朝そのことについて問いただすために、店に乗り込んだら……相棒がそいつに返り討ちに遭って……途中で軍人達が来たから、その女は逃げ出して……!!」


「はぁ~……『咲け』」


「……っ!! うあぁ!? がぁあぁっ!?」


 肩を落とし憂鬱に言葉を発するフィオーレ。

 彼女の言葉の影響を受ける目の前の彼は、体の至る部位から、肉を蝕むように植物が生えて来る。

 腕、腹、太もも、眼球……

 体中のあらゆる水分を吸いつくされた男性は、ミイラのように干からびて動かなくなってしまう。


「……おい、フィオーレ。テメェ今までアタシを騙してたのか?」


「だって~仕方がないじゃないですか、こうなるって分かり切ってましたし~」


「ねえちょっとさ……これ不味いんじゃない? ローズさん」


「シャガ、狼狽えるのではありません。冷静に対処しますよ」


「直ぐに倒さないと軍人に追いつかれるんだよぉ!!」


「あら~要らない心配はしなくて良いんですよ~? 知ってしまったからには、ここで口封じをしますので~」


「……アタシらを倒しても、軍人に捕まんじゃねぇ~か? テメェ」


「どうでしょ~?」


「……はっ!! 大した自信だな。分かった分かった……んじゃ~取り合えずだ、フィオーレ……とっととくたばりやがれっ!!」

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