2人の援軍
「大変です~!! カガチさん~!!」
夜に別れを告げ、朝日が差し混んできた頃。
山小屋の中で一夜を明かし、寝息を立てるタクスス達へと舞い込んできた1つの凶報。
昨日ローズが遭遇したフィオーレと言う女性が、乱暴にドアを開けると、顔色が悪いまま話しかけてきた。
「カガチさん~!! なんか街に軍人が沢山いるんですけど~!?」
「……あぁ? こんな朝っぱらから……ふぁー……フィオーレ、もうちょい詳しく頼む」
「ワタクシ、今日もせっせとお花の品種改良に勤しんでたんです~……そ、そしたらあっちから、こっちから軍人さんが湧いて出て~!! 気が動転して……はわわわ……」
「……おいローズ!! なんや街がヤベーみたいだぞ!?」
「……………」
「おいっ!? いつまで寝てんだよヤニカス!! つーかテメェらもいい加減起きやがれっ!!」
強引に掛け布団を引っぺがしていくカガチ。
寝起きの悪いタクスス達は、面倒くさそうに体を起こしていく。
「……おはよう、ございます」
「おやおや……朝から騒がしいですねぇ」
「テメェん所の軍人達が街に来てるっつってんだよっ!! さっさと起きろやっ!!」
「そうなんです~!! 確か……ザクロとカガチって名前でした~」
「うわっ……本当に来たのですか……はぁ~面倒くさいことになりましたよ……ふて寝しますね、私」
「おまっ!? いい加減にしろやぁ!!」
いつまでも睡魔に囚われる彼女達へ、何度も訴えかけたカガチの途方もない努力により、やっとのことで、タクスス達の体のあらゆる細胞が活動を始めていく。
息を切らすカガチを他所に、身支度を済ませるとすぐさま出発の準備に取り掛かる4人。
親切心を発揮するフィオーレもそれに加わり、ちょっとした引っ越し作業になっている。
「フィオーレ!! アタシ、ちょっくら留守にするからさ、この小屋の管理任せていいか?」
「えぇ~!? カガチさん、何処かに行っちゃうんですか~!?」
「ああ、ちょっとな」
「うぅ~寂しくなりますよ~……花屋の常連客が居なくなっちゃいます~……」
「そういうなって。アタシ以外にも買う奴いるだろ? 赤い花ばっかしかねーけど」
「おやおや、そう言えば……フィオーレの花屋は赤い花しかありませんでしたねぇ……好きなんですか? 赤色」
「はい~!! 良い色ですよね~!! 情熱的って言うか何と言うか~……好きすぎて品種改良にも精が出ちゃいますね~!!」
「フィオーレ、落ち着けって……まーアレだ。寂しくなると思うけど、元気に過ごせよ?」
「はい~!! あ、そうだ……もしよろしければ、ワタクシが途中まで案内しますよ。誰も見つけられない抜け道を教えます~」
「抜け道? そんなのあったのか」
「はい~ワタクシがいつも使っている栽培所の近くなので、ワタクシしか分からない場所にありますよ~そこを使えば、バナンまで見つからずに行けるかと~」
「マジか。おっしゃ~早速お願いするぜ!! ……ちょい待ち」
「はい、カガチさん」
「お、悪いな」
「いえいえ~右腕しかないのも大変ですしね~はい、皆さんもどうぞ~」
気を利かせたフィオーレから、各々上着を受け取っていく。
袖を通したタクスス達は、足早に次の街を目指していくのであった。
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タクスス達が小屋を出発する前。
一仕事を終えたフィオーレが、街の異変に気が付き、何かから逃げるようにカガチの小屋へと向かっている頃。
街中は、白い軍服を羽織った人々で溢れ返っていた。
観光客の団体かと首を傾げる住人達も、背中に担ぐ狙撃銃を目にすると考えを改めざるを得ない。
その中の1人、ベンチに腰を掛ける中年男性。
前髪で目が隠れている黒いぼさぼ髪の彼は、聞き込みに向かっていた部下の到着を待ちわびているようだった。
「……おっ!! カンナ君、こっちだよ!!」
「ザクロ中佐、お待たせしました」
「結構時間かかったね。それでどうだった? 何か良い情報は見つかった?」
「Yes、有力な情報を得ることが出来ました。順を追って話させて頂きます」
ザクロへと報告する彼女。
ショートカットの白髪が雲のようにフワフワと広がっており、後ろ髪は赤い布でポニーテールに纏めている女性。
眠たそうな瞼をピクリとも動かさず、サファイアのように奇麗な瞳をザクロへと向け、抑揚のない声で機械のように話していく。
「昨日、この近辺の宿屋で、ローズ少佐と思わしき人物……並びにその仲間である3人の姿が確認されています」
「……うん、なるほどね。しかしよく顧客情報を話してくれたよね。店員を脅したの?」
「No、何度も顔を出して、協力費を少し多めに支払っただけです。ザクロ中佐がよくやっているように」
「あ~……そういうのはマネしなくても良いんだけどね……まあ、情報が入ったから良いっか。それで? その後はどうしたの?」
「はい、その後暫くして、ローズ少佐が隻腕の女性を連れ込んで来た後、5人全員がチェックアウトしたそうです」
「女性を連れ込んでねぇ……まあ、彼女の女好きな性格は置いとくとして……問題は何処へ行ったかだね。カンナ君はどう考える?」
「Maybe、推測の域を出ませんが、連れ込んで来た女の根城へと向かったのではないかと考えます」
「ふ~ん、なんでそう考えたのかな?」
「プロテア大佐からの連絡が根拠です。タモアラから軍の追手を振り払って逃げ続けていた彼女達にとって、休息は不可欠。ローズ少佐は問題なくとも、連れの方々は一般人ですので。だから宿で休息を取っていたのではないでしょうか。そこからわざわざ離れるとなると……」
「新しく連れ込んだ女の根城へと向かった……ふ~む」
「その女の居場所を突き止めましょう、ザクロ中佐」
「そうだね。その前に……プロテア君達に連絡しよっか」
「why? 私達で十分なのでは……」
「新しく引き連れている女がどんな言葉を使うのか分からない以上、仲間は多い方が良いと思ってね。それに……ローズ君がこの近辺に居るのは、殆ど確定と見ていいんだろ? そうなると、プロテア君達は向こう側で、無駄な事をすることになっちゃうじゃないか」
「……この街に居なかったらどうしますか?」
「その時はその時だ。僕が責任を負うよ。それにね……僕の勘が言うには、この街に居る確率の方が高いんだよね」
「勘ですか。またギャンブルのおつもりで? 妻に叱られますよ」
「大丈夫大丈夫!! 今回は当たるよきっとね」
ベンチから立ち上がったザクロは、笑顔を絶やさず土色のマントに袖を通し、周囲の人間へと聞き込みを始めていく。
それに倣い、カンナも捜索を再開する。
組織の裏切り者を捕獲するために。




