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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
73/102

元奴隷の証言

「……ス、起き……さい」


 泥のように眠るタクススへと呼びかける声。

 意識を呼び覚まそうとするその声の主はローズのようだ。

 何を言っているのか気になるが、今はとにかく眠い。

 彼女の呼びかけを無視して、再び深い眠りにつこうとする。


「……だよ、アタシが……ろうか? ……しろって……の野郎を……」


(……ん? 誰……この乱暴な口調の人……)


 明らかに聞いたことが無い声。

 重たい瞼を無理やり動かし、世界を両目に映していく彼女は、顔を覗き込む2人の人物を目にした。

 

「おやおや、タクスス目覚めましたか」


「……あんなに煩かったら、流石に目が覚めますよ」


「これはこれは申し訳ないです。アナタと話がしたいとコイツが言いましてねぇ……」


「……?」


「コイツじゃねぇよ、カガチだ!! んだよ、このヤニカス!! さっき名前言っただろ!?」


「……私に何の用でしょう」


「テメェさ、コルスに会った事があるんだよな?」


「……コルス?」


「エドワード・コルス!! 胡散臭いスーツ姿の奴で……」


「……?」


「タクスス、アスロンの時のアレですよ」


「……あぁ」


 タクススとシャガは数日前、アスロンの街で買い物をしている際に彼と遭遇していた。

 彼女達が買い出しの様子を話していた際に、名前だけは頭の片隅に記憶していたローズ。

 カガチからの質問に対して反応してしまったことから、しつこく食い下がられて、ここまで付いてこられたようである。


「……会いましたね、確か」


「マジか!! んで、アイツは今何処に居るんだ!?」


「……何処って……私にも分からないですよ。いつの間にか居なくなっていましたし」


「んだよぉー……期待して損したんだけど!?」


「……あの、アナタ何者なんですか? あの人と何か関係……」


「大有りだ!! あのクソ野郎に売り飛ばされたからな!!」


 言葉を遮りながら大声を出すカガチ。

 その剣幕にタクススは思わずたじろいでしまう。


「……うぇ? あ、あの……」


「うぅん? 煩いんだよぉ~……何々?」


「ふぁ~あ……ん!? ねえ、この人誰!?」


「……ちっ!! あ~煩い煩い煩いっ!! 1個ずつ話してやるから黙って聞きやがれ!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 起床したシャガとアムネシアも加えて、話を始めるカガチ。

 部屋には、フィオーレからお礼として貰った真っ赤なバラが飾られており、各々が椅子やベッドの淵に腰を下ろしている。


「いいか!? エドワード・コルスは奴隷商人だ!! そんでもって、アタシはアイツに捕まって貴族に売り飛ばされそうだった!!分かるか!?」


「……ええ、まあ」


「左腕は脱走する時に切り落としたっ!! 死ぬほど痛かったっ!! 分かるか!?」


「僕、自分以外の体を切ってばっかだから、よく分かんないんだよぉ~」


「死ねっ!!」


「何でぇ!?」


「えっと……俺達が会ったあの人は、ヤバい人だったってことでいいの?」


「ヤバい超えてるぞアイツ。人を商品としか見てねぇ!! 次会ったら言語道断で射殺してやるよ!!」


 過去の事を思い出したのか、火にガソリンが注がれたように燃え上がっているカガチ。

 話を聞いたタクススとシャガは、お互いに眠そうな顔を合わせ、アスロンでの出来事を思い出している。


「……あの人、そんな事をしてたんだね」


「知らなかった……ああ、だからか!!」


「……何? シャガ君」


「ほら、ローナバリスのあのおじさん!! 地下に奴隷がいたじゃん!! あれって、コルスさんから買った奴なんじゃ……」


「……かもね」


「あのクソ野郎、アタシ以外にもアホみたいに売ってんのか……あぁ!! 思い出しただけでムカついてきたっ!!」


「も~煩いんだよぉ~!! っていうか、奴隷商人に捕まるなんて、カガチは抜けているんだよぉ」


「あぁ? しょうがねーだろ!! あのクソ野郎、変な言葉を使いやがったからよ!!」


「……変な言葉?」


「なんかこう……幻を見せるっていうか? 正気に戻った時には檻の中でよ……他の連中が歯を抜かれている時に、ギリギリ逃げ出せたんだよ」


 幻を見せるという言葉にも心当たりがあるタクススとシャガ。

 あまりに唐突な発言も、過去の出来事を照らし合わせて聞いていく、どうやら嘘ではないと判断できる。

 

「なあ、本当にあの野郎の居場所を知らないのか? 頼む、知ってる事があるなら教えてくれ!!」


「……頭を下げられても、知らないものは知らないとしか答えられないですよ」


「そっか……分かった。悪かったな、急に押しかけちまって」


 情報交換を終えた面々。

 タクスス達は話し合いからやっと解放され、時間が惜しいからと2度寝しようと決意する。

 その前に、せめてカガチの事は見送ろうと、彼女を見つめていた4人。

 だが、当の本人はその場から動こうとしない。

 何も無い空間を見つめて考え込んでいる様子である。


「……あの、どうかしましたか?」


「あのさ、すげ~急な事言っていいか」


「……はい?」


「アタシもテメェらに付いて行っていいか?」

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