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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
72/102

偶然

 無我夢中で街の中心地までやって来た4人。

 肩で深く息をしながら道路に尻を付ける3人とは対照的に、既に息が整っているローズは、しきりに辺りを気にしている。

 建物や大木の影に入っているので、そう易々とは狙撃されないだろう。

 それでも警戒心を緩めない彼女は、眠気覚ましに煙草を加える。


「……ひゅー……ひゅー……げほげほっ!! おぇ……」


「タクスス、大丈夫ですか? それに他の皆さんも」


「無理ぃ……俺、水、み、うぅ……」


「うぅ……おぇ!! おぇぇぇ……!! げぇぇぇえ!!」


「何処かで休息を取りましょうか。私は外で見張っておくので」


「……ひゅー……ローズ、さん。大丈夫……げほげほっ!!」


「皆さんよりは遥かに大丈夫ですよ。煙草の量が増えますがねぇ……」


 よろよろと立ち上がろうとするタクスス達3人。

 自力で起き上がるのも困難な彼女達に、ローズは煙草を加えながら手を貸していく。

 そんな様子が目に留まったのだろうか。

 この街の住人らしき人物が声を掛けてきた。


「あの~大丈夫ですか~? 何か飲み物でもお持ちしましょうか~?」」


「いえいえ、お気遣いなく。先を急いでいるので」


「あら~そうですか~これも何かの縁ですし~また時間がありましたら、ワタクシ、フィオーレの花屋にいらして下さいね~えぇっと……大体あの辺ですので~」


 ふらふらと歩いて来た薄緑髪の女性。

 長髪を頭部の後ろでウェーブさせ、柔らかい印象を与えるようにセットしている彼女。

 細い目をした肉付きの良いメリハリのある体は、同性からは嫉妬され、異性の視線を釘付けにしている。

 軽くお辞儀をすると、自分の店へとゆったり歩いて行くフィオーレ。

 凹凸のない体に一種のコンプレックスを抱いているローズは、先ほどから不自然に口数が減っているのであった。

 

「……げほげほっ……ローズさん、行きましょう」


「……そうですね」


「……どうしました?」


「いえいえ、大したことはないですよ。行きましょうか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 街の宿へと移動した4人。

 ここで明日を迎える気はなく、少しの休息を取った後に出発する予定である。

 着くや否やベッドへと倒れ込むローズ以外の3人。

 服に汚れが付いているにも関わらず、お構いなしといった感じである。


「これはこれは……随分とお疲れのようで。 ……ふっふふ、皆さんの寝顔は可愛いですねぇ。どれどれ」


 邪魔する者も遮る者もいない空間。

 その中で1人活動を辞めないローズ。

 タクススが寝入ったのを確認すると、未だに痣が癒えきっていないタクススの肌へと顔を埋め、彼女の匂いを堪能する。

 一瞬起きそうな気配が感じられたが、直ぐに安らかに眠る彼女。

 その間にもローズは、汗と泥が混じったタクススの匂いを味わっていく。


「あー……」


(やはり良い匂いですねぇ……これだから女の子といちゃつくのは辞められない。 ……男なんてゴミみたいなものですしねぇ……)


 このままタクススが起きるまでこうしていようか。

 マヌケにも見える格好のまま、時が過ぎるのを待とうとしていた彼女。

 その時、外が急に騒がしくなる。

 軍隊が来たのか?

 ローズはすぐさま立ち上がると、宿の外へ警戒しながら顔を出していき、騒ぎの様子を探る単独行動に移る。

 宿から店5つ分離れた場所。

 騒動の渦中は割かし近場に存在した。

 そこでは、先ほど声を掛けてきたフィオーレが、観光客と思わしき男性2人にいちゃもんを付けられている最中だった。


「こ、こまりますよ~……値下げ交渉なんて~……」


「いいじゃね~か、姉ちゃん!! こんだけ花が売っているんだぜ? ちょっとくらい安くしてくれよ!!」


「そーだよ!! つーか姉ちゃん、結構いい体してんな……今晩どう? 一夜を共にしちゃう?」


(はぁー……やれやれ、何処も彼処もこう荒れているのですねぇ……ゆっくり休ませて欲しいものですよ)


 ポケットに入れていた煙草に火を点けると、煙を周囲にまき散らしながらフィオーレの店の前まで歩いて行くローズ。

 ちょっと裏路地に連れ込んで、灰になるまで焼いてやろう。

 戦う気満々の彼女は、静かな殺意を滲ませながら歩み寄っていく。

 

「んだぁ~? てめぇ俺達に……ぐぁ!?」


「……!? これはこれは……」


 近づいて来たローズの胸ぐらを掴んできた男。

 今にも殴り合いが始まりそうな一触即発な空気が流れる中、男の右腕に弾丸が突き刺さる。

 彼がローズから手を離すと同時に、周囲に遅れて響き渡る狙撃音。

 ちょうどこの街に到着する前に聞いた、あの音と似ている。

 口の中が急速に乾いていくローズ。

 軍の人間に見つかったのかもしれない。

 僅かに抱いた焦りにより、迷いなく腰のホルダーに収納しているナイフに手を掛ける彼女だったが、フィオーレが見つけた人間は、どう見ても軍服姿ではなかった。


「……あっ!! カガチさんだ~!! お~い~!!」


「はぁ……昼間からゴミ共がギャーギャーと騒いで動いて……燃えるゴミの日は今日じゃねーぞ? あぁ?」


「ぐぅ……おい女!! お前がやったのか!! その狙撃銃で!!」


「そうだが? 分かんない? 理解力赤ちゃんかよ……」


「舐めやがって……!! 『痺れ……』」


「いただきます」


 目視でギリギリ確認できる遠方にいた女と、大声で口論する狙撃されなかった方の男。

 彼は激情に身を任せて、遠くの彼女へ言葉を使おうとする。

 言い終えるまで、時間にして僅か1秒足らず。

 その間に女は狙撃銃を構えると、正確無比な昇順で、男の肩を狙撃していく。

 撃ち抜かれた彼は、炎で焼かれたような痛みが肩から全身へと広がっていき、情けなく地面へと倒れ悶えている。


「ぐぁ!! 痛ってぇ!?」


「はっ!! どうすんだクソ野郎ども!? 今度は眉間にぶち込んでやろうか!?」


「うぅ……!!」

 

 逃げの一手を選ぶしかなくなった男たちは、一目散にこの場から去っていく。

 仕事を終えた彼女は、銃を背中に担ぎ直すと、フィオーレの元へとやって来た。


「フィオーレ……アタシが居なかったらどうする気だったんだよ……」


「ん~……? ん~……」


「おいおい……」


「まあいいじゃないですか~結果オーライですよ~」


「ったくよ……んで、テメェは何だ? アイツらの仲間か? ……いや、見覚えがあるぞ? ……あぁ!! 必死に逃げてたアイツらか!? こんな所で会うとは奇遇だなっ!! テメェらのあの顔、傑作だったぜ!!」


(この下品な女……灼き殺されたいのでしょうか? ……どうやら軍隊ではないようですが)


 眉をひそめ不快感をあらわにするローズ。

 そんな彼女を気にしないカガチと言う女は、短パンからボロボロの写真を取り出すと、ローズへと見せつけた。


「……何がしたいのでしょうか」


「テメェは街の人間じゃないだろ? そういう奴らに聞き込みしてんだよ、コイツの事をよ」


「誰ですかコイツ」


「アタシがぶち殺したい男……エドワード・コルスって言うんだよ」

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