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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
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霞む世界

 間一髪の所で駆けつけたテッセン達により、状況は一変した。

 室外の通路から差し込む青白い光のせいか。

 酷く忌々しそうに顔を歪めるバトラーは、血を流しながら両手を挙げている。


「これはこれは先ほどの……軍人でしたか」


「余計な事は喋るな。大人しく降伏しろ」


「大人しくですか……ん~……断ったらどうなります?」


「……自分で考えてみろ」


 銃口を突きつけトリガーガード内へと指を移動させるテッセン。

 腕に巻かれた時計のようなセンターには、2つの点滅する点が表示されている。

 白煙が周囲の人間の視界を奪う中、彼の目にはバトラーの姿をハッキリと捉えていた。


(熱反応が2つ。1つはタクススでもう1つがバトラー……遠くに離れていっているのがバトラーか? ……タクススを人質に使ったりはしないのか)


 拘束されている彼女を盾にでもするのかと考えていたテッセン。

 呆気なく距離を取っていくバトラーの行動に拍子抜けしている。


(何をしたいのか分からないが、こっちとしては好都合だ)


 躊躇いもなく引き金を引く彼。

 乾いた音と共に放たれた無機質な鉄の塊は、バトラーの太ももを貫いていく。

 続けざまに再度引き金を引こうとしたテッセン。

 銃弾の音が室内に響き渡るも、それは彼が発したものではなかった。


「……っ!? お前それをどこで!?」


「護身用に胡散臭い商人から。金は腐る程持っていますので!!」

 

 濃霧が立ち込める中、無造作に撃ち込まれる弾丸の数々により、室内に置かれていた机の物陰に身を隠す、テッセンとシャガ、アムネシア。

 タクススに被弾しないよう、ある程度配慮しながら発砲していたバトラーだが、視界の悪さの影響で彼女の右肩や左の脇腹に数発の弾丸が被弾する。


「……うぅあ!?」


「……っ!! 今の悲鳴いいですねぇ!! ……いけないいけない、こんな死戦の最中に。早いとこ始末して、お楽しみの再開としましょうか」


 にやけ顔のまま発砲を続けるバトラー。

 物陰に隠れるテッセン達は、身を寄せ合いつつ形勢をうかがっている。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ!? 銃撃戦なんて聞いていないんだよぉ!?」


「ちょ、ちょっとアムネシアさん!! 落ち着いてってば!!」


「……2人とも聞いてくれ。俺が注意を引く……その間にお前らはタクススを救出するんだ」


「え、俺らが?」


「マジかよぉ!! 危険なんだよぉ!!」


「2人がかりならいけるだろ。それにこっちは人質がいると戦いにくい。お前ら頼んだぞ……『吹け』!!」


 同意を得る時間すら惜しそうなテッセンは、周囲の濃霧を突風で払うと、自ら姿を晒し、バトラーの注意を引きつつタクススから離れていく。

 数々の銃音がハーモニーを奏でる中、物陰から物陰へと地面を這うように移動してきたシャガとアムネシア。

 急いでタクススの手足に巻かれている拘束具を外しにかかる。


「タクススお姉さん、大丈夫!?」


「……ちょっと、キツイ……」


「今すぐ助けるんだよぉ!! ……ちょ、これ結構固いんだよ」


「何してんのアムネシアさん!? こんな時に冗談は要らないよ!!」


「いや、ちょ…………ふ~……シャガ、代わりにやるんだよぉ」


「あぁもう!! 役立たずっ!! タクススお姉さんの代わりに撃たれれば良かったのに!!」


 切羽詰まりながらアムネシアの代わりに手を動かし続けるシャガ。

 その影響で視野が狭くなっていたのだろうか。

 アムネシアが彼の体を強くゆするまで、コチラに向けられた銃口に気が付くことはなかった。


「うぇ!?」


「これ死ぬやつなんだよぉ!!」


 心臓を握りつぶされる感覚に陥る2人。

 バトラーが今にも引き金を引こうとしたその時だ。

 一か所に集まっているシャガ達3人の体から色が抜け落ち、景色と同化していった。


「おや? これは……」


「お前の相手は俺だぞ!!」


 語尾が強まるテッセン。

 近くに置いてあった1人用の木製の椅子を掴み、バトラーへと放り投げると、拳銃を構えたままこう呟いた。


「『透けろ』!!」


 シャガ達の姿が消えたと同様に、宙を舞っていた物体はこの世から姿を消し、バトラーの元へと向かっていく。


「透過の言葉ですか……ぐぅ…!!」


「いい加減、降伏したらどうだ? 無駄な抵抗をするな」


 認識ができないため、避けるタイミングを外されたバトラー。

 地面に仰向けで倒れた彼に、今度はテッセンの銃口が向けられている。


「降伏ねぇ……はっはっは!!」


「何が可笑しい?」


「いや、そろそろコチラも言葉を使った方が良さそうだなぁと……折角のマイルームが酷いことになりそうですが」


 引き金一つで命が奪われる状況にも関わらず、バトラーの顔からは笑みが消えない。

 口の前に右手の人差し指を添える彼。

 教師が生徒に注意するかのようにこう呟いた。


「『静まれ』」


 テッセンの目が見開く。

 彼が呟いた言葉。

 それは、彼らの上官であるクロフォード・アナベルが、よく使用していた言葉と同じだったからだ。

 即座に室内に現れる異変。

 全ての音が消え去った。

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