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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
63/102

地中の楽園

 たった数分間で惨憺たる光景へと変わり果てた室内。

 女軍人達が闘技場の関係者の身柄をせっせと拘束する中、通信機で連絡を取るプロテアは、ガラス張りの部屋から闘技場の様子を眺めていた。


「アーチボルド・バトラーつってよ、アビュースの右腕で闘技場の運営を任せられている奴なんだわ。執事みたいな服装で、前髪が三日月みたいにクルンてなってる男らしい……見てないか!?」


『見てないかって……あっ!! まさかアイツ!!」


「お!? その反応……何処にいたんだ!?」


『闘技場出場者の待機場みたいな場所でチラッと……今は何処にいるか分かりませんが……』


「了解了解!! 後はこっちで聞いとくわ!! んじゃ!!」


 通話を終えたプロテアは、通信機を懐に仕舞うと、四肢を縄で縛り上げられたアビュースへと向き直る。

 右足は凍傷により真っ赤に腫れており、左足は火傷により水ぶくれが出来ている。

 顔面は瓦礫のような物体を勢いよくぶつけられたのだろう。

 異常なほどに肌が膨れ上がっている。


「……なぁ、アビュースさんよぉ。軍に行ったら舌を切られるんだぜ? すげー痛いらしいぞアレ。それなのに、今痛い思いをする必要はないんじゃねーのか?」


「うぅ……分かった降参よ……なんて言うかよ!! 『冷えろ』!!」


「うぉ!? 冷たっ!! あー……はいはいはい、分かりましたよ……カタバミちゃん!! よろしく」


「ん? 了解です!! 『凍てつけ』!!」


「……っ!? いったぁぁぁぁぁ!!」


 アビュースの反撃により顔面が若干しもやけになってしまったプロテア。

 拷問が足りないと判断した彼は、カタバミに合図を送ると、再度アビュースの右足を凍らせにかかる。

 加減抜きの彼女の言葉により、急速に凍傷が進んだ細胞はみるみる壊死していき、アビュースに壮絶な生き地獄を味わわせる。


「……どうする? このまま続けても良いんだぜ?」


「……向こう側の地下」


「あぁ?」


「この部屋の向かい側の場所から真下にいるはずよ頼むからもう許してお願い」


 早口で捲し立てるアビュース。

 涙を流し訴えかける彼を見て、嘘を吐いていないと判断したプロテアは、直ちにガラス越しにその場所を目に捉える。


「あっちね……了解了解!! よーし誰が行く?」


「ではでは、ここは私が……」


「ローズ、貴様はここにいろ。私が行く」


「あぁ~? アヤメ、お前が行くのか?」


「なんだ、悪いのか?」


「いや……」


「正直、ここの空気が悪すぎてな……早く地上の新鮮な空気が吸いたい。ローズ!! 目の前のガラスと、向こうの壁を灼け!!」


「了解了解」


 仁王立ちしたまま荒々しい口調で指示をだすアヤメ。

 それを受けたローズは、大人5人分程の穴を強引に溶かして作り出す。


「おぉ~!! 流石ローズ少佐ですね!!」


「どうもどうも」


「……んでよ、ここからどうするつもりだ?」


「どうするも何も……最短経路で飛ぶんだよ!! 『飄れ』!!」


 準備が整ったアヤメは、助走をつけて勢いよく穴から身を乗り出すと同時に、室内で発生させた爆風に背中を預ける。

 闘技場の端から端を跳躍する彼女の姿は、彗星のように一瞬で消えた。

 真下で行われている試合を観戦する観客達に目撃されることはなく、目的の場所へと悠々と辿り着いた彼女。

 プロテア達に右手で無事だと伝えると、直ぐさまバトラーの捜索に動き出した。


「うへぇー……相変わらずの脳筋戦法だな、アヤメの野郎」


「くっくっく……良いじゃないですか。私は好きですよ、ああいう血の気の多い人は」


「そうですよ、プロテア大佐!! アレこそアヤメ少将なんですから!!」


(アヤメの野郎、女には人気あるんだよなぁ……羨ましいぜ)


 冷ややかに笑うプロテア。

 向こうのことはアヤメに任せ、自分たちは確保したアビュース達を、地上で待機している部下の元へと送り届けるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 嵐の化身が捜索を始めている中、薬品が几帳面に並べられた棚を整理する男。

 プロテア達が探し回っているバトラーは、医療室のような場所で、負傷した戦士の手当てをしていた。

 部屋の広さは待機場よりもずっと広い。

 手当てするにしては不自然な空間で、薬品と腐敗臭が混じった臭いを嗅ぎながら、淡々とバトラーの処置を受ける筋骨隆々な大男がいた。

 よっぽど彼の腕が良いのだろう。

 先ほどまで苦痛の表情に満ちていた男は、現在安らかな顔つきで目を閉じていた。

 手足は椅子に手錠のようなもので繋がれており一切動かせない。

 バトラーは道具を取り出した。

 アイスピックだ。

 殆ど手当は終わっているのに、これから更なる治療を行うのだろうか。

 麻酔も打っていない男の右肩に優しく突き刺すバトラー。

 男は目を見開く。

 何が起こっているのか分からず、助けを求めるため大声を出す。

 苦痛に身を焼かれ、断末魔をあげ続ける男を見て、バトラーは夢見心地にこう呟いた。

 

「あぁ……落ち着きますねぇ」

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