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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
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怪訝なやり取り

 ローズの一声に耳を傾ける周囲の者たち。

 戦いが繰り広げられている殺伐とした戦場。

 生身の人間達によるぶつかり合いが繰り広げられている中、先ほどタクススから財布を盗み取った男がいた。

 闘技場への入口付近で佇む男。

 警備の仕事をしているのだろうか。

 眠そうに欠伸をする彼は、間違いなくあの盗人だ。


「おやおや、あんな所に……なんとも舐め腐った態度で」


「あ~? アイツに盗られたのか、タクススちゃん」


「……ええ、そうですね……」


「そっかそっか……テッセンちゃん!! お前はタクススちゃん達と行動して財布を取り戻して来い!!」


「俺ですか?」


「ああ、お願いね」


「おやおや……プロテア大佐、私がいるのですからテッセンさんのご協力は必要ないですよ」


「……言い忘れていたけどさ、ローズちゃんは()()()ね」


「……はい?」


「俺達さ、貴族の所まで少数で突破しなきゃなんねーのよ。外で待たせてる他の奴ら全員で移動したら、流石に怪しまれんだろ? そうなったらだ……妨害が得意なテッセンちゃんより、火力のあるローズちゃんの方が適任だと思うんだよね、俺」


「……ほうほう、なるほどなるほど」


「つーわけでよ、タクススちゃん。ちょとローズちゃん借りてくわ!! こっちからはテッセンちゃんを貸すから」


「……はぁ」


「んじゃそういう事で……テッセンちゃん!! ()()()()()?」


 含みのある言葉を最後に投げかけたプロテアは、アヤメ、カタバミ、ローズを連れて行くと、今回の任務達成に向けて、この闘技場の主の元へと進み始めた。

 その場に取り残されたタクスス達。

 護衛を任されたテッセンとの間には、何とも言い難い気まずい雰囲気が流れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねえねえ、流石に僕も口を開くんだよぉ? ずぅぅぅぅっと静かにしてたんだからさ」


「……話すにしても、小声でお願いしますね」


「もちろんだよぉ~」


「タクススお姉さん、あの人どうするの? すげぇ~こっちを見てるんだけど」


 薄暗い通路をひそひそ声で進む3人。

 闘技場から発せられる観客の声にかき消され、少し後ろを付いて来るテッセンの耳には届いていないようだ。

 当の本人は、表情筋に力がこもっているのか、不機嫌そうな顔をしている。

 何を考えているのか分からない彼を尻目に、今後について話し合うタクスス、シャガ、アムネシア。

 先ほどのやり取りから、抱いた違和感についてが主題である。


「……何か疑っているっぽいですよね」


「ねぇ~」


「我輩の崇高な頭脳によると、間違いないのさ!!」


「……わざわざ壮大に言う必要あります?」


「ないんだよぉ……」


「……私達と以前会ったことについてなのかな」


「あー……アウレラで逃げたあの時?」

 

「……かもね。ただ……顔とかがバレないようにしていたんだけどね。バレたのかな?」


「バレてたらあんな怪しむ素振りをしないんじゃない? 俺の勘だけど」


「あぁ~!! まどろっこしいんだぉ!! 我輩が記憶を覗くのさ!!」


「……気が付かれません? 言葉を使うと」


「んー……一般人ならともかく、軍の人間なら感付きそうなんだぉ!!」


「じゃあ不味いじゃん!! 余計に怪しまれるよ!!」


「……なあお前ら」


 肩を震わせる3人は、背後から声を掛けてきたテッセンへと視線を向ける。

 思った以上に驚かせてしまったのか、彼は少し申し訳なさそうにしている。


「……な、なんですか。急に話しかけないで下さい……びっくりしますから」


「あ、ああ……済まない。幾つか聞きたいことがあるんだが」


「……なんでしょうか」


「俺達、前にどこかで会ったか?」


 やはりきたか。

 大よそ想定していた質問を投げかけられ、心臓の鼓動が速くなる。

 動揺してはいけない。

 平穏を装いタクススは慎重に言葉を紡ぎ出す。


「……いえ、今日が初めてのはずですが……」


「ダイアナとかは?」


「いえ」


「アウレラやモンテラとかは?」


「……いえ」


「そうか……やっぱり俺の勘違いなのか……」


 幾つかの都市の名に心当たりのあるタクススとシャガの呼吸が浅くなる。

 早く終わって欲しい。

 そう願う彼女達に、テッセンから最後の質問が投げかけられる。


「……ああ、そうそう。モンテラと言えば……お前ら、この少女について知ってるか?」


 軍服のポケットから1枚の写真を取り出す彼。

 そこには、モンテラで悪徳宗教にハマっていた母親を持つ、少女の顔が映っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ってなわけでよ~ダイアナから直行した俺達は、クシノヤって元先輩とアウレラで交戦したってわけ。これがその時の傷ね」


「おやおや、随分派手にやっていますね」


 タクスス達と時同じくして、薄暗い通路を進んで行くローズ達4人。

 プロテアの苦労話に花を咲かせながら、着々と前へ進んで行った。


「つーかローズちゃんさ、相手が厄介なら俺らを呼べばいいのによぉ~ゴルウェーの街からここまで徒歩だろ?」


「車だと見逃しそうなんですよ。着実に一歩一歩追い詰めないといけませんからねぇ」


「はっ!! 相変わらずだねぇ……あ、そうだそうだ……ローズちゃんコイツ知ってる?」


「……?」


(これはこれは……モンテラで会った少女ですね)


「この少女がさ、ローズちゃん達を見かけたって言うんだよね」


 プロテアの言葉にほんの数秒考え込んでしまうローズ。

 ここまでの話しぶりから、彼女はプロテアが何をしたいのかの答えを出していたからだ。


(尋問……でしょうねぇこれ。テッセンさんが向こうに行ったのは、恐らく同じ質問をして答えの食い違いを見つけだすため……いや~疑われていますねぇ)


「ええ、知っていますが何か」


「この少女についてどう思った?」


「どう……どう?」


「ああ、感覚で良いからさ」


「……」


(何を考えているのでしょうかねぇ……)


「子供と喧嘩していた赤い目の女の件ですよね? 話を聞いていて、母親は愚かだなぁ~とは思いましたよ」


「だよなぁ~!! 本当に胸糞悪い話だぜ!!」


 そう言うと、用事が済んだと言わんばかりに、会話を切り上げるプロテア。

 訝しむローズは言及しようとしたが、その思惑は叶わなかった。

 丁度目的の場所へと到着したからだ。

 不満を募らせる彼女は、警備兵の後ろに存在する重厚な鉄の扉を眺めていた。


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